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子どもの運動学習 自発性

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子どもの運動学習を促す時に自発性が重要だといいます。 なぜ自発性が重要と言われるのでしょうか? 脳は環境によりよく適応するために働きます。 そのために脳の働きは環境の情報を感覚で脳に取り込んで処理をして運動を表出することが基本です。 子どもの頃は処理(運動)の際に利用できる記憶が少ない状態です。 処理の際に利用できる記憶を増やすためには、感覚運動のサークルを回す必要があります。自分で環境から情報を得てきて、何かやってみて、結果成功や失敗をすることによって新たな運動記憶が貯蔵されて運動が上手になります。 大人に指示されて新しい運動ができても運動学習にはなりますが、環境から自分で情報を得てくる力が育たないので十分に有効にその運動を使えるようになるのが難しくなります。大人に言われた時にはできるけれど、自分ではやろうとしないという状況になるかもしれません。 子どもの脳は運動だけが未熟ではありません。感覚情報を得たり、それを処理したり、感情と結び付けて記憶したりすることも発達の途上です。そんなわけで子どもの運動学習を促すときには自発性を考えることが重要なのです。 自発的な運動を引き出すためのアイデアは ①環境を子どもにとって興味深いものにすること:感覚情報が得やすく、適度に困難性があり、魅力がある環境を与えること ②子どもが動きだすのを待つこと ③子どもが動き出したら成功への手助けをすること 等があると思います。①②③のどこが苦手かは子どもによって違います。古典的な脳性麻痺をもった子ども(運動に関連する神経領域の損傷だけがある子)の場合は動きの種類が少ないので失敗が多くなりがちです。でも古典的な脳性麻痺をもった子どもというのは、実際には少なくて、①や②にも問題がある子どもが多いように感じています。 こどもリハかわせみ  

幼児期初期に転びやすい子 「何かできることないか」ときかれたら

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「うちの子歩きはじめたんだけど、よく転ぶんだ。何かできることないの。」と聞かれることがあります。 幼児期初期に歩きが不安定な子といっても、麻痺がある子、動きが速く注意が散漫で段差などに気づかずに転ぶ子、何となく姿勢がフラフラしていて不安的な子など色々タイプがあるので迂闊なことも言えません。話をきいて重い運動障害ではないことを確認できれば、「歩くのはもうちょっと待ってあげて、ハイハイなど今できる歩行以外の運動を沢山させましょう。」ということもあります。詳しく考えていることを言えば、「幼児期初期は神経ネットワークの形成が本当に急激なので、少しの月齢の違いで随分変化することがあるから、今はその子の神経ネットワークの形成状況に合わせた運動をすることで周りの大人は温かく見守りましょう。」というような考えです。 つま先立ちや扁平足など立った時の足の形に軽度の異常がある子はに「足裏のマッサージ」もいいですよと言う事もあります。歩く時にバランスをとるためには前庭感覚・視覚・足裏の固有感覚の3つの感覚が身体の状態を脳に伝える必要があります。特に足の形に異常がある子は足裏固有感覚の発達にマイナスの影響があるので「足裏のマッサージ」で筋肉や関節を動かして感覚を育てることは歩行バランスの改善につながると思うからです。 こどもリハかわせみ

こどもリハ 乳幼児期 環境調整

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  乳幼児期は子どもの脳の発達が著しい時期です。運動も行動も様々に変化していきます。そのため、大人の関心が子ども自身を変える発達支援に向くことが多くなりがちですが、子ども達の周りの環境を調整することにも目を向けましょう。本人にとって快適で楽しい環境の提供は障害をもった子ども達に経験や自信という宝物を与えることになるでしょう。 子ども達を変えることをでなく、周りの「ヒト」や「モノ」を変えることで障害を軽減することを環境調整といいます。ちなみに障害を考える時には「医学モデル」と「社会モデル」の二つの考え方があり、現在では「社会モデル」で考えることが中心になりました。これは本人の機能が変わることで障害を軽減する「医学的アプローチ」を否定するものではありません。必要に応じて「医学的アプローチ」を利用しながらも障害の本質は環境との相互作用にあるので社会の側を変えようとする考え方です。 乳幼児期の環境調整を考える時には「ヒト」「モノ」2つの領域で考えると良いでしょう。 「ヒト」環境の調整:子どもを変えるのではなく、周り人が態度をかえましょう。言葉だけでなく、その子の表情や態度も含めて本人からの発信や何らかの表現をみつけるようにしましょう。本人が今すでに表出している何かをもとにやり取りをしてみましょう。どんなことでも子どもの「ヒト」への興味感心が増えることは本当に大切なことです。 「モノ」環境の調整:周囲の環境や課題を子どもが行動しやすいものに変えましょう。落ち着きやすい環境、わかりやすい環境、自発的に関わりやすい環境をみつけましょう。運動障害をもった子どもの場合は自発的に関われる環境の工夫として移動補助具、各種スイッチ、姿勢保持具、おもちゃの選定などがあります。 こどもリハかわせみ

ダウン症をもった子どもへの支援 つかまり立ちからつたい歩きへ

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ダウン症をもった子どもが子どもがつかまり立ちを始めた時、よく見られる姿勢は絵のようにつま先が大きく外側を向いていて、足幅は広めで、足の小指側が浮くような姿勢です。 専門用語では股関節外転外旋位、足部回内(外反扁平)で立っているといいます。 どうしてこういう姿勢で立つのでしょうか。腹部の筋肉や股関節周り、足周りの筋肉の低緊張が影響しています。脚を開くような運動経験が多く、脚を閉じる方向の運動経験が少ないため脚の使い方に独特癖がついていることも原因です。 体幹や股関節、足部の筋肉が上手く使えないとバランスがとりにくいため、つたい歩きの開始が遅くなります。「つかまり立ちができたのに、なかなかつたい歩きをしないので心配。」というお母さんにはつかまり立ちの姿勢を助言します。 ①外側に向いているつま先を前方に向ける ②足幅が広すぎる時は肩幅くらいにする ③足の小指側が浮かないように床に軽く押つける 家では気が付いた時にやってみて下さいといいます。PTの時にはいつもやってみるようにします。 こうすると腹部や股関節周囲の筋肉が使いやすくなります。足全体で体重をうけると足裏の感覚も育ちます。少し経験を積み重ねると赤ちゃんがつたい歩きで動きたいと思った時自然と足がでやすくなります。 こどもリハかわせみ  

小児理学療法について

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 小児理学療法という言い方があります。 「小児」というのは医学用語だそうです。年齢としては小児科を診療を受ける年齢だそうで、明確な規定はないそうです。小児理学療法学の授業では子どもの特性を考慮して理学療法を実施するための知識や技術が教えられます。 重要な子どもの特性としてここでは2つあげてみたいと思います。 ①発達が急激な時期であること:発達は加齢に伴う心身の継続的な変化をさします。子ども時代は変化が大きい時期です。身体面として神経系、運動器系、内臓、ホルモン系など全身の器官が成長します。また、行動や社会性などの心理的な側面も変化します。 正常と言われる子ども達(正規分布の山の頂点近くにいる子ども達)の各年齢における特徴を勉強する事も大切です。その上で非常にユニークな障害を含めたその子なりの発達を考えるといいと思います。その子どもの現在の月齢や年齢を考慮することも大切です。 ②大人の支援を多く受けている時期であること:大人から個人的・社会的な物理的支援を受けているだけでなく、理解や信頼、寄り添い、励ましなどの言葉で表現されるような精神的な支援も必要とされる年代です。(もちろん年齢ごとにその内容は変化しますが)その子どもの身の回りにいる大人の行動や認識を理解し、必要に応じて支援したり、助言したりすることは重要です。理学療法士自身も障害を持った子どもの身近にいる大人の一人です、自分自身の考え方や行動ももう一度問い直してみましょう。 こどもリハビリ相談

ダウン症をもった子どもへの理学療法士の関わり

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 ダウン症をもった子どもへの理学療法士の関わりを年代ごとにまとめました。 0歳~3歳ころまでの関わり •         姿勢運動発達の促進 •         歩行獲得支援 •         家族支援 (運動発達に対する情報提供や不安軽減) •         靴のフィッティング、必要に応じてインソール等の作成 3歳~就学までの関わり(   より活発な生活を目指して) •         幼稚園、保育園など集団での運動場面への参加方法検討 •         水泳、ダンス、リトミック、体操、三輪車など運動経験の拡大に向けた支援 就学以降の関わり •         肥満、疲労、二次的な関節変形への予防的対応(スポーツ活動への助言) •         教師や両親と学校での活動内容の相談 •         必要に応じて装具検討 こどもリハビリ相談

脳性麻痺等 拘縮はなぜ進むのか

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 脳性麻痺など胎児期から生まれてすぐの時期に生じた脳障害によって運動に困難さを持った子ども達は乳児期よりも関節の可動域が減少したり、変形拘縮が進行する場合があります。脳の病変が進行するわけではないのに、変形拘縮が進むのはなぜでしょうか。 1.骨の長さが伸びる時期に筋肉が伸びない 骨は自分で伸びていきますが、筋肉は運動で延ばされることによって伸びていきます。運動が少ないと骨だけ伸びて筋肉の長さが変わらないために関節可動域の制限が進行します。  2.重力の影響 重力は24時間身体にかかります。それによるつぶれは変形拘縮の大きな原因の一つです。例えば低緊張の足を持っている子どもでは体重によって足が回内につぶれます、毎日同じように体重をかけ続けると回内変形が進んでくる場合があります。背臥位で過ごすことが多い子供では胸郭が扁平化することもあります。 3.限られた筋肉の使いすぎ 限られた使える筋肉だけで抗重力活動を行うので使える筋肉が短縮して、変形拘縮につながるということもあります。例えば、低緊張で外反した足の子どもにはふくらはぎの内側の筋肉が使いにくくて、外側の筋肉だけで頑張るのでそこが硬くなって踵がより外側に偏位している子どもをみかけることもあります。沢山種類のある筋肉を効果的に使えないことも脳障害からくる変形拘縮が悪化する原因の一つです。 変形拘縮にはどんな防止策があるのでしょうか。 ①動かす 関節を動かすことが大切です。ストレッチもその一つです。寝たきりの子どもの日常姿勢の種類を増やすこともストレッチや筋力強化になり、結果変形予防になります。 ②良いアライメントをとらせる 骨を適切な配置にすることで動作に複数の筋肉を使いやすくなります。このことは身体のつぶれを防ぎ関節可動域を維持することに役たちます。足の例を挙げます。 ③手術や薬による治療で変形拘縮を改善することもできます。 こどもリハビリ相談

脳性麻痺 上肢変形

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 脳性麻痺の上肢の変形では掌が上を向かない(回外制限)が手指の伸展制限や母指の濁りこみの変形よりも多かったという論文があります。指だけでなく前腕もゆっくりと動かしてあげましょう。 前腕回外の動きは尺骨の周りを橈骨が回っていくような動きです。動かしてあげる時は橈骨(前腕の親指側)の肘に近い場所と手関節に近いところを同時に持つような感じでゆっくりと手の平を上の方に向けてあげましょう。 参考文献 Eun Sook Park,Eun Geol Slim,Dong-Wook Rha: Effect of upper limb deformities on gross motor and upper limb functions in children with spastic cerebral palsy 2011 こどもリハビリ相談

脳性麻痺 片麻痺 両手を使う

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 脳性麻痺で片麻痺を持っている子は麻痺側の手をあまり使いません。大人が少し工夫して使う機会をつくることは大切です。その子なりに麻痺側の手にもボディイメージをそだてましょう。 ①普段から麻痺側の手にも気づかせてみる。麻痺の無い側の手を使う時に麻痺の手で抑える使い方ができるか試してみましょう。 ②普段の遊びの中にも両手を使うことを促しやすい遊びがあります。 ままごと 人形遊び ボール遊び ③子どもさんが嫌がるようなら、無理にやらせず、まず原因を考えましょう。OT.PTの先生に聞いてみるといいと思います。 こどもリハビリ相談

療育とは

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  宮田は『療育は「障害のある子どもを育てる特殊な技術」から「子どもたちそれぞれの育ちを支援できる手段」に成長することが求められている』と述べています。 「障害の治療」vs「障害は個性」ということと似ているのかもしれません。障害は受傷して最初のころは病気ですが、だんだんとそれは個性に変化していきます。治すのではなく、その子なりの方法を見つけ出すということになっていきます。 私自身は地域で子どもの理学療法をやってきたので、子ども達それぞれの育ちを支援しているということと自分の普段の仕事の方向性は一致している感覚があります。 治療なのか、教育なのかと言われると教育にかなり近い感覚かもしれません。自分の仕事は一人一人の個性を把握して、一人一人の長所を見つけ出して、一人一人の発達を支援するという仕事をしていると思っています。その感覚で仕事に当たった方が自分も楽しいし、うまくいくことが多いように思えるのです。 発達は様々な要因の関係性の中で起こるので、正直結果が予測できることばかりではありません。害にならないなら、益になりそうなことはとりあえずやってみる、無駄玉を投げることを恐れないし、かえってそれを楽しむというやり方もいいのではないでしょうか。 参考文献 宮田広善著 「子育てを支える療育」 2001 年 7 月初版 ぶどう社 こどもリハビリ相談

脳性麻痺の理学療法評価 麻痺の分布と粗大運動能力分類システム(GMFCS)

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  脳性麻痺の評価で麻痺の分布と粗大運動能力分類システムの結果にはある程度関係があります。 片麻痺のある子どもの将来的な移動能力は粗大運動能力分類システム(以下GMFCS)のⅠ~Ⅱの子どもが大部分ですので歩行による移動が獲得できる可能性が高いです。 両麻痺のある子どもはGMFCSでレベルⅠ~Ⅲに入る可能性があります。自走車いすでの移動になる場合もあります。 四肢麻痺のある子どもではGMFCSはレベルⅡ~Ⅴの可能性があり、その中でもⅣ~Ⅴの可能性がが大きくなります。GMFCSのⅣ・Ⅴは電動車いすもしくは介助での車いす移動です。 脳性麻痺の診断名を持っている子どもの症状は多様です。その子どもの個別性を明確にする評価を行い、関わりを考えていく必要があります。又、胎児期もしくは出生後早期の脳障害によるため障害を持ってから人生の年数が長くなり、成人期を見通すことの難しさもあります。 麻痺の分布・GMFCS・麻痺の種類などの情報を組み合わせて解釈することでリハプランにつながる有益な情報を得られます。 参考文献 中徹 : 脳性麻痺の理学療法 . 理学療法学 40 (4):302 ‐ 305.2013  

二分脊椎 仙髄レベル 足部変形

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二分脊椎は障害された脊髄のレベルで運動機能や変形拘縮の状態が違ってきます。移動能力についてはホッファーの分類、下肢の麻痺と変形についてはシェラードの分類の表を参考にして予後を考えるようにと理学療法士の学校では習います。 でも学校では色々な事をならうので習うことの中の一つですので、忘れてしまう人も多いのではないでしょうか。二分脊椎の子どもの整形外科治療をしているような病院に勤めていれば別ですが、特に仙髄レベルの麻痺については印象が薄いようです。しかし、足部変形の管理は案外大変です。 二分脊椎の変形は筋のインバランスで生じるといわれています。凹足(ハイアーチ)は足指の伸展筋力に比べて屈曲が優位な時に生じます。外反扁平は下腿三頭筋の筋力が弱い場合に生じます。歩いているので体重の負荷が変形をさらに助長します。ほとんど歩いて生活をしている子どもなので、装具があたりだしたらすぐに調整しなけば、傷や痛みにつながってしまいます。日常ストレッチをしたりして、変形の悪化防止に努めることも必要です。足の外側や内側にタコができたり、潰瘍ができたりするようだと手術治療の適応になります。 日常運動療法はしていても小学校にはいってから変形が進むことがあるので。やはり装具の作成・調整のできる病院などに日常通っていることは必要ですし、整形外科の手術のできる病院でも頻度は少なくても経過をみてもらっていると、いざという時の治療のバトンタッチがスムースにいくと思います。 こどもリハビリ相談  

脳性麻痺痙直型四肢麻痺 座位

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脳性麻痺で痙直型四肢麻痺を持った子どもの中には円背が強い子どもがいます。脊柱が屈曲しているだけでなく、肩甲骨が外側位置すると肩の付け根の位置が前方になります。骨盤が後ろに傾くため股関節が十分に屈曲しません。 このような姿勢をしていうることによるマイナス面は ①重心線が脊柱前方を通るため、将来頭部や体幹の重さにより脊柱屈曲が強まる危険がある ②背中が丸くなったり、肩甲骨が身体の外側に位置すると首や上肢の随意運動がしにくくなる ③股関節がしっかり曲がることが少ないと座位でお尻が前方にすべり座りにくい座位機能の低下につながる このようなマイナス面が大きくならないようにする対策として下の絵のように大人が介助して背中をのばしてあげる運動プログラムがあります。 その効果は ①座位の際の体重の関わる場所や、背中を伸ばす時に力をいれる筋肉本人がわかりやすくなる ②ストレッチ運動となって筋肉の短縮を予防する などがあります。 こどもリハビリ案内

運動の意欲

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運動の意欲ってなんだろう。 小さい大人しい子どもと付き合うと思います。 どうやったらこの子に運動の意欲がうまれるのかな? 自分は小さい頃どんな気持ちだったのかな? 雨上がりの道を長くつをはいて歩いた時の感じかなと思ったりします。 水たまりみつけると必ず入らずにはいられなかったあの気持ち。 どの水たまりも入ってみてそれほど違いはないのに。それでも深い水たまりはドキドキしたりした。大きな水たまりを見つけるとときめいたりした。 大人になった今は水たまりを見ても何も思わないのに。靴に水がはいらないようにしようとだけ思うのに。 大きな石があると上にたってみたかった。壁をみると上ってみたかった。 やりたいと思う気持ち、うずうずとする気持ち それが運動の意欲かな? こどもリハビリ相談  

脳障害に伴う運動の問題

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何らかの原因で脳に障害を持った子どもが運動に障害もつことがあります。「なぜ、すわれないのでしょうか?なぜ、歩けないのでしょうか?」という質問をうけることがあります。 運動をするためには外の世界の状況に気づき、過去にあった記憶と照合して、運動を企画して、目的を持って運動を始めることが必要です。このようなことは脳の働きによって行われます。 又、私たちは通常は重力のある世界で生活しているので、重力とうまく付き合うことも必要です。私たちの身体はいつも地面に向かって引っ張られています。その力に負けていては運動ができません。重力に対抗して姿勢を保つ活動を抗重力活動といいます。姿勢の保持やバランスの活動がこれにあたります。上手になってくると重力を利用して運動をより効果的にすることもできるようになります。(柔道の投げ技、歩行などは自分の筋肉で起こすちからだけでなく、相手や自分の重さを利用して運動を効果的にしています。)これも脳の働きによって行れています。 脳の働きが悪くなると運動に問題を生じるのはこのような機能の低下が原因となっています。 それでは運動の障害が生じた時には、どんな対策があるのでしょうか? 一つには自分の身体の機能自体を向上させる方法があります。人間は学習や発達によって機能を向上させることができるので、スモールステップで良い経験を積み重ねるという方法です。 もう一つは自分の身体の動きを機械や道具などの利用によって補うという方法です。 二つの方法は別々に実施するよりも、同時に組み合わせて実施されることが多いと思います。 こどもリハビリ相談

つま先立ちばかりする子には色々な原因があります

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赤ちゃんが自分でつかまり立ちをする頃、立つ時はつま先立ちしかしない子どもがたまにいます。親御さんは心配です。多くのつま先立ちをする子供をみていくとそれぞれのお子さんでかなり状態が違うことがわかります。 ①足の裏をつくことや、足の裏に触られることが嫌いな子 ②膝をのばそうとすると一緒に踵が上がってしまう子(関節運動の組み合わせが限られている子) ③アキレス腱反射の亢進している子(筋肉を伸ばされることに過敏で、筋肉の張りの強い子) ④筋肉の張りが弱い子 筋肉の張が弱いと外反扁平などになりそうですが、中には立位をとる時に脚全体の筋肉の収縮を高めるために踵を上げて立つ子どももいます。 ⑤その他 ①~④は全て神経の発達に影響された状況ですが、筋肉など神経以外に原因がある場合もあります。 複数の状態が当てはまる子もいますし、一つだけの状態が当てはまる子どももいます。つま先立ちの程度にも一人一人差があります。将来的に何らかの障害を持つ子もいますが、特に生活上の支障なく育つ子も多くいます。症状の程度や年齢なども含めて判断をした方がいいので、心配であれば小児科医師など専門家に相談しましょう。 PTは子どもの状態に合わせて最適な感覚運動経験を提供したり、ご家族の心配に答えたりすることができます。つま先立ちの子どもへの対応の一例として椅子や大人の膝に座った状態で足裏を床につけさせたり、そこからの立ち上がりを経験させるようなホームプログラムを提供することがあります。新しい感覚運動経験をさせることで、それまでと違う運動発達をひきだすための、きっかけづくりのプログラムです。 こどもリハビリ相談

知的障害や発達障害をもった子どもの足の異常と疲労

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  知的障害や発達障害を持った子どもの中には、足の形に問題がある子どもがいます。問題というのは扁平足だったり、つま先立ちのことです。 足の形に問題がある子どもは協調性やバランスや敏捷性などの運動能力も低い子どもが多いことはよく知られています。立ったり歩いたりしている時に地面に接しているのは足なので、足が上手く形を変えて地面を蹴らないとバランスがとりにくいのです。 注:バランスがとりにくい理由はそれだけではありません。 そういう子どもは疲れやすいということも知っておいてください。特に小学校・中学校と身体が大きくなると疲れやすさが増します。足でバランスがとりにくい分を太ももやお尻や腰の筋肉を余計につかってバランスをとっているからです。中には太ももやお尻の外側の筋肉が強く張っている子どもがいます。 疲れやすさに対する対策も検討していくことが必要だと思います。 具体的には①体重のコントロール②運動量のコントロール③足に合った靴やインソールの使用④ストレッチやマッサージによる疲労軽減などがあると思います。 知的障害や発達障害を持った子どもの中には脳性麻痺という診断がついた子どもほど足の問題に注目されていない方もいるようです。子ども時代は人生のほんの一部です。長く健康な生活が送れるよう支援したいものです。 こどもリハビリ相談

歩いて疲れにくい靴 精神遅滞のある子に対する考え方

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  絵は登山靴です。登山をする時はジョギングシューズではなく登山靴をはきます。その方が安全で疲れにくいからです。なぜ登山をする時は登山靴の方が疲れないのでしょうか。登山靴は靴底が厚く、ハイカットなので、足を回内外する力に負けないようにできています。山では地面が凸凹していて足にかかる力の方向が様々で足が変形しやすいです。それを自分の足の周りの筋肉の働きだけで対抗していると疲れがきてしまうのです。 精神遅滞のある子どもの中には足の周りの筋肉が柔らかくて扁平足が生じやすい子どもがいます。中には絵の様なインソールを使用している子もいると思います。このような子ども達の親御さんから疲れない靴はどういう靴ですかと質問を受けることがあります。 その時は登山靴の説明をし、足首が横にスライドすると疲れやすいことも伝えます。そして、本格的な登山靴とスニーカーの中間くらいの靴をお薦めします。具体的には ①靴底は少し固めのもので、足の前3分の1のところで曲がる ②靴ひもかマジックテープなどで締めの調整ができる ③インソールの使用 ④ミドルカットかハイカットで足首を保護する の4つの要素をお伝えしています。 靴のサイズが大きくなるとミドルカット、ハイカットの品物があまりないようですが、①②③があてはまるだけでも大分違います。ハイキング用の靴などにはいいものがあるかもしれません。 こどもリハビリ相談

重症児 テクノロジーの利用を妨げるもの

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電動車いすを導入しようと本人用を身体障害者手帳で申請しても、生活場面で一人で使えないと理由で申請が通らないことがあります。 練習でやっと使えるくらいの能力では本人の生活は改善しないので支給は難しいということです。 それならば練習が必要ですが、練習をする機会はどこかで与えられるのでしょうか。学校で練習すればいいと思いますか?確かに学校には備品や寄付の電動車いすは何台かあります。でも障害の状態は人さまざまです右手がわるかったり、左手が悪かったり、座位が不安定だったりと個々の状況が大きく違います。車椅子を本人の状態に合わせないと実力は発揮できません。本人の状態にあった車いすが必要です。リハセンターに行けばと思われるかもしれません。でもリハセンターが利用しにくい地域もあります。 障害を持った子どもの状態は様々ですので、一人一人に合わせた道具で練習ができる場は保証したいものです。特に生まれつき障害のある子どもは自分で移動した経験がないので練習がより必要です。 これと似たようなことはコンピュータを利用した代替コミュニケーション機器でもあると思います。練習しなければ使いこなせないが、一般用では練習にならないのです。 障害のある子どもとあまり関わりがない方は障害の状態が非常に個別的であることを知っていてください。機能を補助する道具は個々に合わせたものが必要になります。しかし、個人で購入するには価格が高いのです。また、練習をするとテクノロジーを使えるようになる子どもに十分な機会が与えられていないということも知っていて下さい。 障害児支援に関わっている方は、一人でも多くの子どもの可能性を引き出す方法を検討しましょう。埋もれてしまう子どもをなくしましょう。(様々な努力をされている方がいます。)経済的にマイナスになるのだから、どこかであきらめなければならないというようなことを、現在ある制度だけをみて決めつけるのは止めましょう。 今後障害児支援に利用できる様々な素晴らしいテクノロジーが出現してくると思います。それを多くの障害児が利用するためには制度上の限界を超える方法の検討が必要だと思います。 こどもリハビリ相談  

赤ちゃんが歩けるようになる

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赤ちゃんが歩くのは感動的です。 お母さんのお腹から生まれた時は首もすわっていなかったのに。 なぜ歩けるようになるのでしょうか。 実は生まれたての赤ちゃんは脇を支えて立たせて床に足を触れさせると足を交互に動かします。ところが2か月頃になるとそういう運動をしなくなり、10ヶ月くらいで自分でつかまり立ちやつたい歩きをはじめて、1歳くらいでは一人で歩くようになります。不思議ですね。 それは中枢神経の成熟に影響されていることが原因だとういう説があります。生まれたての赤ちゃんは中枢神経でも皮質下の活動が主なのですが、しっかりと大脳皮質とネットワークができてくると一人であるけるようになるという説です。そして大脳皮質とのつながりを構築する一時期歩行運動がみられなくなるというのです。 私たちは運動発達に遅れや障害がある子どもへの支援をしているので、何が発達すると歩けるようになるのかという視点でみるようになります。 その視点でみると ①筋力 重力に負けないで運動できるようになる ②バランス 姿勢を保てる、姿勢を保ちながらも運動ができる の発達が必要ということになります。 筋力やバランスも中枢神経の成熟の影響があるので、全く違う側面から見ているわけではありません。ただ、私たちはどんな経験が中枢神経系の成熟に好影響を与えるのかという方向からこどもに与える経験の質や量について考えていきます。 こどもリハビリ相談  

止まることは発達のはじまり

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幼児は走ることが好きです。小学校には「廊下は走るな」の張り紙があります。なぜでしょう。 運動ははじめることは無意識でもできますが、止まることには意識が必要です。小さい子どもには止まることは難しいのです。 2か月くらいの赤ちゃんの手のひらに大人の指をおくと手を握ってきます。これは把握反射といって自動的に起きる運動で3ヶ月くらいで弱くなり、4ヶ月くらいでみられなくなります。特定の刺激があれば必ず特定の運動が出現するのを反射運動といいます。この時赤ちゃん自身が握りこみを止めることができません。手のひらへの刺激があるうちは握ってしまいます。発達してくると意思で運動をコントロールできるようになります。この場合は具体的には嫌になれば指を放すことができるようになります。これは発達による現象です。 意思で運動がコントロールできることは、中枢神経系の活動が脊髄から大脳へと広がってきたことの証です。幼児期から学童期へとより大脳の活動は活発化してくるので、運動を止めることや程度を調整することが容易にできるようになります。自然廊下でぶつかるような事故は減少してきます。(ゼロにはなりませんが) 私が昔支援していた精神遅滞のお子さんは、幼児期の一時期、指導中でもバギーをみるとかならず乗って帰ろうろしてしまうという時期がありました。PTが嫌いというわけでもなく、バギーは乗って帰るものという行動が止められない状態だと考えました。私がそれを止めようとすると非常に怒っていました。しかし、数か月後には本人は他に色々なことを覚えてきて、それほどバギーにこだわることがなくなりました。行動も覚えはじめは必ずその行動をしようとしますが、そのうち状況によって行動を止めたり、調整したりできるようになります。これはなんとなく反射運動から随意運動への発達と似ています。 こどもリハビリ相談  

発達支援

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こどものリハでも、療育でも、児童福祉でもこどもの生活と発達を支援することは根本の目的です。 発達とは加齢に伴う、心身機能や形態、生活の変化をいいます。時間軸上の変化の問題です。変化を生み出すものは遺伝的な要因と経験の相互作用によると言われています。 どのような子どもでも生まれたものはいつか死に至ることは予想できます。しかし、それぞれの赤ちゃんが生涯にわたってどのような発達や生活をするのかを細部に渡って見通すことは大変困難です。それは人の生涯に無限の変化の可能性があるからだとも言えます。 また、ヒトの子どもが多くの周りの人に影響を受けて発達するということも大変大切な事だと思います。 幸運にもこどもの今日の生活を支える役割のある大人は、あなたが今日そのこどもに与えた影響が将来のこどものありようを変える可能性ももっていることを意識しましょう。 自分のことでいえば、理学療法士はこどもの運動経験の質と量がどのようにその子の将来の生活や発達に影響を与えるのかについて詳しく知っていて、本人・家族・関係者にわかりやすく伝えることができると良いと思っています。 こどもリハビリ相談

一人で立つ練習 指示の出し方

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一人で立つ練習をすることがあります。絵の様につかまった状態から手を放して立つという課題です。 大人の指示の出し方には色々あります。 ①「手を放して立ってごらん」  ②「手が放せると思ったら手を放してごらん、あぶなかったら歩行器をつかんでいいよ」 ①の「手を放して立ってごらん」で失敗してしまう子どもの中には大人の指示に従おうと一所懸命になりすぎてしまう子がいます。自分の立位の状態を感じようとせず、とにかく課題を成功させようと固くなりすぎで同じ失敗を繰り返してしまうのです。 ②の指示のいい点は自分の身体の状態に注目を促している点と、歩行器につかまることは失敗ではないとしている点です。悪い点は指示が長すぎるということでしょうか。 どちらの指示がいいということはありません。子どもによってうまくいく方を選べばいいし、これ以外の指示の仕方も沢山あります。ただ、ここで言いたかったのは練習に結果に対する大人の側の価値の置き方のことです。 子どもに求めるのは正解をだすことでしょうか。本人が冷静に状況を判断してひるまずチャレンジする態度でしょうか。 こどもリハビリ相談  

痙直型両麻痺の幼児はゆっくり歩くのが苦手

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  痙直型両麻痺の子どものあるあるですが、ゆっくり歩くと尖足歩行が少し軽減する子どもがいます。大人は尖足が軽減してほしいので「ゆっくり歩きなさい。」といいますが、子どもは中々そのようにはやってくれません。なぜ言ったように出来ないと大人がイライラする前に、子どもなぜゆっくり歩かないのか理由を考えてみる方が建設的かもしれません。 実は理由は子どもによって色々です。 ①大人の言ったようにはしたくない(いわゆる反抗期) ②じっとしているのが苦手(いわゆる多動) ③物理的な理由(後で説明します) ④その他 ゆっくり歩けないのには物理的な理由もあります。簡単に説明してみます。前方に歩く時の力の元は筋肉が生み出しているというようりは、重力によって棒が倒れる時に生み出されるような力を利用して前進しています。上の図のように、ただの棒は前に倒すのにあまり力は要りませんが、棒に足部をつけるそれより力が必要になります。つま先が上がっている足部だとただの棒の時のように前に倒れやすくなりますが、尖足といってつま先が下がっている足部をつけると棒を前に倒すのにとても強い力(勢い)が必要になります。 両麻痺の子どもは両足に尖足があることが多く、常に勢いをつけて歩いていないと前に進みにくいということになります。そのため、ゆっくり歩いたり、急に立ち止まったりすることも苦手な子どもが多いようです。 何事にも理由はあります。物理的な理由は子ども自身が意識でコントロールすることは難しいことは知っておいて下さい。「言うことを聞かない。」とイライラせずに対策を考えましょう。運動療法や装具療法、手術療法や薬物療法などの様々な治療手段があるので専門家と相談してみましょう。子どもに負担が少なく、家族にも負担が少なく、生活の場で効果的な歩行が長期間に渡ってできることを目指しましょう。 こどもリハビリ相談

療育に関わるチームの一員として

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 療育にかかわる人は医療関係者、教育関係者、福祉関係者、家族など様々な立場の人がチームをつくって関わります。 療育にとって関わる人のチームワークが大切であるというこは、日本における療育創成期に活躍された先人も強調しています。 私は理学療法士ですので医学関係者としての教育を受けてきました。就職して数年たち私がまだ新人の理学療法士の頃に先輩理学療法士から、「脳性麻痺という障害ではなく、脳性麻痺をもった一人の子どもとして見る目をもってほしい。」と言われたことがあります。それは私にとって当時から非常に印象に残る言葉でした。今あらためて考えると理学療法士が障害をみる専門家だからこそ、あえて言われた言葉でもあると思いますし、そのような言葉をいってくれる理学療法士に会えたことはとても幸運であったとも思います。 脳性麻痺をもった子どもを一人の当たり前の子どもとしてみることができる理学療法士ならば、家族や、教育関係者、福祉関係者の意見にも真剣に耳を傾けたり、尊重したりできると思います。そのようなことができる理学療法士は良い療育チームのメンバーになるでしょう。教育関係者であれば反対に障害というものについての知識・技術にも目を向けていくことも必要になるのかもしれません。日常自分の得意分野を深める努力をしながらも、相手の得意分野にも理解・共感・尊重できるようになることが療育に関わるチームのメンバーには必要だと思います。 こどもリハビリ相談