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発達支援

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こどものリハでも、療育でも、児童福祉でもこどもの生活と発達を支援することは根本の目的です。 発達とは加齢に伴う、心身機能や形態、生活の変化をいいます。時間軸上の変化の問題です。変化を生み出すものは遺伝的な要因と経験の相互作用によると言われています。 どのような子どもでも生まれたものはいつか死に至ることは予想できます。しかし、それぞれの赤ちゃんが生涯にわたってどのような発達や生活をするのかを細部に渡って見通すことは大変困難です。それは人の生涯に無限の変化の可能性があるからだとも言えます。 また、ヒトの子どもが多くの周りの人に影響を受けて発達するということも大変大切な事だと思います。 幸運にもこどもの今日の生活を支える役割のある大人は、あなたが今日そのこどもに与えた影響が将来のこどものありようを変える可能性ももっていることを意識しましょう。 自分のことでいえば、理学療法士はこどもの運動経験の質と量がどのようにその子の将来の生活や発達に影響を与えるのかについて詳しく知っていて、本人・家族・関係者にわかりやすく伝えることができると良いと思っています。 こどもリハビリ相談

一人で立つ練習 指示の出し方

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一人で立つ練習をすることがあります。絵の様につかまった状態から手を放して立つという課題です。 大人の指示の出し方には色々あります。 ①「手を放して立ってごらん」  ②「手が放せると思ったら手を放してごらん、あぶなかったら歩行器をつかんでいいよ」 ①の「手を放して立ってごらん」で失敗してしまう子どもの中には大人の指示に従おうと一所懸命になりすぎてしまう子がいます。自分の立位の状態を感じようとせず、とにかく課題を成功させようと固くなりすぎで同じ失敗を繰り返してしまうのです。 ②の指示のいい点は自分の身体の状態に注目を促している点と、歩行器につかまることは失敗ではないとしている点です。悪い点は指示が長すぎるということでしょうか。 どちらの指示がいいということはありません。子どもによってうまくいく方を選べばいいし、これ以外の指示の仕方も沢山あります。ただ、ここで言いたかったのは練習に結果に対する大人の側の価値の置き方のことです。 子どもに求めるのは正解をだすことでしょうか。本人が冷静に状況を判断してひるまずチャレンジする態度でしょうか。 こどもリハビリ相談  

痙直型両麻痺の幼児はゆっくり歩くのが苦手

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  痙直型両麻痺の子どものあるあるですが、ゆっくり歩くと尖足歩行が少し軽減する子どもがいます。大人は尖足が軽減してほしいので「ゆっくり歩きなさい。」といいますが、子どもは中々そのようにはやってくれません。なぜ言ったように出来ないと大人がイライラする前に、子どもなぜゆっくり歩かないのか理由を考えてみる方が建設的かもしれません。 実は理由は子どもによって色々です。 ①大人の言ったようにはしたくない(いわゆる反抗期) ②じっとしているのが苦手(いわゆる多動) ③物理的な理由(後で説明します) ④その他 ゆっくり歩けないのには物理的な理由もあります。簡単に説明してみます。前方に歩く時の力の元は筋肉が生み出しているというようりは、重力によって棒が倒れる時に生み出されるような力を利用して前進しています。上の図のように、ただの棒は前に倒すのにあまり力は要りませんが、棒に足部をつけるそれより力が必要になります。つま先が上がっている足部だとただの棒の時のように前に倒れやすくなりますが、尖足といってつま先が下がっている足部をつけると棒を前に倒すのにとても強い力(勢い)が必要になります。 両麻痺の子どもは両足に尖足があることが多く、常に勢いをつけて歩いていないと前に進みにくいということになります。そのため、ゆっくり歩いたり、急に立ち止まったりすることも苦手な子どもが多いようです。 何事にも理由はあります。物理的な理由は子ども自身が意識でコントロールすることは難しいことは知っておいて下さい。「言うことを聞かない。」とイライラせずに対策を考えましょう。運動療法や装具療法、手術療法や薬物療法などの様々な治療手段があるので専門家と相談してみましょう。子どもに負担が少なく、家族にも負担が少なく、生活の場で効果的な歩行が長期間に渡ってできることを目指しましょう。 こどもリハビリ相談

療育に関わるチームの一員として

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 療育にかかわる人は医療関係者、教育関係者、福祉関係者、家族など様々な立場の人がチームをつくって関わります。 療育にとって関わる人のチームワークが大切であるというこは、日本における療育創成期に活躍された先人も強調しています。 私は理学療法士ですので医学関係者としての教育を受けてきました。就職して数年たち私がまだ新人の理学療法士の頃に先輩理学療法士から、「脳性麻痺という障害ではなく、脳性麻痺をもった一人の子どもとして見る目をもってほしい。」と言われたことがあります。それは私にとって当時から非常に印象に残る言葉でした。今あらためて考えると理学療法士が障害をみる専門家だからこそ、あえて言われた言葉でもあると思いますし、そのような言葉をいってくれる理学療法士に会えたことはとても幸運であったとも思います。 脳性麻痺をもった子どもを一人の当たり前の子どもとしてみることができる理学療法士ならば、家族や、教育関係者、福祉関係者の意見にも真剣に耳を傾けたり、尊重したりできると思います。そのようなことができる理学療法士は良い療育チームのメンバーになるでしょう。教育関係者であれば反対に障害というものについての知識・技術にも目を向けていくことも必要になるのかもしれません。日常自分の得意分野を深める努力をしながらも、相手の得意分野にも理解・共感・尊重できるようになることが療育に関わるチームのメンバーには必要だと思います。 こどもリハビリ相談

子どもは物理法則を言葉では知らなくても、身体では学習している

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人はどうやって重力に負けずに身体を高い位置にもっていくのでしょうか。例えば立った姿勢から床に強い力を下方向にかけると反作用で上方向に力が働き、身体が浮き上がりジャンプができます。 ジャンプするまで強い力ではありませんが、足部から床に向かって下向きの力をかけることで直立位が保持できます。 お尻の中の坐骨と呼ばれる部分で座面に向かって強い力をかけると背中を伸ばして座ることができます。 姿勢ごとに力をかける場所はことなりますが、床に対して下向きの力をかけることが抗重力活動の始まりです。 脳性麻痺などで生まれつき運動機能に障害がある赤ちゃんは、様々な理由で身体の適当な位置に体重をかける姿勢がとりにくため、効果的な身体図式を学習することが難しくなっているという一面があります。 セラピストがハンドリングをしたり、装具や座位保持装置を使用したり、手術やボトックスなどの治療をすることは、生活上必要な運動機能を高める目的で行われますが、身体図式の学習をうながしているともいえます。 どのような身体状況のお子様でも工夫すればその子なりの抗重力活動の発達を手助けできるのではないかと思って日々お子様に関わっています。 こどもリハビリ相談  

低緊張の強い子どもの抱っこトランスファー お母さんの工夫

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低緊張が強くてある程度伸長が伸びてくると抱っこでのトランスファー(ベッドや車椅子に乗り移ること)が大変になってきます。 その時代表的な大変さは二つあります。①背中がが丸くなってお尻が落ちてきてしまう。②手が身体の横に垂れてしまい、下ろすときにベッドや車いすに挟んでしまいそうで怖い それぞれへの対策としては ①背中が丸くなってお尻が落ちてくることへの工夫 ②両手が身体の脇に落ちしまうことへの工夫      両手をズボンのゴムに入れて固定しているお母さんもいます その他、車いすのベルトを座面の横におろしておく、車いすは子どもの近くおく、人工呼吸器のコードなどにつまずかないように整理するなど事前の準備も事故防止に役立ちます。人手があれば複数での介助も考えましょう。 こどもリハビリ相談  

脳性麻痺 痙直型両麻痺 歩行

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  ヒトの歩行は直立2足歩行と言われています。足の上に頭がある直立位であることと、そこから前方に倒れていく倒立振り子運動によって前進することが特徴だと言われています。スピードはあまりでませんが、エネルギー効率にすぐれていて、両手が自由になるので物を運ぶことも容易です。 脳性麻痺の中で痙直型両麻痺は上半身に比べて下半身に痙性麻痺が強い状態です。 このような麻痺の状況がある人の歩行を横から見ると体重を支えている側の脚は股関節や膝関節が屈曲していたり、つま先立ち(尖足)になったりしていることが多くあります。 このような脚の状態になっていると歩行の際に物理的に不利になることが3つあります。 ①股関節や膝関節が屈曲していると身体重心の位置が低くなり重心を前に移動することが大変になります。 ②つま先立ち(尖足)があるとつま先より前に重心をださないと身体が前に倒れていかないためにやはり重心を前に出すことが大変になります。(健常だと足関節より前に重心があれば身体は前方に倒れていきます。) ③左右の脚に麻痺があるために、脚と脚を前後に大きく開くことがしにくくなります。 結果として発達上は歩行開始の学習の困難さが高まります。歩行開始が学習できた後には重心を前方に強い力で移動し続けなければならないので歩行スピードが高くなりがちです。ゆっくり歩いたり、歩いて止まる、段差に手すりなしで上るなどは困難さがでやすい課題です。 こどもリハビリ相談

国際生活機能分類を考えてみました

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障害や慢性的な病気を持つ人の生活を考える時にWHO(世界保健機関)において2001年5月に採択された国際生活機能分類の考え方や言葉を共通のコミュニケーションのツールとしてかなり一般的になっています。 わかりやすい解説、詳しい解説など様々な解説が書籍やホームページ、YouTubeにもあげられています。興味がある方は読んだり、視聴したりしてみてください。 自分もこどものリハの関係者として働いて30年以上ですので、ICFについての情報はかなり聞かされてきました。しかし、その中でこういう見方もあるのかと改めて感心するような解説を聞くことが今だにあるので書いておきたいと思います。 ICFは「生きていることの全体像」を語るための共通の言葉:死んだ人には使えがないが、生きている間は使える言葉で、生きているいる内ならばその人の生き方を考えることばできます。 希望を捨てるなということ:生きていいるというのは健康状態、生活機能、背景因子の相互作用なので、健康状態が悪くなってもその人の生活機能があり、個人の生活機能が落ちても環境因子を変えることでより良い生活もできます。どこかが悪くなったらそれで終わりではないということです。又、様々な因子の影響があるということはそれだけ予測がつきにくいということです。生活のいくつかの側面の予想はできても、5年後の生活の全てを予測することはできません。先のことは本当にはわからないし、死んだ後は考える必要はないのですから生きていることの希望は持ち続けましょう。 生きていることは個別的なこと:生きていることは多くの側面の要素の上になりたっています。そのため他の人と同じ生活ということはありません。そのため支援計画は個別的個人的に考えなければいけないと思います。特に専門家は多くの人とあたるので、グループ分けをすることで業務上の判断能力が高まりますが、最後はいかに個別性を尊重するかということを考えなければならないでしょう。 こどもリハビリ相談  

脳性麻痺 痙直型両麻痺 歩行パターンの分類

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  脳性麻痺痙直型両麻痺の歩行パターンの分類した論文があります。1) Roddaらは立脚中期の矢状面からみた下肢アライメントを5つに分類しています。尖足歩行・ジャンプ歩行・見かけ上の尖足歩行・かがみ歩行・非対称歩行の5つの分類です。 非対称歩行の場合は左右のタイプが違っていて、例えば左下肢はジャンプ歩行、右下肢はかがみ歩行の混合というようになります。 専門家同士が一人一人に個性のある痙直型両麻痺のお子さんの歩行について話す際にある程度共通の表現があると理解が深まりやすのではないかと思いましたのでご紹介します。 Roddaらは2001年に片麻痺の歩行についての分類も発表しています。 引用文献 1)Rodda JM,Grauham HK,Carson L,Galea MP,Wolfe R(2004)     Sagital gait patterns in spastic diplegia; J Born and Surg Br86:251-8 こどもリハビリ相談

脳性麻痺 痙直型四肢麻痺 変形と座位姿勢の関係

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  脳性麻痺をもった子どもで痙直型四肢麻痺タイプの子どもに日常の座位姿勢で屈曲姿勢をとりやすい子どもがいます。屈曲優位の座位姿勢は下の絵のように頸部過伸展、肩甲帯が外側に変位し挙上、胸腰椎の屈曲、骨盤の後傾、下肢伸展など一連の異常姿勢につながりやすくなります。 このような姿勢の要因として ①痙縮や筋の短縮など筋肉の過緊張と、低緊張(筋力低下)による抗重力活動の弱化 ②身体の状態を感じ取る体性感覚の障害 ③効果的な抗重力活動の経験不足からくる発達上の問題 ④椅子や抱っこなど物的・人的環境の影響 ⑤その他(興味・関心・生活課題 etc.) などがあります。 姿勢が変形を生み、変形がさらに姿勢を悪くするという悪循環が起きないようにします。 日常の座位姿勢の基本は次の絵のように足部や座骨部で体重を支えて頭部と体幹を直立位にすることです。 もちろんこの姿勢は理想的な姿勢ですので、それぞれの子どもに合わせた調整が必要になります。活動状況に応じ座位全体の角度を変えたり、座位時間の長さを検討したりします。家族・医師・座位保持装置の作成業者・理学療法士・作業療法士が共同で行う座位保持装置の作成調整はかなり個別的な作業です。 こどもリハビリ相談

運動発達 頭ー尾の法則 何故

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運動発達で頭ー尾の法則というのは赤ちゃんは首がすわる→座位ができる→立位ができるように、頭の方から運動がしっかりしてくるという法則です。 生まれる直前の中枢神経は上の絵のように大脳を含めて、かなり成人と同様な形ができています。 でも神経の情報処理が中枢神経全体でできているわけではありません。 神経の情報処理が活発になっている部位では下の絵ように神経に髄消化という現象がおきます。髄鞘化がおきると神経の情報伝達の速度が速くなります。髄鞘化は神経が働いてきた目安にもなります。 髄鞘化前 髄鞘化後 生まれる直前の中枢神経の髄鞘化は脊髄や脳幹でかなり進んできていますが、大脳ではまだ始まったばかりです。大脳皮質の中でも1次運動野や1次感覚野が早く始まり、前頭葉はゆっくり始まるというような順序があります。 そして大脳皮質の1次運動野の中でも髄鞘化にも順序があり、頭の方が先で、足の方が後になります。これは1次運動野の支配する身体部位で頭の方が下で、足の方が上にあるからです。 神経の成熟は下から上に進み、運動発達は上から下(頭‐尾)に進みます。でも胎児期で考えると運動発達の頭‐尾の法則は成立しません。頭‐尾の法則は大脳皮質1次運動野の髄鞘化の順序を反映している現象なので乳児期の運動発達にはあてはまる法則です。 こどもリハビリ相談

子どものリハ室 環境

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  小さい子どもはすべり台が好きです。 何故でしょう。 すべり台には次のような特性があります。 ①色々な感覚がはいります 視覚・前提感覚・固有感覚 ②色々な運動を組み合わせて使います のぼる・しゃがむ・すべる ③はじまりと終わりがわかりやすい はじめに段をのぼる すべって終わり このような経験特性は発達途上の脳の様々な神経ネットワークを刺激します。小さい子どもは自分の神経ネットワークが刺激されることを好みます。神経ネットワークの形成が生存に役立つからでしょう。 リハ室にすべり台が必須だということはありませんが、小さい子どもにとってリハ室という名前は理解できていないので、自分の存在している場所の一つとしてとらえています。そこで起こる直接的な体験との関係がその部屋に対するその子どもラベルということになります。自分の発達にあっていて深い経験ができる場所は子どもにとって楽しい場所だということになります。 話がとぶようで恐縮ですが、厚生労働省が作成している保育所保育指針というものがあります。小さい子どもの発達を保証するための多様な観点から書かれていてわかりやすいので、新人の医学的リハ関係者も一読をお勧めします。 保育所保育指針の中で保育所の環境については以下のように書かれています。 保育の環境  保育の環境には、保育士等や子どもなどの人的環境、施設や遊具などの物的環境、更には自然 や社会の事象などがある。保育所は、こうした人、物、場などの環境が相互に関連し合い、子ど もの生活が豊かなものとなるよう、次の事項に留意しつつ、計画的に環境を構成し、工夫して保 育しなければならない。 ア 子ども自らが環境に関わり、自発的に活動し、様々な経験を積んでいくことができるよう配 慮すること。 イ 子どもの活動が豊かに展開されるよう、保育所の設備や環境を整え、保育所の保健的環境や 安全の確保などに努めること。 医学的リハであっても最終目的は全人的な発達を促すことですので、実施する場が子どもにとって安全で楽しい環境になるような配慮は大切だと思います。 こどもリハビリ相談

乳幼児は不安になりやすい

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乳幼児と付き合うコツの一つは子どもを安心させることではないでしょうか。 小さい子どもは遊んでくれる人、面白い人も好きですが、安心できないと楽しめません。 なぜ乳幼児は不安になりやすいのでしょうか。一人では生きていけない年齢ですから、危険はすぐに親に伝えなければいけないという生存上の理由もあるかもしれません。大脳辺縁系による情動活動を抑えるような神経の活動が弱いということもあります。(大脳皮質前頭前野の活動が発達途上だったり、同じく不安を抑制するセロトニン系神経の活動が発達途上だったりという脳の機能・構造的な原因があります。) 私は男性で高齢のセラピストですから、小さい子を不安にさせる素質があふれています。なので最初はすぐに接近しすぎない、目を合わせすぎないなど気をつけています。安心のもとはお母さんですから、お母さんに抱っこしていてもらうている状態から始めることも多いです。少し安心の雰囲気がでてきたら本人が大好きな玩具を提供することもあります、本人が玩具に集中できるとその時は不安が軽減するからです。 とにかく、セラピストは子どもが不安を感じているのかどうかにアンテナをはりながら、ゆっくりと少しずつすすめるとうまくいくと思います。(たまにはうまくいかないこともありますがその時は静かに状況を受け入れましょう。) こどもリハビリ相談  

胎児期からの運動発達

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  胎児期からの見られる運動は大きく3つに分類できます。 ①胎児期に見られて新生児期から乳児期に消失するもの:   振戦など ②胎児期から見られて生涯継続するもの: 呼吸様運動、眼球運動、吸啜運動など ③胎児期に見られ行動が新生児期に一旦消失し、再び出現するもの:  手ー口接触、キッキングなど 新生児期以降の運動にみられる頭尾の法則は胎児期まで含めて考えると成立しないといわれています。新生児期以降は大脳皮質も含めた神経ネットワークの再構成が行われること、子宮内の羊水のある状況と重力がよりかかる子宮外環境との違いにも原因があると考えられるようです。 頭尾方向への運動発達の原則は、生後の運動発達の範囲ではある程度成立しますので、支援プログラムの検討際には利用しても構わないと思っています。特に家族への説明の際などには原則が単純なのでわかってもらいやすいということがあります。 こどもリハビリ相談

予後を伝える時に注意すること

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  予後というのは将来その子がどんな状態になるのかの予測のことです。セラピストは地域で家族や関係者と話し合いをもつことがあります。一般にはそういう会議の場で障害の専門家として期待されることは予後と具体的な対応を伝える事と言われています。 ただ、専門家とされる人の発言には影響力があるので注意が必要です。例えば他の施設との会議の場で理学療法士が「この子は歩けるようにはなりません、歩けるようになることを期待して関わるのは適切ではありません。」とだけ伝えたらどうでしょうか。介助すれば立つことができる子なのに施設の職員さんは立たせる事もやめてしまうかもしれません。「もしかして脚の関節に悪い影響があるのかもしれない。」と勘違いしてしまうかもしれません。 予後を伝える時には「できるようになること」「できるようになったらこんなに良いことが起きるよということ」をセットにして伝えてほしいのです。どんな素敵な未来があるのかを伝えるために専門家がいるのではないでしょうか。 手をつないで歩けるようになったら、その子と手をつないで歩いてくれる大人が増えるのです。色々な人と手をつないで歩けるようになるのです。その事がどれだけ大きな発達なのかを語れる人になってほしいのです。  もちろん子どもの心や身体にとって無理のある練習を続けているならば中止しなければなりません。それも専門家として大切な事です。ただ、できないことだけを言っているならば片手落ちだと思うのです。 振り返れば私たちにも「できないこと」は山ほどあって、それだけをわざわざ言われても辛いというのは子どもにとっても同じことです。 こどもリハビリ相談

小児と成人の脳性運動障害の違い 図で考える

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  歩く時使用する感覚運動神経の活動は循環することにより適応的な歩行活動が可能になっています。 成人の脳卒中などで運動障害が起きた場合は完成されたサークルの一部が損傷されて歩行機能の低下が起きているイメージです。 脳性麻痺などで生まれた時から運動障害がある場合は発達が未熟でサークルとして完成していません。どんな子どもも生まれてすぐに歩いている子どもはいないので、感覚運動のサークルはつながっていません。健常児であれば加齢によって感覚運動サークルはつながってきます。脳性麻痺児であっても発達によってサークルが完成してきますが、一部困難性を残します。 小児のリハでは発達を促すこと、障害の回復を促すこと、未経験などによる2次障害を減らすことの3つの側面が検討されます。 感覚運動のサークルをつくり自分の身体の状況にあった頭の中の神経の地図をつくるために、小児の場合は自分で環境を捉え、自発的に歩行開始し、成功して覚えるというような側面も考える必要があります。そのために使われる神経の機能もサークルをつなぐために必要だからです。 こどもリハビリ相談

抱っこの仕方を伝える

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 絵はそり返りの強い子どもを抱っこしているところです。子どもが安心して抱っこされるような方法を親や支援者に伝えることがあります。でもなかなかうまく伝えるのは難しいものです。 難しさの原因は何でしょうか。一つは子どもの身体に関してのイメージがセラピストと親で違いがある場合があります。そり返りやすい子ども、丸まりやすい子ども、グニャグニャの子どもその子はどうして抱きにくいのかをわかりやすい言葉で伝えましょう。又、親が抱きやすく、子ども抱かれやすい方法で抱くと何がいいのかのイメージが共有されていないこともあります。呼吸が良くなる、体温が上がらない、疲労しない、安心するなどその抱っこをした結果どんないいことがあるのかもイメージが共有される必要があります。 二つ目はセラピストと親や支援者の体格の違いがあります。セラピストが目の前のこういう風に抱っこしましょうと見せるのは一見わかりやすいのですが、実際に支援者がやってみるとセラピストと手の長さがたりなかったり、足の太さが違っていたりして中々うまくいきません。目の前でみせればできるというわけではないようです。 以上の二つの点を考慮して、抱っこの仕方を伝える時には次のように配慮しています。 ①子どもの身体特徴を伝える②安定した抱っこのメリットを伝える③抱き方のポイントを伝える 例えば頭と肩は前に胸は後ろに、股関節は曲げてなど④一例をセラピストがやって見せる⑤やれそうな方法で支援者自身にやってもらいやりやすい方法を探す こどもリハビリ相談

小児期の脳性運動障害 成人との違いなど

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感覚情報を受け取り、脳内で多様なネットワークで計算して運動指令を出すことを繰り返して行動が変化することを学習といいます。使用できるネットワークが多ければより適応的な運動ができるといえるでしょう。 脳にダメージを受けて運動に障害が出る時はこの計算過程に問題が生じているといえます。 一方に発達という現象があります。乳児から幼児・学童へと年齢が高くなると使用できるネットワークの数が増えたりや情報処理のスピードが速くなります。発達に伴う脳の可塑性は脳内の運動指令に関与する部位だけでなく感覚情報の分析や行動企画、情緒に関与する部位にも生じます。部位によって時期の速い遅いはありますが、脳の発達は脳の全体で生じます。 例えば自信であるとか、自主性や意欲ということについては発達の中で確立していきます。子どもの場合は特別な配慮が必要になります。自信については親御さんや身の回りの大人の称賛や子どもへの信頼が必要になります。そのようなことへの理解は自然に子育ての文化として親御さんは持っていますが、障害がある子どもの親としてのストレスや不安がそれを妨げてしますかもしれません。 歩く機能ということでも、過去に歩いた経験のある人と、一度もあるいたことない子どもでは運動のイメージということについて違いがあります。子どもは実際に歩行練習することがより重要になるといわれるのはそういうことかもしれません。 小児科医師、保育士や幼稚園教諭などは乳幼児期の子育てについて専門家としてより深い知識や技術をもっています。リハビリの専門家は障害やその回復についての知識や技術が高いでしょう。チームワークによって障害の回復と発達の保証は同時に目指すことが必要だと思います。 こどもリハビリ相談  

脳性麻痺 クロートウ(Claw toe)

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  痙直型の脳性麻痺をもったお子さんの中に足のゆびが曲がっている状態で体重を支えている子どもがいます。クロートウといって足のゆびを曲げる筋肉の緊張が高いと生じます。大人の脳卒中後の後遺症でもこのような足で体重を支える方がいます。 何十年か前に私が新人の頃痙直型の子どもに立位の練習をしている時、足のゆびが曲がった状態のままで立たせていると指導者の先生からストレッチなどして足のゆびが伸びた状態で立たせないといけないと指導を受けました。     足の裏の体重負荷の感覚をしっかりいれると、それが無意識に脳の中で別の足の状態として記憶され、後に足のゆびを伸ばした状態で立てるようになる可能性があることを後で知りました。それは形だけの問題ではなく、バランスや歩行能力の向上にもつながります。 もちろん麻痺の状態によってそれを経験させるだけでは改善しない子どももいますが、特に年齢の小さいうちは感覚運動の神経ネットワークの働きの向上が期待できるのでPTの時は必ずしっかり足のゆびを伸ばして立たせますし、お父さんやお母さんにも家で手がとれる時は足のゆびを伸ばすように助言しています。 そうした指導でどの子どもは感覚運動経験が運動の改善につながり、どの子どもは改善につながらないのかを事前に子どもに何らかのテストしてみて判別できればいいのですが、正直やってみなければわからないということはあります。やってみなければ改善する可能性はゼロですから、やってみて経過を追い判断するようにするのが良いと思っています。 こどもリハビリ相談

脳性麻痺 痙直型両麻痺 理学療法

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脳性麻痺の痙直型両麻痺は痙性麻痺が下部体幹から下肢にかけてあります。 痙性麻痺は下肢の自由な動きを阻害したり、変形拘縮の原因にもなります。 痙性治療は運動療法、装具療法、経口抗痙縮薬、ボツリヌス療法、ITB、フェノールブロック、選択的脊髄後根離断術、整形外科手術などを組み合わせて実施します。 脳性麻痺の痙直型両麻痺を持った子どもの多くはGMFCSのレベルⅠ~Ⅲにあるので最終的の移動能力として歩行練習を行うことになります。歩行のみの移動になるのか、車いすなど併用するかはその方の状況によってことなります。 1) 脳性麻痺痙直型両麻痺の運動療法では筋力強化やストレッチ、歩行練習ととも身体のイメージを高める練習として以下のようなプログラムをその子に合わせて行うこともあります。 ①   骨盤を安定させて下肢を選択的に運動させることや下肢を安定させて骨盤をコントロールする練習 ②足部を床面に接して動かす練習 ③頭部体幹下肢を一直線上にして真っすぐ立つ練習 ④足首を使って立位から前方への体重移動する練習 ⑤一側の足を後方において前後にステップしているような姿勢を保つ練習   *ご父兄の方でブログを読んでおられる方へ   脳性麻痺をもった子どもの状態像は複雑なので痙直型両麻痺といっても同じではありません。その子の状況に合わせた支援を専門家と考えることをお勧めします。 参考文献 1)中徹 : 脳性麻痺の理学療法 . 理学療法学 40(4):302 ‐ 305.2013 こどもリハビリ相談

家族中心ケア②

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  なぜ家族中心なのでしょう。 アメリカで家族中心ケアの考え方がでてきたのは1960年代消費者運動に起源がある 1) といわれているそうです。その後長い歴史を経てきて色々な考え方が家族中心ケアの考えに影響を与えてきて現在の家族中心ケアの概念ができています。家族中心ケアの概念は色々なものを含んでいることを知っておきましょう。 小さい子どもは支援契約ができないので親が代わりに契約するということがあります。情報を提供し、家族の意見を取り入れていくことで子どもや家族の権利を守ることができます。 小さい子どもでは身近な信頼できる大人との愛着の形成が人格形成の形成に重要であるという考え方があります。お父さんやお母さんは子どもにとって大好きな人で将来にわたって心のよりどころになります。安全・安心な家庭で生活することは子どもの発達にとっても大事なことです。そのために家族の存在は欠かせません。 家族は個々のユニークな子どもの生活や生活環境についてよく知っています。子どもも家族のことを信頼しています。ですから支援チームの一員として家族を考えようという考えもあります。 子どもへの支援を仕事にしていくと家族と接する事が多くあります。家族は、子どもが支援を受けられるようにするためだけにいるのでなく、インフォームドコンセントを理解するためにだけいるのでもなく、子どもへの支援の効果を高めるためにもわざわざ参加してもらっているのだと考えると良いと思います。 参考文献  1)総論(1) 基本に戻ってもう一度確認しよう! ファミリーセンタードケアの4つの中心概念  浅井宏美 聖路加看護大学大学院看護学研究科博士後期課程  ネオネイタルケア    26(10):  990-995, 2013. こどもリハビリ相談

家族中心ケア

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子どもへの支援といえば家族との関係はかかせません。関わりの基本的な考え方として家族中心ケアというものがあります。   家族中心ケアというのは子どもの健康や福祉の分野で仕事をしていく上で、患者・家族を尊重し、その強味を生かし、患者・家族と情報交換や共同作業を行っていこうという考え方です。 歴史的な経過や定義については参考文献を読んでみてください。とても詳しく読みやすく書かれています。 病院でも児童福祉の現場でも家族中心ケアの考え方をもとに動こうとしているところが多いと思います。でも実践することは中々難しいというのが自分の実感です。長年やっているとなんとなく忘れてしまう、習慣で流されてできていると思ってしまうことも多いように思います。例えば情報交換の重要性といっても交換すべき有用な情報をあまり持っていなければ駄目でしょうし、逆に沢山専門情報もっているとそれをわかりやすく整理するのは大変です。自分が専門家であるという自身があることが裏目になることもあります。 定義があまりに複雑すぎると使えないので4つなり5つなりの重要な要素を自分の納得できて忘れないようなことばで書いてみるといいのかもしれません。自分の場合は最初に書いた下線部のような理解です。Children's Hospital LOSANGELの中のページの記事も自分には使いやすいように感じました。 https://www.chla.org/blog/rn-remedies/the-importance-family-centered-care 研究のための概念整理ではなく、臨床の時忘れない覚書のようなものであれば、5年くらいごとに考え直して自分にわかりやすい、納得できる文章になるよう整理してもいいのではないでしょうか。 参考文献  総論(1) 基本に戻ってもう一度確認しよう! ファミリーセンタードケアの4つの中心概念 浅井宏美 聖路加看護大学大学院看護学研究科博士後期課程 ネオネイタルケア  26(10):  990-995, 2013. こどもリハビリ相談

脳性麻痺 地域リハ 運動面の支援目的

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  脳性麻痺の在宅リハビリでは様々支援目標を立てます。姿勢運動面では大きく3つの目的があると思います。 ①多様な運動パターンの経験:これは神経可塑性が高い乳幼児期に強調される視点です。人は脳の中に記憶されている多様な運動パターンを組み合わせたり、修正したりすることでより環境に適応しやすいように運動を発達させていきます。脳性麻痺では脳障害の影響で姿勢運動パターンが減少しています。姿勢運動や装具・手術・生活環境の工夫、その他を組み合わせて多様な感覚運動を経験させて潜在的な能力を発揮できるように支援します。 ②生活機能を獲得する:生涯にわたり求められる視点です。年齢相応の社会生活、本人の希望を踏まえて必要な生活機能を獲得できるように支援します。方法ではなく、目標の達成感結果が重要になります。 ③健康を維持する:呼吸循環器系・運動器系の機能構造をできるだけ発達させ、長く生涯にわたって機能を維持することが求められます。筋肉・骨・関節の構造面の細部にわたる評価と将来を見越した評価は乳児期から継続して必要とされます。支援方法・治療方法は多種多様ですので多職種連携も必要です。生涯にわたって健康状態を維持するためには身体運動の習慣化も必要です。フィットネスに関わる体育系の専門家育成、それを実施する施設環境の改善も必要です。そのためには多くの一般の方々の理解や協力も必要になると思います。 こどもリハビリ相談

背臥位の発達 手と手を合わせる

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赤ちゃんが3ヶ月頃になると背臥位で手と手を合わせたり、自分の手を眺めたり、自分の手をなめたりします。ハンドリガードと呼ばれます。 その時赤ちゃんの脳の中では左右の体性感覚野が同時に活動したり、視覚野と体性感覚が同時に活動したり、手の体性感覚野と口周囲の体性感覚野が同時に活動しています。 ”Hebbの法則”という学習における神経系活動についての重要な法則があります。それによるとAとBの神経細胞が同時に興奮することが繰り返されるとAからBへの細胞の興奮伝達効率が増強されます。そのことを言葉を変えると記憶というそうです。 乳児期は 多様な感覚運動学習がおきます。それらは感覚間の統合の経験によって生じます。背臥位姿勢の発達は感覚間統合にとって重要な意味を持つといわれています。 障害を持った赤ちゃんが目の前に来た時に大人は玩具での遊びの種類や移動能力だけを見るのではなく、その基礎となる身体図式(身体部位間や身体と空間の関係の記憶)もみていけるといいと思います。 PTは麻痺などの影響で手と手を合わせたり手を口にもっていったことの経験がない子どもと会うことはめずらしくありません。抱っこや寝ている姿勢を工夫して感覚統合経験を増やすことはそれほど難しくない場合もあります。それが将来役に立つことを大人が思いつくことができるかどうかにかかっています。 こどもリハビリ相談

頸部コントロールの発達

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頸部のコントロールは新生児では腹臥位で一瞬頭をあげる事ができます。その際は一側のみの背側の筋肉を使っています。 3ヶ月の子は頚部両側の背側の筋肉に加えて、腹側の筋肉も使って持続して正中位で頭をあげる事ができます。 4ヶ月になると胸を支えてあげると頭を垂直に保つことができるようになります。いわゆる首が座ったという状態です。その際には頸部の前後左右の筋肉を同時にまた選択的にも使うことができるようになります。 体幹の筋肉の使い方の発達は月齢が加わると胸郭から骨盤帯に発達が移っていきます。それぞれの部位でも背側にある伸筋群の活動に腹側にある屈筋群が加わることで両側の抗重力伸展活動が獲得されます。その後選択的な側屈が可能になり、最後に回旋運動が可能になるという発達の法則性は類似しています。 このような筋肉の使い方の発達の法則を知ることは何に役立つのでしょうか。 運動の発達に遅れや異常がある子ども達の姿勢運動を評価する際に役に立つと思います。 例えば、不安定な歩行をしている子どもで頭部や体幹の背側の伸筋群のみで姿勢を維持している子どもがよくいます。その子の運動が何か変というだけでなく、何が原因なのかを知ることに役立ちますし、トレーニングの方向性が検討しやすくなります。 こどもリハビリ相談

脳性麻痺と自閉症スペクトラムを両方持った子ども達 

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 脳性麻痺をもった子どもが自閉症スペクトラムを合併する比率は10~15パーセントといわれています。 1) 脳性麻痺の運動障害の代表的のものに①筋緊張の異常②未熟な運動パターンの強い影響などがあります。結果としてバランスや移動という運動機能が阻害されたり、2次的な関節の拘縮変形が生じます。 自閉症スペクトラムの代表的な障害には①コミュニケーションや社会性の障害②イマジネーションの障害(物事の時間的な流れを把握したり、予測したりすることが苦手)があります。感覚や注意の障害も持っている場合も多くあります。 どちらの障害も症状が複雑で個々の子どもにの違いがあります。そのため、状況が許すなら子ども理解のための評価は多職種が関わる方が望ましいと思います。(医師、理学療法士、作業療法士、臨床心理士、言語聴覚士なども関わってきます。)しかし、脳性麻痺と自閉症スペクトラムの両方を詳しく知っているセラピストは少数なので、どうしても自分のよく知っている障害の方によせた評価になりやすい傾向があります。脳性麻痺だけの障害の方にも独自のコミュニケーションや社会性の障害があり、自閉症スペクトラムだけの障害の方にも独自の姿勢運動の障害あるので話は複雑です。しかし、専門家がそれぞれの子どもの個性をよりよく理解する目的で一致することが大切だと思います。 参考文献                                    1)脳性麻痺リハビリテーションガイドライン第2版 p.230-237:監修 公益社団法人日本リハビリテーション医学会 2014 金原出版株式会社 こどもリハビリ相談

歩き始め②

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  上のイラストのように赤ちゃんが立っている状態で1メートル先にいるお母さんが手を差し出しているのを見た時、赤ちゃんの頭の中に下のイラストのように自分も含めて状況を思い浮かべられればその子は歩きだせるのはないでしょうか。 例えば同じ状況でもお母さんが10メートル先にいる時には歩かないかもしれません。それはその距離でお母さんを見た映像と自分自身が歩くことがセットで思い浮かびにくいからです。その場合は声を出してお母さんを読んだり、ハイハイをして接近していくのではないでしょうか。 視空間認知の基礎は脳内の視覚マッピングと体性感覚マッピングの照合といわれています。 体性感覚マッピングは過去の姿勢運動経験によってつくられます。 では過去に歩いたことがない赤ちゃんの場合はどうなるのでしょうか。お母さんへの接近をしたいという要求で上肢のリーチを思い浮かべてていて前方に体重移動、その後偶然一歩がでて、セントラルパターンジェネレーターが駆動しだすということもあるかもしれません。 その子の過去の運動経験と遺伝的に持ち合わせている脳内に持っている歩行パターンジェネレーターの活動が偶然連続して働きだすという瞬間が歩き始めではないでしょうか。 歩き始めに関してセラピストにできることは外部環境や身体内部環境を調整して好ましい偶然が生み出されやすい状況を作ることだと思います。そして、そこに偶然が関与すると知っておくことはとても大切なことのように思います。 多様な結果を拒絶するのではなく前向きに受け止めていくような、そんな余裕や謙虚さにつながるからです。 こどもリハビリ相談

歩き始め

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  一人で床から立つことができるようになった子どものお母さんから「このあと何ができると歩けるようになりますか。」と聞かれたら何と答えるとよいでしょう。 「ここまでできるようになればもう少しです。焦らずに子どもの成長を待ちましょう。」と伝えることもあるかもしれません。別に間違いではありません。正解は一つではありません。 お母さんが子どもの2~3歩前に立って呼んでみると歩き始めるかもしれません。これは赤ちゃんの脳の中にお母さんと自分の位置関係が描きやすいので歩き始める意欲が湧いた結果です。最初の問に答えるならば、「子どもの脳の中にお母さんと自分の位置関係がしっかりと描けるようになると歩けます。」ということになるかもしれません。空間認知も歩くことに影響を与えます。 ステップ肢位の練習をすることで歩けるようになる子どももいます。ステップ肢位が保てるということは体幹・下肢の筋力と関節可動域がある水準に達したということです。又、ステップ肢位ができると歩行の時に前方下肢への荷重感覚刺激や後方股関節周囲筋への伸張刺激を強く与えることができて、歩行パターンを生み出す神経群を活性化することができます。「子どもが立位でセントラルパターンジェネレーター(脳幹や脊髄にある歩行運動のパターンをだすところ)を使いやすいような姿勢がとれるようになると歩けます。」と言ってもいいかもしれません。 こどもリハビリ相談