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1月, 2021の投稿を表示しています

重症心身障害児の呼吸管理

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  重症心身障害児の呼吸障害いくつかの原因があります。 対策も異なるのでお子様の呼吸障害のタイプを知っていることは大切です。複数の状態が併存しているお子様もおられます。 大きくは3つのタイプがあると言われています。 ①中枢性低換気(脳幹部の呼吸中枢)の障害 一次性(重症仮死に伴うもの)二次性のもの(気道狭窄により低酸素・低換気が継続することによって呼吸中枢が麻痺してくるものやお薬の影響によるもの)あります。 対策はNPPVなど人工呼吸器の使用やお薬の調整があります。 ②上気道下気道の空気通過が悪くなるもの(閉塞性呼吸障害) イラストに示したように様々の原因があります。代表的なものはアデノイドの肥大、舌根沈下、下顎の後退、喉頭軟化・披裂部陥入・気道狭窄・気管支喘息などがあります。 対策として経鼻エアウエイ、アデノイドへの耳鼻咽喉科的治療、気管切開、喉頭軟化に対する外科的治療、喘息への薬物治療・ポジショニングなどがあります。 ③肺が広がりにくくなるもの(拘束性換気障害)                        胸郭の変形・呼吸筋の機能低下・肺炎などが原因となります。対策として、呼吸筋のストレッチ、呼吸介助法、体位排痰、薬物治療、ポジショニングがあります。 重症心身障害児では上記3つの呼吸障害に加えて呼吸憎悪因子があるといわれています。                     ①分泌物貯留②胃食道逆流症③誤嚥④てんかん⑤過緊張などがそれにあたります。これらの症状の改善も呼吸機能の改善につながります。 体調が悪くなって入院している状態と、安定した状態で家庭にいる時では対応方法も変わってきます。体調に合わせてにはなりますが、安全・安心・安楽な状態を作ることが目標になってきます。                                

F-word (障害児の生活機能把握の考え方)

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カナダのMacmaster大学にある CanChild のRosembaum教授らが提唱している「F-word」という障害児の生活把握方法があります。世界保健機関(WHO)の国際生活機能分類(以下ICF)の枠組みに障害を持った子どもの生活に重要なな6要素を当てはめてつくられています。新しい小児理学療法の成書でも紹介されるようになってきました。 6要素とは「Fitness フィットネス」「Function 機能」「Friends 友達」「Family 家族」「Fun 楽しみ」「Future 未来への期待や夢」の6つの要素です。それぞれの意味や関係性について詳細は次のリンク「 F-word 」を参照していただけるとありがたいと思います。ICFでは「心身機能・身体構造」「活動」「参加」「環境」「個人因子」という要素で生活機能を表しています。それに比べてより誰にでもイメージが持ちやすいと思いました。 私自身はこの考えを知った時に最初に印象に残ったのはポスター紹介の中の「Function 機能」についての説明でした。ポスターでは生活の中で何かができることについて障害を持った子どもが「他の人とやり方は違うかもしれないけど、それは大事なことではないでしょ。自分はできるのだから挑戦させて!!」と言っていました。 理学療法士は生活の中で何かができるようにする仕事です。ただ、やり方を決めつけた中での何かができるようになる事を求めがちです。(未来の理学療法士は違うのかもしれない。)何かができるのにやり方は関係ないということはもう一度頭にいれておこうと思い印象に残りました。  

関節拘縮

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  運動麻痺があったり、関節や筋肉の障害が原因で生活の中で関節を動かすことが困難な方では関節の拘縮(関節の動く範囲が制限されるが状態)が起こりやすいといわれています。 大人の方でも関節拘縮は生じますが、子どもの場合には大人と違った原因もあります。 まず大人と子どもに共通な原因は、麻痺や筋力低下、痛み、治療のためのギプス固定などにより長期間関節動かせないことにより、筋肉やその他の関節周囲の軟部組織が短縮してしまうことです。 次に子ども独自の原因です。子ども場合は骨の成長が著しいことが拘縮の発生に拍車をかけます。身長が伸びていく時には骨は少しずつ自分で伸びていきますが、筋肉は筋肉自身が自分だけで伸びていくのではなく、関節が動く時に伸ばされることでその長さが伸びていきます。骨と筋肉が長さが伸びる方法が違うので、身長が伸びる時期には拘縮が進みやすくなります。麻痺が悪くなったのではないかと思われる親御さんもいらっしゃいますが、生まれつきの関節拘縮で麻痺がない方でも変形は進行します。 小学校6年生までの伸長の平均は男女差がありませんが、思春期が始まるために女子の伸長は10歳~12歳の2年間に急速に伸び、その後発育速度は急速に落ちていきます。男子は遅れて11歳~14歳の3年間に急速に身長が伸びます。 この時期は拘縮が進みやすくなります。 関節の可動範囲に問題があるお子さんでは小学校期には、ストレッチを毎日行うように指導しています。 ストレッチをする際は以下のことに配慮しましょう。 ①どの筋肉をストレッチする必要があるか専門家に特定してもらう(ストレッチする筋肉の数を限定して実施時間を最小にする)  ②毎日習慣にできるように、日常のルーチンにとりいれる(お風呂の後、寝る前など) ③関節を動かす際はゆっくりと愛護的に動かし無理な力で動かさない ④関節の動きの最終域で止めて20秒保持する ⑤状況によってはマッサージや筋膜リリースと組み合わせる(詳しい方法は別の機会にお伝えできればと思います)

脳性麻痺児の理学療法 アテトーゼ型 ヒョレア

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脳性麻痺を持った子どもと言ってもその状態像はかなり多様です。そのため理学療法プログラムを決定していく時には現在年齢、粗大運動能力分類システム(GMFCS)*による粗大運動の予後予測と共に麻痺のタイプと分布を考慮して大枠の分類を考えながら行っていきます。 今日は麻痺のタイプの一つであるアテトーゼ型の中のヒョレア型についてお話します。アテトーゼ型の障害は脳の大脳基底核システムの損傷に由来するとされています。運動の症状としては安定性の障害といわれれます。 筋肉の緊張は低めなので柔らかく、無意識で関節運動が生じたりします。そのため中間位で関節運動を止めておくことができません。 関節運動が中間位でとめられないとどういうことがおきるでしょうか。例えば立位における下肢を考えてみましょう。股関節が屈曲伸展の中間位で体重を支えている状態が一番安定しています。足関節も90度くらいの角度で一番安定します。このような配置をすると立位が安定していることを脳は関節や筋肉からの固有感覚情報と視覚・前庭感覚を統合することで記憶していきます。そのような記憶の事を身体図式と呼びます。 このような身体図式が獲得されていくのは生後です。もし、生後すぐに股関節の周囲の筋肉に不随意運動があったり、股関節を曲げる筋肉と伸ばす筋肉を同時に収縮させることができない子どもさんは立位の身体図式の獲得に問題が生じます。 理学療法士はその子の生活上立位姿勢の獲得が可能であると思えば、良い下肢の配置の中で体重を付加し、その際に生じる多種の感覚を刺激して身体図式を学習させる方法をいくつか知っています。 例えば上肢に麻痺が少なければ上肢をテーブルに支持させながら直立位をとらせたり、下肢の関節に圧迫刺激を加えたり、様々な装具を使用したりするなどの工夫があります。 *粗大運動能力システム(GMFCS)について詳しく知りたい方はインターネット検索をかけてみてください。すぐでてきます。

抱っこでのトランスファー(重心児・身体が丸まりやすい子の場合)

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  抱っこでのトランスファー     支える場所をお尻の下と背中の下にすることで子どもは状態が伸ばしやすくなり呼吸がです。 下の図のようになると呼吸が苦しくなります 子どもの体が大きくなってきたら無理せず二人で介助しましょう。

つま先歩き(尖足歩行)

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脳性麻痺や発達障害を持つ子どもの一部につま先歩き(尖足歩行)をする子がいます. そういう子どもは無意識で歩くとつま先歩きになってしまいます。「その歩き方はダメ」と注意しても子供は傷つくだけです。もし、別の歩きを教えたければ子どもが踵をついて歩いている時に「その歩き方がいい」と褒めてあげる方がいいでしょう。しかし、ゆっくりと意識すれば踵をついた歩きができるというレベルの子どもは常に踵をついて歩くことは中々できません。それは左右の片脚立ちをゆっくりと交互に行っているような状態だからです。私たちの歩行はセントラルパターンジェネレーター(CPG)という脳の部位を使った無意識運動が大部分になります。 つま先歩きの原因は運動の麻痺の有無や程度・タイプなどによって様々です。 状況に応じて改善方法も様々となります。運動療法、装具療法、薬物療法、手術療法をその子どもによって組み合わせて実施することになります。専門家に相談されることをお勧めします。 参考メモ    意識的運動と無意識の運動 歩くという運動の中で意識的な部分は「歩行の開始、終了、水溜まりなどを見つけて避ける時」などです。いったん開始された歩行を障害物のない環境で継続する時は無意識の運動になります。歩行に関していえば、大部分の動きが無意識に行われます。このことにより話しながら歩いたり、考えながら歩くようなことが可能になります。(二重課題) 脳との関係では意識的な部分は大脳皮質が関与し、無意識の運動では脳幹や脊髄の中にあるセントラルパターンジェネレーター(CPG)の働きが中心になります。

脳性麻痺の定義

 最近、日本では脳性麻痺の定義を示す場合二つの定義を並べて示す場合が多いようです。 1つは1968年の厚生省脳性麻痺研究班会議で策定された定義です。 「受胎から新生児期(生後4週間以内)基づく、までの間に生じた、脳の非進行性病変に永続的なしかし、変化しうる運動及び姿勢の異常である。その症状は満2歳までに発言する。進行性疾患や一過性運動障害又は障害正常化するであろうと思われる運動発達遅延は除外する。」 もう1つは2004年に開催されたWorkshop in Bethesda で策定された定義です。 「脳性麻痺の言葉の意味するところは、運動と姿勢の発達の異常の一つの集まりを意味するものであり活動の制限を引き起こすが、それは発生・発達しつつある胎児または乳児の脳の中で起こった非進行性の障害に起因すると考えられる。脳性麻痺の運動障害には、感覚、認知、コミュニケーション、認識それと/または行動、さらに/または発作性疾患が付け加わる。」 別に1998年欧州で脳性麻痺の他施設共同研究(surveilance cerebral palsy in Europe; SCPE)が行われた際、施設間で統一された定義がなかったので5つのポイントを提示してそれを定義の大枠としています。。脳性麻痺の複雑な定義のポイントとしてわかりやすいので記載します。 ①脳性麻痺は障害の複合体である ②これは永続するが変わらない ③これは運動および/または姿勢と運動機能の障害である ④これは非進行性の干渉要因/病変/異常に起因する ⑤この干渉要因/病変/異常は成長する脳に起因する 医学的診断は医師がつけるものです。その定義は一定の人たちの共通理解として定義されていくもので時代により変更されていくものです。最近の脳性麻痺の定義に対する変遷は内容的にも納得できるところがあります。 しかし、理学療法士として,直接に脳性麻痺を持つ子どもやその家族と関わって感じるのは、脳病変の診断のみ(例えば脳室周囲白質軟化症、低酸素脳症とかだけで)で運動面や行動面の状態像が詳しく説明されていない家族もいるという現実があります。また、脳性麻痺という診断がついていても、脳性麻痺という診断はその意味するところが大変複雑で一般の方には理解しにくいところがあるのではないかとも思います。 医師による障害の医学的診断は親が子どもを理解していくうえで