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7月, 2021の投稿を表示しています

背臥位の発達 手と手を合わせる

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赤ちゃんが3ヶ月頃になると背臥位で手と手を合わせたり、自分の手を眺めたり、自分の手をなめたりします。ハンドリガードと呼ばれます。 その時赤ちゃんの脳の中では左右の体性感覚野が同時に活動したり、視覚野と体性感覚が同時に活動したり、手の体性感覚野と口周囲の体性感覚野が同時に活動しています。 ”Hebbの法則”という学習における神経系活動についての重要な法則があります。それによるとAとBの神経細胞が同時に興奮することが繰り返されるとAからBへの細胞の興奮伝達効率が増強されます。そのことを言葉を変えると記憶というそうです。 乳児期は 多様な感覚運動学習がおきます。それらは感覚間の統合の経験によって生じます。背臥位姿勢の発達は感覚間統合にとって重要な意味を持つといわれています。 障害を持った赤ちゃんが目の前に来た時に大人は玩具での遊びの種類や移動能力だけを見るのではなく、その基礎となる身体図式(身体部位間や身体と空間の関係の記憶)もみていけるといいと思います。 PTは麻痺などの影響で手と手を合わせたり手を口にもっていったことの経験がない子どもと会うことはめずらしくありません。抱っこや寝ている姿勢を工夫して感覚統合経験を増やすことはそれほど難しくない場合もあります。それが将来役に立つことを大人が思いつくことができるかどうかにかかっています。 こどもリハビリ相談

頸部コントロールの発達

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頸部のコントロールは新生児では腹臥位で一瞬頭をあげる事ができます。その際は一側のみの背側の筋肉を使っています。 3ヶ月の子は頚部両側の背側の筋肉に加えて、腹側の筋肉も使って持続して正中位で頭をあげる事ができます。 4ヶ月になると胸を支えてあげると頭を垂直に保つことができるようになります。いわゆる首が座ったという状態です。その際には頸部の前後左右の筋肉を同時にまた選択的にも使うことができるようになります。 体幹の筋肉の使い方の発達は月齢が加わると胸郭から骨盤帯に発達が移っていきます。それぞれの部位でも背側にある伸筋群の活動に腹側にある屈筋群が加わることで両側の抗重力伸展活動が獲得されます。その後選択的な側屈が可能になり、最後に回旋運動が可能になるという発達の法則性は類似しています。 このような筋肉の使い方の発達の法則を知ることは何に役立つのでしょうか。 運動の発達に遅れや異常がある子ども達の姿勢運動を評価する際に役に立つと思います。 例えば、不安定な歩行をしている子どもで頭部や体幹の背側の伸筋群のみで姿勢を維持している子どもがよくいます。その子の運動が何か変というだけでなく、何が原因なのかを知ることに役立ちますし、トレーニングの方向性が検討しやすくなります。 こどもリハビリ相談

脳性麻痺と自閉症スペクトラムを両方持った子ども達 

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 脳性麻痺をもった子どもが自閉症スペクトラムを合併する比率は10~15パーセントといわれています。 1) 脳性麻痺の運動障害の代表的のものに①筋緊張の異常②未熟な運動パターンの強い影響などがあります。結果としてバランスや移動という運動機能が阻害されたり、2次的な関節の拘縮変形が生じます。 自閉症スペクトラムの代表的な障害には①コミュニケーションや社会性の障害②イマジネーションの障害(物事の時間的な流れを把握したり、予測したりすることが苦手)があります。感覚や注意の障害も持っている場合も多くあります。 どちらの障害も症状が複雑で個々の子どもにの違いがあります。そのため、状況が許すなら子ども理解のための評価は多職種が関わる方が望ましいと思います。(医師、理学療法士、作業療法士、臨床心理士、言語聴覚士なども関わってきます。)しかし、脳性麻痺と自閉症スペクトラムの両方を詳しく知っているセラピストは少数なので、どうしても自分のよく知っている障害の方によせた評価になりやすい傾向があります。脳性麻痺だけの障害の方にも独自のコミュニケーションや社会性の障害があり、自閉症スペクトラムだけの障害の方にも独自の姿勢運動の障害あるので話は複雑です。しかし、専門家がそれぞれの子どもの個性をよりよく理解する目的で一致することが大切だと思います。 参考文献                                    1)脳性麻痺リハビリテーションガイドライン第2版 p.230-237:監修 公益社団法人日本リハビリテーション医学会 2014 金原出版株式会社 こどもリハビリ相談

歩き始め②

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  上のイラストのように赤ちゃんが立っている状態で1メートル先にいるお母さんが手を差し出しているのを見た時、赤ちゃんの頭の中に下のイラストのように自分も含めて状況を思い浮かべられればその子は歩きだせるのはないでしょうか。 例えば同じ状況でもお母さんが10メートル先にいる時には歩かないかもしれません。それはその距離でお母さんを見た映像と自分自身が歩くことがセットで思い浮かびにくいからです。その場合は声を出してお母さんを読んだり、ハイハイをして接近していくのではないでしょうか。 視空間認知の基礎は脳内の視覚マッピングと体性感覚マッピングの照合といわれています。 体性感覚マッピングは過去の姿勢運動経験によってつくられます。 では過去に歩いたことがない赤ちゃんの場合はどうなるのでしょうか。お母さんへの接近をしたいという要求で上肢のリーチを思い浮かべてていて前方に体重移動、その後偶然一歩がでて、セントラルパターンジェネレーターが駆動しだすということもあるかもしれません。 その子の過去の運動経験と遺伝的に持ち合わせている脳内に持っている歩行パターンジェネレーターの活動が偶然連続して働きだすという瞬間が歩き始めではないでしょうか。 歩き始めに関してセラピストにできることは外部環境や身体内部環境を調整して好ましい偶然が生み出されやすい状況を作ることだと思います。そして、そこに偶然が関与すると知っておくことはとても大切なことのように思います。 多様な結果を拒絶するのではなく前向きに受け止めていくような、そんな余裕や謙虚さにつながるからです。 こどもリハビリ相談

歩き始め

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  一人で床から立つことができるようになった子どものお母さんから「このあと何ができると歩けるようになりますか。」と聞かれたら何と答えるとよいでしょう。 「ここまでできるようになればもう少しです。焦らずに子どもの成長を待ちましょう。」と伝えることもあるかもしれません。別に間違いではありません。正解は一つではありません。 お母さんが子どもの2~3歩前に立って呼んでみると歩き始めるかもしれません。これは赤ちゃんの脳の中にお母さんと自分の位置関係が描きやすいので歩き始める意欲が湧いた結果です。最初の問に答えるならば、「子どもの脳の中にお母さんと自分の位置関係がしっかりと描けるようになると歩けます。」ということになるかもしれません。空間認知も歩くことに影響を与えます。 ステップ肢位の練習をすることで歩けるようになる子どももいます。ステップ肢位が保てるということは体幹・下肢の筋力と関節可動域がある水準に達したということです。又、ステップ肢位ができると歩行の時に前方下肢への荷重感覚刺激や後方股関節周囲筋への伸張刺激を強く与えることができて、歩行パターンを生み出す神経群を活性化することができます。「子どもが立位でセントラルパターンジェネレーター(脳幹や脊髄にある歩行運動のパターンをだすところ)を使いやすいような姿勢がとれるようになると歩けます。」と言ってもいいかもしれません。 こどもリハビリ相談

脳性麻痺 痙直型四肢麻痺 姿勢運動の多様化を求めて

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       1の絵は健常な子どもの6か月の腹臥位姿勢で、エアプレーンと呼ばれる最大の伸展活動です。2は痙直型四肢麻痺で屈筋群活動が強い腹臥位です。 2の子どもの姿勢保持能力を高めたり、関節可動域を維持するために伸展筋群の活動を促していく運動プログラムを取り入れられないか検討します。 まず、身体の一部を介助したり、装具を使ったりすることで子どもに伸展のパターンを生み出す潜在的能力があるのかを見極めることからはじまります。 そしてある条件で伸展能力をもっていることがわかれば、それを日常性生活に導入することで神経ネットワークの使用頻度を増やしていきます。 予備知識として1と2の姿勢運動のパターンの違いの知識が必要です。 1は上下肢は伸展外転位を示し、肩甲帯は下制内転、体幹部の伸展は腰椎部にまで及んでいます。 2は上下肢は屈曲位、体幹も屈曲位です。 次にその子を介助して上下肢の伸展外転と肩甲帯及び体幹の伸展が同時に出現できないかを見極めます。 具体的な方法はいろいろあります。屈曲位にある上肢や下肢を伸展外転方向に誘導することで体幹が伸展しこないか、肩甲帯内転下制や脊柱の伸展を先に誘導した後に上下肢の伸展外転を誘導できないのか、装具の使用なども検討します。 介助下できるならば、例えば立位保持具や座位保持具など日常生活の中で同じ運動パターンが出現しないか検討します。運動パターンの出現頻度を高めたいからです。 こどもリハビリ相談  

赤ちゃん 筋力強化

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  赤ちゃんに筋力強化をするということと、抗重力活動を高めるということはほぼ同じ意味かなあと思います。 大人で筋力を強化する際にも、トレーニングで最初に高まるのは神経系の情報伝達能力です。その後トレーニングを継続すると筋肉の肥大という現象が起きてさらにパワーをさらに高めることができます。 発達というもう少し長い期間の現象を考えた場合でも乳幼児期は急激な神経系の発達の時期で、思春期以降に筋肉の肥大化に適した時期がきます。 そういうわけで赤ちゃんの時期の筋力強化と感覚運動神経系の活動が活発になることは同じ意味と考えています。 また、筋肉はその作用の仕方で主動筋、拮抗筋、協同筋という3つに分類をすることがあります。赤ちゃんの時代は主動筋だけでなく、拮抗筋や協同筋も使えるようになっていくことが重要です。 具体例をあげると、赤ちゃんがうつ伏せで頭を上げる際には首の後側の筋肉だけでなく、首の前側や体幹の前後の筋肉も収縮できると頭は楽にあげられます。肩の周りの筋肉も使えるとさらに楽に頭を上げることができます。 赤ちゃんの抗重力活動を促す(筋力を高める)時には多くの筋肉を効率的に使えているかを気にしながら行うのがポイントです。 こどもリハビリ相談

乳児期 体幹機能の発達

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アプローチの中で子ども体幹の筋活動を高めることができると、リラクセーションが得られたり、運動がスムースに行えたりする場合があります。 アプローチのためには評価が必要です。子どもの体幹機能を評価するにはその発達を知ることが基本となります。 特に体幹の形状と運動パターンの変化に注目すると良いと思います。形状については呼吸機能の発達の知識が役に立ちます。運動パターンについては粗大運動の発達の知識が役に立ちます。 呼吸機能の発達伴う体幹形状の変化は新生児から成人呼吸への変化を考えます。新生児は①口腔内の舌の容積が大きい①肩甲帯挙上している②頸部が短い③肋骨が上がり水平位になっている④横隔膜の高位化などが特徴されています。筋力が弱かったり、胸郭が柔らかいというこもあり結果として鼻呼吸・横隔膜呼吸が主体で呼吸数が多くなります。形状変化は肩甲帯・肋骨が尾側へ下制される方向に変化し筋活動で中間位で安定するように発達していきます。 粗大運動の発達では頭尾の法則により頸部周囲→胸郭周囲→腹部→骨盤周囲へとの筋肉の活動が発達していきます。運動のパターンとしては屈伸→側屈→回線へと変化していきます。 子どもの体幹機能にも目を向けることでアプローチの可能性が広がるかもしれません。 こどもリハビリ相談