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2月, 2021の投稿を表示しています

運動発達 お座りの力をつける

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お座りの力をつける遊びについて考えてみます。 お座りの時に背中がしっかり伸びてこなかったり、時々後ろや横に倒れてしまうことがあるようなお子さん行うといいでしょう。 上の絵のようにお母さんの大腿の上にこどもを座らせて、上下にリズミカルに揺すったり、左右に傾けたりして遊びます。短い歌と合わせるて行うのもいいです。例えば、「おうまはみんなパッパカ走る、おもしろいな。」というくらいの長さの単純な歌です。 短い歌と合わせると赤ちゃんはそろそろ終わるな、次がはじまるなと予測がしやすくなり一層楽しくなります。楽しいこととセットで行うと身体の使い方が記憶に残りやすくなります。同じ歌でも「お馬はみんなパッパカ走る、パッパカ走る、パッパカ走る、お馬はみんなパッパカ走るおもしろいな。」というように長く歌い過ぎると赤ちゃんは始まりと終わりを意識できないくてもりあがらないません。その子の記憶容量に合う歌の長さがいいのです。 又、なんで赤ちゃんを上下に揺らしたり、左右に傾けたりするといいのでしょうか。頭の動きを感知する前庭感覚や筋肉の収縮を感知する固有感覚が脳に伝わるからです。これらの感覚は体幹の筋肉の収縮を引き出すような働きとつながります。このような働きをバランスといいます。 最後にもう一つだけこの遊びのコツをお伝えします。赤ちゃんのおへそを少し前につきだすように介助して下さい。背中が軽く伸びた状態にした方が体幹の筋肉が働きやすくなります。  

精神運動発達遅滞 

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 何らかの原因で知的な発達と運動発達が遅い子ども達を精神運動発達遅滞と言います。原因は特にわからない場合も多くあります。 赤ちゃんの運動の発達が遅いので這い這いを促す方法などをお母さんに伝えて下さいと医師から指示があります。 理学療法士はその子の行動や運動を評価して這い這いをしないのか評価をします。評価の項目は健康面、母子関係、筋緊張、バランス反応、行動の発達などです。 栄養が悪かったり、何らかの疾患があると運動の発達が遅れることがあります。母子関係が安定しない場合も影響が出る場合があります。その場合はまずそちらの対応を医師や保健師さんにしてもらいます。 筋緊張やバランス反応の評価では感覚運動神経の成熟の度合いがわかります。脊髄、脳幹、大脳皮質感覚運動野の成熟状態が結果に影響します。運動の発達には頭尾の法則や中枢から抹消へなどという運動発達部位の変化の順序性があるので、その子どもの発達に適した運動を処方します。 又、行動面の発達評価も欠かせません。ずり這いがでてくるのは教科書的な発達では7~8ヵ月くらいです。この頃の赤ちゃんには人見知りがではじます。玩具を容器にいれたりもはじまります。これは赤ちゃんが自分で頭のなかでお母さんのイメージや玩具が容器に入った時のイメージを思い浮かべられるようになってきたことを示します。見えているものに手を伸ばすのは距離が短いのでイメージを思い浮かべられなくてもできますが、数メートル先の物にずり這いで近づくためにはある程度頭の中でイメージを思い浮かべることができる必要があります。これは想起といい記憶が意識的に思い浮かべられるようになったことを示します。脳では前頭前野の活動が始まってきている状態です。感覚運動の繰り返し遊びの段階か、少し目的を意識できるようになっているかで対応方法は変わります。 「どこに原因があるか、今できていることは何か、少し配慮すればできそうなことは何か。」を考えることが大切だと思います。 赤ちゃんを取り巻く家庭はとても敏感で傷つき易いものです。理学療法士は運動発達を促す役割ですが、本質的には子どもと家族を支援する立場であることも忘れてはいけないと思います。

ダウン症のある子ども 理学療法

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  ダウン症ある子どもとそのお母さんかかわる時、理学療法士は子どもが乳幼児期ならば運動発達の支援や靴の助言をしたりします。学齢期ならばスポーツについて相談を受けるかもしれません。大人の方だと健康維持のための生活習慣について相談をうけるかもしません。 子どもは低緊張(筋肉の張りが弱い)があり乳幼児期に運動発達がゆっくりとなる場合が多くなります。理学療法士はその時々に適した次の運動の目標を伝え、家庭での運動遊びの方法やお部屋や玩具など環境面への配慮も伝えます。 理学療法士がその際に注意することは子どもの全体像をみることと、ご家族のお考えやご心配をしっかりと聞くことだと思います。 子どもの全体像をみるとは ①運動発達のみでなく、認知やコミュニケーションの発達も含めて理解すること ②合併症の状況を理解すること  ③子どもの年齢を考慮すること の3点です。 ダウン症は22番目の染色体の本数が通常2本のところが、3本になっていることによる障害です。染色体は身体の設計図ですので症状として心臓や消化器系の問題をもっていたり、ウエスト症候群や環軸椎の不安定性をもっていたりします。このことは運動の発達や運動の指導内容、ご家族の心配事に影響を与えてくるのでしっかりと状況を把握しておきましょう。 新人理学療法士がダウン症のある子どもと家族の全体像を知るのに一般社団法人ヨコハマプロジェクトが作成した「ダウン症のあるくらし」という冊子がとてもわかりやすいと思います。綺麗でかわいい冊子です。ヨコハマプロジェクトのホームページからも入手できるようですので下にリンクをはっておきます。 ヨコハマプロジェクト

脳性麻痺を持った子どもへの運動療法の考え方

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  脳性麻痺を持った子どもへの運動療法の目的は主に次の3つと考えています。 ①多様な感覚運動経験を与えること 脳性麻痺を持った子どもでは運動のパターンが限られていて、一人では経験できない感覚運動経験があります。感覚運動経験を多様にすることは一つの大きな目的と思います。特に乳児期~幼児期初期には重要になります。 ②生活に必要な機能を獲得させること 移動・姿勢変換・姿勢保持その他日常生活に必要な機能を獲得させます。幼児期後期からは生活に必要な機能の獲得にも目を向けることが多くなってきます。もちろん学齢期以降も必要なアプローチです。年齢が高くなれば代替手段も含めてその子どもの可能性を広げていかなければなりません。 ③関節や筋肉の管理 脳性麻痺を持ったこどもでは、筋肉が短縮したり、関節可動域が狭くなる、関節が脱臼するなど骨・関節・筋に生じる2次的な問題を最小限にとどめることが必要なります。特に学齢期以降身長が伸びると動かしていない筋肉の成長が追い付かなくなり変形拘縮は進む傾向があるので注意が必要です。 脳性麻痺を持った子どもの臨床像は複雑で、障害を持った生活期間が長いため、支援のための評価が難しい部分があります。個々の子どもに合ったオーダーメイドの運動療法プログラムつくるためには最低限以下の基礎情報は必要になります。 ①年齢 ②麻痺のタイプ (アテトーゼ型・痙直型・失調型・早産低出生体重児) ③麻痺の分布 (片麻痺・両麻痺・四肢麻痺) ④粗大運動能力分類(GMFCS) ⑤合併症(知的発達・感覚障害・てんかん・自閉症スペクトラムなど) ⑥生活環境 ⑦家族、本人の希望 最後に運動療法は薬物療法・手術療法・装具療法と合わせて使っていくことがより効果的です。

脳性麻痺 痙直型

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痙直型脳性麻痺は皮質脊髄路の障害で生じるといわれています。 代表的な運動症状は筋肉の過緊張と運動パターンの減少です。 乳幼児期のリハビリでは関節可動域運動、バランス練習、移動運動練習などに結び付けるために多様な運動パターンの経験していくことが必要です。限られた運動パターンは機能に結び付きにくく、関節の動きが限られたり、感覚運動神経ネットワークも成長しにくくなります。 痙直型脳性麻痺をもった子の運動パターンを増やすための考え方や方法は多数あります。 ①スピードや巧緻性の難易度を下げる ゆっくりとした簡単な運動の方が運動パターンは増えます。難易度の高い手指操作をさせると筋肉は緊張して運動パターンは減少します。簡単なところから始めて、楽しく成功する経験を増やします ②バランス難易度を下げる 健常児でも歩きはじめの頃歩行の中で体幹の回旋運動がでませんが、そのような子どもでも這い這いの中では体幹の回旋を生じさせています。バランス難易度を下げても多様な運動パターンを経験できます。臥位・座位などで多様な運動経験させてから歩行練習をおこなうような工夫をします ③装具療法・薬物療法・手術療法との組み合わせで筋緊張を下げることで多様な運動パターンを経験するチャンスが生まれます 理学療法士はこのような考え方や方法を組み合わせて感覚運動経験を広げられるように工夫します。

子どものリハビリと前頭前野

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一般に前頭前野(赤いところ)は外側部・内側部・眼窩部の3つの部位にわけられます。 外側部はワーキングメモリー、反応抑制、行動の切り替え、プランニング、推論などの機能を担っています。 内側部は社会的行動、葛藤の解決、報酬に基づく選択などに関係します。 眼窩部は情動、動機付け、意思決定に関与します。 健常の子どもの場合でも新生児の時期には前頭前野は機能していません。生後8か月くらいから機能し始めると言われています。前頭前野の成熟には生後かなり時間がかかります。シナプス密度が最大になるのが7歳、髄鞘形成は20代中ごろまで続くそうです。 子どもの脳の成熟が幼い段階では行動や情動の抑制が困難であると考えられます。成人の前頭葉障害と似ています。 例えばリハビリの場面で子供のバランス能力をたかめようと平均台のような課題を与えたとします。その子どもは全く興味を示さないか、最初だけ平均台にのってもすぐにやめようとしてします。この理由として何が考えられるでしょうか。 ①平均台を渡りきるというイメージがもてない ②反射的なバランス能力が低下している ③平均台と自分の身体の状態を意識し続けるという注意の持続が難しい ④その他(体調が悪い、機嫌が悪い、覚醒が低い、覚醒が高い、感覚調整の問題etc.) 複数の原因が考えられますし、原因は単一ではないかもしれません。①③は前頭前野の機能と関係していると思われます。 その子に良かれと思って遊びや練習に誘ってもうまくいかない時は、なぜうまくいかないのかを考えることが必要と思わます。

重症心身障害のある子どもの関節を動かす時の考え方

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自分で身体を動かすことが難しい子どもの関節を動かしてあげると ①関節可動域の維持につながる ②呼吸が楽になる ③血行がよくなる ④お着換えが楽になる ⑤座位保持装置に座れるなど日常生活で取れる姿勢の数が増える ⑥本人が気持ちいい などのいいことが沢山あります。 でも、自分で身体を動かすことができない子どもの多くは骨が弱かったり、関節がはずれていたりするのでリスクもあります。動かす時には十分な配慮が必要です。 よく親御さんにお伝えするのは ①動かす前に呼吸が楽な姿勢をとらせること 呼吸が楽な方が当然ですがリラックスしていて関節が動かしやすくなります。関節を動かすことだけに集中してはいけません。 ②身体に触る前に声をかけること 「これから身体をうごかすよ。」と伝えてあげると安心できます。 ③触る前に自分の手を温めること 冷たい手で触られたらびっくりしてしまいます。 ④子どもの身体を持つときは指先でもたずに指と掌で広く接触するように持ち、持つ場所は動かす関節の前後にすること 図例:股関節を動かすのならば持つのは青いところ膝より下を持つと力のかかり方をコントロールしにくくなります。 ⑤動かす時はゆっくりと加える力も最小限にすること 車で見通しの悪い交差点を通過するような感じです。ソロソロと大丈夫かな、どこまで動いていいかなと確かめながらいきます。いきなり交差点から飛び出すのは危険ですよね。 ⑥動かしたい関節が硬すぎたら、近くの動かせるところを動かすこと 股関節のそばというと膝とか、骨盤とかです。関節を動かすのが厳しければ、軽くマッサージで皮膚や筋肉を動かしてからという方法もあります。部屋は暖かい方がいいです。お風呂上りも身体が暖かいので動かしやすいです。  

脳性麻痺 そり返りの強い子を抱っこする

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  アテトーゼ型でディストニックといわれる子どもの絵です。全身を強く伸展してしまうので次の絵のように抱っこをするのが大変です。 対応策の基本は身体の中で曲げやすいところを探してそこから順々に屈曲させていくというものです。基本的には最初に頭と肩を前に出す方が楽か、脚を曲げるのかどちらが楽に曲げられるかを探します。子どもは一か所を屈曲位にもっていくと他の箇所も屈曲しやすくなります。 最初に頭と肩を一緒に曲げる方法の場合、介助者は子どもの頭の後ろに自分の腕をまわして子どもの両肩と頭を前に押します。その際前方から胸の真ん中の胸骨を少し押しながら行うといいでしょう。その後上半身の屈曲をキープしたまま脚を曲げていきます。 最初に脚から曲げる場合は足指を曲げてから膝・股関節を曲げると比較的少ない力で脚を曲げられ子どもがいます。

脳性麻痺アテトーゼ型の運動症状(過剰な相反神経抑制)

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 脳性麻痺アテトーゼ型のヒョレアタイプでは不随運動(スパズム)という症状とともに過剰な相反神経抑制といわれる症状もみられます。 関節運動における正常な相反神経制御とは下の絵のように肘の運動を例にすると、上腕二頭筋の収縮6にして上腕三頭筋の収縮4なら肘は曲がる方向に動きます。反対に肘を伸ばす時には上腕二頭筋の収縮4にして上腕三頭筋の収縮6にします。上腕二頭筋の収縮を5にして上腕三頭筋の収縮を5とすると力のつり合いがとれての運動は止まってその肢位で関節運動が止まることになります。上腕二頭筋を10にして上腕三頭筋を0にするという形での関節コントロールはあまり行いません。 アテトーゼ型の子どもは肘を伸ばそうとすると上腕二頭筋の収縮0になり、上腕三頭筋の収縮が10になってしまいます。こうなると関節は完全に伸び切ってしまうので肘を中間の角度で止めておくことができません。結果として肘のコントロールが困難になります。同時に手先を細かくコントロールするためには肘関節が止まっていることが必要ですので、手先のコントロールも困難性が増します。 このような時アテトーゼ型の子どもは例えば前腕を強く壁に押し付けることで壁からの反力を得て、それを上腕二頭筋の収縮の代わりにすることによって手先をうまく使おうとする場合があります。力の機序としては上腕二頭筋の収縮のかわりに壁の反力を利用しているといえます。 例えば食事で口を動かしたい時は自分を後頭部を車いすの背もたれに押し付けたりします。これも顔、口に対してより中枢側にあたる頸部関節を外力によって固定するという意味で同じような力の使い方です。 外的な安定によって抹消を使う戦略はアテトーゼ型の子どもにとって大事な戦略です。しかし、一つの戦略に頼り過ぎると色々とうまくいかないこともあるので筋肉の収縮によって安定させるトレーニング(同時収縮の練習)を理学療法プログラムとして選択することもあります。

脳室周囲白質軟化症による脳性麻痺痙直型両麻痺の乳幼児期の理学療法

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    早産・低出生体重児に伴う神経学的障害の一つに脳室周囲白質軟化症があります。早産・低出生体重児の脳血管が未熟なために起こりやすい脳の深い部位の脳虚血障害で、錐体路という運動に関連する神経伝導路の近くで起こるために脳性麻痺の原因となることがあります。 脳性麻痺が生じた場合、下肢や体幹に麻痺が出ることが多くあります。また満期産児に比べて子宮内での自発運動や体性感覚経験の減少やそれに伴う神経経路の未成熟が生じやすいことからくる発達の問題も同時に抱えていることがあります。 運動面では下肢の麻痺、強い体幹の低緊張が同時に生じます。その他いろいろな合併症に気を付けながらPTは運動発達を促す支援をしていきます。 このような子どもの中には一人でつかまって立ったり、伝い歩きがはじまると下肢のツッパリがより一層目立ってくる子どもが多いので注意が必要です。 私たちがスキーやローラースケートを初めてやった時には下肢に力が入り過ぎて、うまくコントロールできない現象が生じますが、体幹の低緊張が強い子どもには似たような現象が伝い歩きでもおこるのだと思われます。 このような子どもの立位練習で理学療法士は、どんどんつたい歩きさせるだけでなく、時には子どもの動きを少し制限してしっかりと両足で立つような練習を多めにするようにします。 しっかりと両足で立って少しだけの重心移動を根気よく経験させると体幹の筋肉が働いてくることが多いからです。 お母さんには「子どもが自分から伝い歩きをしたりするのを止める必要はありませんが、親御さんがついていられる時は両足でしっかり立ってその場で遊ぶような機会をつくるといいですよ。」とお伝えすることがあります。その時は足の指が曲がったり、踵が浮かないように気を付けてもらいます。