知的能力障害 知的障害(精神遅滞) 精神運動発達遅滞

 

知的能力障害はDSM5(アメリカ精神医学会の精神疾患の診断分類)の中の診断名です。知的障害(精神遅滞)はICD-10(WHOによる疾病分類)の中の診断名です。
定義は全く同じという訳ではありませんが、知能検査の結果と生活上の適応機能の双方に問題があることが診断上の条件になっていることは共通です。(知能検査の結果だけで知的障害とは診断しないということです。)
また、知的障害という診断自体は病態像なので原因は多様です。

知的能力障害・知的障害(精神遅滞)という診断とは別に理学療法士に医師から処方が来る際に「精神運動発達遅滞」という診断名で処方がだされることがあります。乳児期から幼児期初期の比較的初期の段階で、知的障害の診断基準は満たしておらず、染色体異常や脳性麻痺など他の診断名もついていない時にその子の発達の状態から「精神運動発達遅滞」の診断名がついてくる場合が多いように思います。医師によっては「運動発達遅滞」を診断名としてくる先生もいます。

精神運動発達遅滞という状態について理学療法士の立場から大切だと思っている論文があります。長崎大学医療短期大学部の穐山富太郎先生らが1986年1月に雑誌「リハビリテーション医学」に投稿した「精神運動発達遅滞児の早期療育効果」という論文です。

穐山先生らの論文には次のような文言があります。「精神遅滞児の症状は発達初期において行動発達遅滞としてとらえることができる。」つまり、精神運動発達遅滞は精神と運動のそれぞれ発達遅滞の合併ではなく、精神機能と運動機能の機能的な出会いや相互作用の問題がある子どもだということを述べられていて、今読んでも理学療法士の臨床上の大変示唆に富んでいると思います。

穐山先生らは同じ論文の中で、「精神遅滞児に対して生後早期から理学療法を加え、見つめ合い、語り合い、皮膚刺激、前庭刺激、深部覚刺激などの適切な感覚刺激を与え、行動体験を得させる意義は大きい。」とも書いています。




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