脳性麻痺
重力のある環境の中でうまく身体をつかっていくために、人は生後約一年の期間をかけて身体の使い方を急激に変化させていきます。
首のすわっていなかった赤ちゃんが一人で歩くまでになります。
生まれてすぐの赤ちゃんの脳の中には様々な身体の使い方のデータ(記憶)がはいっています。こういう状況ではこういう姿勢をとると快適だし目的が達成できるというようなデータ群です。
運動に関するデータ群は生まれる前から沢山頭の中にありますが、すべてを生まれてすぐ使えるというわけではありません。生後3か月とか6か月とか時期がくると順々に使えるデータ群が増えていきます。また、そのデータ群をそのまま使うのではなく少し調整したり、いくつかのデータ群を組み合わせたりすることでさらにうまくできることが増えていきます。
データ群のことを身体図式ともいいます。脳の中にある姿勢や運動とその時生じる感覚がセットになった記憶です。内部表象という言い方もします。身体図式は無意識の世界にあるものが大部分です。
脳性麻痺を持った子どもは姿勢と運動の発達に障害をもっています。その状態は一人一人で違いが大きいです。しかし、状況に応じて身体図式を柔軟に変更や調整することができないという点では共通しているところがあります。例えば、歩く時には歩く身体図式を使うといいのに、姿勢を安定させる身体図式を強く使いすぎてうまくいかないというようなことです。そういう固定的な姿勢·運動は子どもが意識しないのに生じてしまいます。
脳性麻痺を持った子どもの身体図式を健常児と同じようにすることはできませんし、する必要もないように思います。ただ、その子にとっての楽しい学習の機会を通じてその子なりの身体図式の多様化を図ることができればいいなと思っています。
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