逆境的小児期体験(ACEs)と障害児リハの関係

 

逆境的小児期体験(ACEs)という言葉をご存知でしょうか。虐待、家族の薬物乱用、家庭内暴力など家族の機能不全を経験した子どもは成人期になって健康に有害な影響を及ぼすということが科学的に示されています。

この原因は長期的な不安や緊張(ストレス状況)の継続により視床下部ー下垂体ー副腎系(HPA軸)によるストレス反応が暴走し、身体を壊すためといわれています。特に乳幼児期はこのHPA軸が発達途上にあるため影響が大きいと言われています。

また、このような現象は虐待、家庭内暴力など重篤な体験でなくても、家族間の愛情不足や両親の仲たがいなど比較的おこりやすい小児期逆境でも生じるという研究もでてきています。

子どものリハビリは時に子どもを傷つけストレスの原因となることはないのでしょうか。

障害というのは完全に治るものではありません。障害はある面個性と言い換えてもいいものです。乳幼児期においては個性というようなものも固まっておりません。神経系の可塑性も高く、変化の激しい時期です。そのため親は障害の軽減に熱心なる場合があります。しかし、それも個性として捉えなければならない日がきます。そうしなければ子どもにとって、自分の存在を否定されているかのように感じられ、ストレスを受けることになるでしょう。そのことが、子どもの障害にわたる健康や幸福を制限するならば、それを望む親などいるでしょうか。

リハビリにおいて人と違うやり方や参加の仕方でも、できることを認めていく代償的なアプローチや本人の意思決定を重視した提案型のアプローチについても認識されてきています。本当に子ども達の将来のためになるリハビリや理学療法でありたいと思っています。


参考文献

1)成人による逆境的小児期体験の報告ー5州 2009年 米国疾病管理予防センター報告

2)小児期トラウマがもたらす病 ドナ・ジャクソン・ナカザワ パンローリン

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