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一人で立つ練習 指示の出し方

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一人で立つ練習をすることがあります。絵の様につかまった状態から手を放して立つという課題です。 大人の指示の出し方には色々あります。 ①「手を放して立ってごらん」  ②「手が放せると思ったら手を放してごらん、あぶなかったら歩行器をつかんでいいよ」 ①の「手を放して立ってごらん」で失敗してしまう子どもの中には大人の指示に従おうと一所懸命になりすぎてしまう子がいます。自分の立位の状態を感じようとせず、とにかく課題を成功させようと固くなりすぎで同じ失敗を繰り返してしまうのです。 ②の指示のいい点は自分の身体の状態に注目を促している点と、歩行器につかまることは失敗ではないとしている点です。悪い点は指示が長すぎるということでしょうか。 どちらの指示がいいということはありません。子どもによってうまくいく方を選べばいいし、これ以外の指示の仕方も沢山あります。ただ、ここで言いたかったのは練習に結果に対する大人の側の価値の置き方のことです。 子どもに求めるのは正解をだすことでしょうか。本人が冷静に状況を判断してひるまずチャレンジする態度でしょうか。 こどもリハビリ相談  

痙直型両麻痺の幼児はゆっくり歩くのが苦手

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  痙直型両麻痺の子どものあるあるですが、ゆっくり歩くと尖足歩行が少し軽減する子どもがいます。大人は尖足が軽減してほしいので「ゆっくり歩きなさい。」といいますが、子どもは中々そのようにはやってくれません。なぜ言ったように出来ないと大人がイライラする前に、子どもなぜゆっくり歩かないのか理由を考えてみる方が建設的かもしれません。 実は理由は子どもによって色々です。 ①大人の言ったようにはしたくない(いわゆる反抗期) ②じっとしているのが苦手(いわゆる多動) ③物理的な理由(後で説明します) ④その他 ゆっくり歩けないのには物理的な理由もあります。簡単に説明してみます。前方に歩く時の力の元は筋肉が生み出しているというようりは、重力によって棒が倒れる時に生み出されるような力を利用して前進しています。上の図のように、ただの棒は前に倒すのにあまり力は要りませんが、棒に足部をつけるそれより力が必要になります。つま先が上がっている足部だとただの棒の時のように前に倒れやすくなりますが、尖足といってつま先が下がっている足部をつけると棒を前に倒すのにとても強い力(勢い)が必要になります。 両麻痺の子どもは両足に尖足があることが多く、常に勢いをつけて歩いていないと前に進みにくいということになります。そのため、ゆっくり歩いたり、急に立ち止まったりすることも苦手な子どもが多いようです。 何事にも理由はあります。物理的な理由は子ども自身が意識でコントロールすることは難しいことは知っておいて下さい。「言うことを聞かない。」とイライラせずに対策を考えましょう。運動療法や装具療法、手術療法や薬物療法などの様々な治療手段があるので専門家と相談してみましょう。子どもに負担が少なく、家族にも負担が少なく、生活の場で効果的な歩行が長期間に渡ってできることを目指しましょう。 こどもリハビリ相談

療育に関わるチームの一員として

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 療育にかかわる人は医療関係者、教育関係者、福祉関係者、家族など様々な立場の人がチームをつくって関わります。 療育にとって関わる人のチームワークが大切であるというこは、日本における療育創成期に活躍された先人も強調しています。 私は理学療法士ですので医学関係者としての教育を受けてきました。就職して数年たち私がまだ新人の理学療法士の頃に先輩理学療法士から、「脳性麻痺という障害ではなく、脳性麻痺をもった一人の子どもとして見る目をもってほしい。」と言われたことがあります。それは私にとって当時から非常に印象に残る言葉でした。今あらためて考えると理学療法士が障害をみる専門家だからこそ、あえて言われた言葉でもあると思いますし、そのような言葉をいってくれる理学療法士に会えたことはとても幸運であったとも思います。 脳性麻痺をもった子どもを一人の当たり前の子どもとしてみることができる理学療法士ならば、家族や、教育関係者、福祉関係者の意見にも真剣に耳を傾けたり、尊重したりできると思います。そのようなことができる理学療法士は良い療育チームのメンバーになるでしょう。教育関係者であれば反対に障害というものについての知識・技術にも目を向けていくことも必要になるのかもしれません。日常自分の得意分野を深める努力をしながらも、相手の得意分野にも理解・共感・尊重できるようになることが療育に関わるチームのメンバーには必要だと思います。 こどもリハビリ相談

子どもは物理法則を言葉では知らなくても、身体では学習している

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人はどうやって重力に負けずに身体を高い位置にもっていくのでしょうか。例えば立った姿勢から床に強い力を下方向にかけると反作用で上方向に力が働き、身体が浮き上がりジャンプができます。 ジャンプするまで強い力ではありませんが、足部から床に向かって下向きの力をかけることで直立位が保持できます。 お尻の中の坐骨と呼ばれる部分で座面に向かって強い力をかけると背中を伸ばして座ることができます。 姿勢ごとに力をかける場所はことなりますが、床に対して下向きの力をかけることが抗重力活動の始まりです。 脳性麻痺などで生まれつき運動機能に障害がある赤ちゃんは、様々な理由で身体の適当な位置に体重をかける姿勢がとりにくため、効果的な身体図式を学習することが難しくなっているという一面があります。 セラピストがハンドリングをしたり、装具や座位保持装置を使用したり、手術やボトックスなどの治療をすることは、生活上必要な運動機能を高める目的で行われますが、身体図式の学習をうながしているともいえます。 どのような身体状況のお子様でも工夫すればその子なりの抗重力活動の発達を手助けできるのではないかと思って日々お子様に関わっています。 こどもリハビリ相談  

低緊張の強い子どもの抱っこトランスファー お母さんの工夫

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低緊張が強くてある程度伸長が伸びてくると抱っこでのトランスファー(ベッドや車椅子に乗り移ること)が大変になってきます。 その時代表的な大変さは二つあります。①背中がが丸くなってお尻が落ちてきてしまう。②手が身体の横に垂れてしまい、下ろすときにベッドや車いすに挟んでしまいそうで怖い それぞれへの対策としては ①背中が丸くなってお尻が落ちてくることへの工夫 ②両手が身体の脇に落ちしまうことへの工夫      両手をズボンのゴムに入れて固定しているお母さんもいます その他、車いすのベルトを座面の横におろしておく、車いすは子どもの近くおく、人工呼吸器のコードなどにつまずかないように整理するなど事前の準備も事故防止に役立ちます。人手があれば複数での介助も考えましょう。 こどもリハビリ相談  

脳性麻痺 痙直型両麻痺 歩行

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  ヒトの歩行は直立2足歩行と言われています。足の上に頭がある直立位であることと、そこから前方に倒れていく倒立振り子運動によって前進することが特徴だと言われています。スピードはあまりでませんが、エネルギー効率にすぐれていて、両手が自由になるので物を運ぶことも容易です。 脳性麻痺の中で痙直型両麻痺は上半身に比べて下半身に痙性麻痺が強い状態です。 このような麻痺の状況がある人の歩行を横から見ると体重を支えている側の脚は股関節や膝関節が屈曲していたり、つま先立ち(尖足)になったりしていることが多くあります。 このような脚の状態になっていると歩行の際に物理的に不利になることが3つあります。 ①股関節や膝関節が屈曲していると身体重心の位置が低くなり重心を前に移動することが大変になります。 ②つま先立ち(尖足)があるとつま先より前に重心をださないと身体が前に倒れていかないためにやはり重心を前に出すことが大変になります。(健常だと足関節より前に重心があれば身体は前方に倒れていきます。) ③左右の脚に麻痺があるために、脚と脚を前後に大きく開くことがしにくくなります。 結果として発達上は歩行開始の学習の困難さが高まります。歩行開始が学習できた後には重心を前方に強い力で移動し続けなければならないので歩行スピードが高くなりがちです。ゆっくり歩いたり、歩いて止まる、段差に手すりなしで上るなどは困難さがでやすい課題です。 こどもリハビリ相談

国際生活機能分類を考えてみました

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障害や慢性的な病気を持つ人の生活を考える時にWHO(世界保健機関)において2001年5月に採択された国際生活機能分類の考え方や言葉を共通のコミュニケーションのツールとしてかなり一般的になっています。 わかりやすい解説、詳しい解説など様々な解説が書籍やホームページ、YouTubeにもあげられています。興味がある方は読んだり、視聴したりしてみてください。 自分もこどものリハの関係者として働いて30年以上ですので、ICFについての情報はかなり聞かされてきました。しかし、その中でこういう見方もあるのかと改めて感心するような解説を聞くことが今だにあるので書いておきたいと思います。 ICFは「生きていることの全体像」を語るための共通の言葉:死んだ人には使えがないが、生きている間は使える言葉で、生きているいる内ならばその人の生き方を考えることばできます。 希望を捨てるなということ:生きていいるというのは健康状態、生活機能、背景因子の相互作用なので、健康状態が悪くなってもその人の生活機能があり、個人の生活機能が落ちても環境因子を変えることでより良い生活もできます。どこかが悪くなったらそれで終わりではないということです。又、様々な因子の影響があるということはそれだけ予測がつきにくいということです。生活のいくつかの側面の予想はできても、5年後の生活の全てを予測することはできません。先のことは本当にはわからないし、死んだ後は考える必要はないのですから生きていることの希望は持ち続けましょう。 生きていることは個別的なこと:生きていることは多くの側面の要素の上になりたっています。そのため他の人と同じ生活ということはありません。そのため支援計画は個別的個人的に考えなければいけないと思います。特に専門家は多くの人とあたるので、グループ分けをすることで業務上の判断能力が高まりますが、最後はいかに個別性を尊重するかということを考えなければならないでしょう。 こどもリハビリ相談