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家族中心ケア②

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  なぜ家族中心なのでしょう。 アメリカで家族中心ケアの考え方がでてきたのは1960年代消費者運動に起源がある 1) といわれているそうです。その後長い歴史を経てきて色々な考え方が家族中心ケアの考えに影響を与えてきて現在の家族中心ケアの概念ができています。家族中心ケアの概念は色々なものを含んでいることを知っておきましょう。 小さい子どもは支援契約ができないので親が代わりに契約するということがあります。情報を提供し、家族の意見を取り入れていくことで子どもや家族の権利を守ることができます。 小さい子どもでは身近な信頼できる大人との愛着の形成が人格形成の形成に重要であるという考え方があります。お父さんやお母さんは子どもにとって大好きな人で将来にわたって心のよりどころになります。安全・安心な家庭で生活することは子どもの発達にとっても大事なことです。そのために家族の存在は欠かせません。 家族は個々のユニークな子どもの生活や生活環境についてよく知っています。子どもも家族のことを信頼しています。ですから支援チームの一員として家族を考えようという考えもあります。 子どもへの支援を仕事にしていくと家族と接する事が多くあります。家族は、子どもが支援を受けられるようにするためだけにいるのでなく、インフォームドコンセントを理解するためにだけいるのでもなく、子どもへの支援の効果を高めるためにもわざわざ参加してもらっているのだと考えると良いと思います。 参考文献  1)総論(1) 基本に戻ってもう一度確認しよう! ファミリーセンタードケアの4つの中心概念  浅井宏美 聖路加看護大学大学院看護学研究科博士後期課程  ネオネイタルケア    26(10):  990-995, 2013. こどもリハビリ相談

家族中心ケア

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子どもへの支援といえば家族との関係はかかせません。関わりの基本的な考え方として家族中心ケアというものがあります。   家族中心ケアというのは子どもの健康や福祉の分野で仕事をしていく上で、患者・家族を尊重し、その強味を生かし、患者・家族と情報交換や共同作業を行っていこうという考え方です。 歴史的な経過や定義については参考文献を読んでみてください。とても詳しく読みやすく書かれています。 病院でも児童福祉の現場でも家族中心ケアの考え方をもとに動こうとしているところが多いと思います。でも実践することは中々難しいというのが自分の実感です。長年やっているとなんとなく忘れてしまう、習慣で流されてできていると思ってしまうことも多いように思います。例えば情報交換の重要性といっても交換すべき有用な情報をあまり持っていなければ駄目でしょうし、逆に沢山専門情報もっているとそれをわかりやすく整理するのは大変です。自分が専門家であるという自身があることが裏目になることもあります。 定義があまりに複雑すぎると使えないので4つなり5つなりの重要な要素を自分の納得できて忘れないようなことばで書いてみるといいのかもしれません。自分の場合は最初に書いた下線部のような理解です。Children's Hospital LOSANGELの中のページの記事も自分には使いやすいように感じました。 https://www.chla.org/blog/rn-remedies/the-importance-family-centered-care 研究のための概念整理ではなく、臨床の時忘れない覚書のようなものであれば、5年くらいごとに考え直して自分にわかりやすい、納得できる文章になるよう整理してもいいのではないでしょうか。 参考文献  総論(1) 基本に戻ってもう一度確認しよう! ファミリーセンタードケアの4つの中心概念 浅井宏美 聖路加看護大学大学院看護学研究科博士後期課程 ネオネイタルケア  26(10):  990-995, 2013. こどもリハビリ相談

脳性麻痺 地域リハ 運動面の支援目的

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  脳性麻痺の在宅リハビリでは様々支援目標を立てます。姿勢運動面では大きく3つの目的があると思います。 ①多様な運動パターンの経験:これは神経可塑性が高い乳幼児期に強調される視点です。人は脳の中に記憶されている多様な運動パターンを組み合わせたり、修正したりすることでより環境に適応しやすいように運動を発達させていきます。脳性麻痺では脳障害の影響で姿勢運動パターンが減少しています。姿勢運動や装具・手術・生活環境の工夫、その他を組み合わせて多様な感覚運動を経験させて潜在的な能力を発揮できるように支援します。 ②生活機能を獲得する:生涯にわたり求められる視点です。年齢相応の社会生活、本人の希望を踏まえて必要な生活機能を獲得できるように支援します。方法ではなく、目標の達成感結果が重要になります。 ③健康を維持する:呼吸循環器系・運動器系の機能構造をできるだけ発達させ、長く生涯にわたって機能を維持することが求められます。筋肉・骨・関節の構造面の細部にわたる評価と将来を見越した評価は乳児期から継続して必要とされます。支援方法・治療方法は多種多様ですので多職種連携も必要です。生涯にわたって健康状態を維持するためには身体運動の習慣化も必要です。フィットネスに関わる体育系の専門家育成、それを実施する施設環境の改善も必要です。そのためには多くの一般の方々の理解や協力も必要になると思います。 こどもリハビリ相談

背臥位の発達 手と手を合わせる

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赤ちゃんが3ヶ月頃になると背臥位で手と手を合わせたり、自分の手を眺めたり、自分の手をなめたりします。ハンドリガードと呼ばれます。 その時赤ちゃんの脳の中では左右の体性感覚野が同時に活動したり、視覚野と体性感覚が同時に活動したり、手の体性感覚野と口周囲の体性感覚野が同時に活動しています。 ”Hebbの法則”という学習における神経系活動についての重要な法則があります。それによるとAとBの神経細胞が同時に興奮することが繰り返されるとAからBへの細胞の興奮伝達効率が増強されます。そのことを言葉を変えると記憶というそうです。 乳児期は 多様な感覚運動学習がおきます。それらは感覚間の統合の経験によって生じます。背臥位姿勢の発達は感覚間統合にとって重要な意味を持つといわれています。 障害を持った赤ちゃんが目の前に来た時に大人は玩具での遊びの種類や移動能力だけを見るのではなく、その基礎となる身体図式(身体部位間や身体と空間の関係の記憶)もみていけるといいと思います。 PTは麻痺などの影響で手と手を合わせたり手を口にもっていったことの経験がない子どもと会うことはめずらしくありません。抱っこや寝ている姿勢を工夫して感覚統合経験を増やすことはそれほど難しくない場合もあります。それが将来役に立つことを大人が思いつくことができるかどうかにかかっています。 こどもリハビリ相談

頸部コントロールの発達

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頸部のコントロールは新生児では腹臥位で一瞬頭をあげる事ができます。その際は一側のみの背側の筋肉を使っています。 3ヶ月の子は頚部両側の背側の筋肉に加えて、腹側の筋肉も使って持続して正中位で頭をあげる事ができます。 4ヶ月になると胸を支えてあげると頭を垂直に保つことができるようになります。いわゆる首が座ったという状態です。その際には頸部の前後左右の筋肉を同時にまた選択的にも使うことができるようになります。 体幹の筋肉の使い方の発達は月齢が加わると胸郭から骨盤帯に発達が移っていきます。それぞれの部位でも背側にある伸筋群の活動に腹側にある屈筋群が加わることで両側の抗重力伸展活動が獲得されます。その後選択的な側屈が可能になり、最後に回旋運動が可能になるという発達の法則性は類似しています。 このような筋肉の使い方の発達の法則を知ることは何に役立つのでしょうか。 運動の発達に遅れや異常がある子ども達の姿勢運動を評価する際に役に立つと思います。 例えば、不安定な歩行をしている子どもで頭部や体幹の背側の伸筋群のみで姿勢を維持している子どもがよくいます。その子の運動が何か変というだけでなく、何が原因なのかを知ることに役立ちますし、トレーニングの方向性が検討しやすくなります。 こどもリハビリ相談

脳性麻痺と自閉症スペクトラムを両方持った子ども達 

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 脳性麻痺をもった子どもが自閉症スペクトラムを合併する比率は10~15パーセントといわれています。 1) 脳性麻痺の運動障害の代表的のものに①筋緊張の異常②未熟な運動パターンの強い影響などがあります。結果としてバランスや移動という運動機能が阻害されたり、2次的な関節の拘縮変形が生じます。 自閉症スペクトラムの代表的な障害には①コミュニケーションや社会性の障害②イマジネーションの障害(物事の時間的な流れを把握したり、予測したりすることが苦手)があります。感覚や注意の障害も持っている場合も多くあります。 どちらの障害も症状が複雑で個々の子どもにの違いがあります。そのため、状況が許すなら子ども理解のための評価は多職種が関わる方が望ましいと思います。(医師、理学療法士、作業療法士、臨床心理士、言語聴覚士なども関わってきます。)しかし、脳性麻痺と自閉症スペクトラムの両方を詳しく知っているセラピストは少数なので、どうしても自分のよく知っている障害の方によせた評価になりやすい傾向があります。脳性麻痺だけの障害の方にも独自のコミュニケーションや社会性の障害があり、自閉症スペクトラムだけの障害の方にも独自の姿勢運動の障害あるので話は複雑です。しかし、専門家がそれぞれの子どもの個性をよりよく理解する目的で一致することが大切だと思います。 参考文献                                    1)脳性麻痺リハビリテーションガイドライン第2版 p.230-237:監修 公益社団法人日本リハビリテーション医学会 2014 金原出版株式会社 こどもリハビリ相談

歩き始め②

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  上のイラストのように赤ちゃんが立っている状態で1メートル先にいるお母さんが手を差し出しているのを見た時、赤ちゃんの頭の中に下のイラストのように自分も含めて状況を思い浮かべられればその子は歩きだせるのはないでしょうか。 例えば同じ状況でもお母さんが10メートル先にいる時には歩かないかもしれません。それはその距離でお母さんを見た映像と自分自身が歩くことがセットで思い浮かびにくいからです。その場合は声を出してお母さんを読んだり、ハイハイをして接近していくのではないでしょうか。 視空間認知の基礎は脳内の視覚マッピングと体性感覚マッピングの照合といわれています。 体性感覚マッピングは過去の姿勢運動経験によってつくられます。 では過去に歩いたことがない赤ちゃんの場合はどうなるのでしょうか。お母さんへの接近をしたいという要求で上肢のリーチを思い浮かべてていて前方に体重移動、その後偶然一歩がでて、セントラルパターンジェネレーターが駆動しだすということもあるかもしれません。 その子の過去の運動経験と遺伝的に持ち合わせている脳内に持っている歩行パターンジェネレーターの活動が偶然連続して働きだすという瞬間が歩き始めではないでしょうか。 歩き始めに関してセラピストにできることは外部環境や身体内部環境を調整して好ましい偶然が生み出されやすい状況を作ることだと思います。そして、そこに偶然が関与すると知っておくことはとても大切なことのように思います。 多様な結果を拒絶するのではなく前向きに受け止めていくような、そんな余裕や謙虚さにつながるからです。 こどもリハビリ相談