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脳性麻痺 ディストニックタイプ 股関節を深く曲げた座位

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脳性麻痺のディストニックタイプの子どもに座位を練習している絵です。実際は最初は子どもの横にセラピストがすわって肩甲帯や胸骨部に自身の手をふれて伸展をコントロールしている場合が多いです。なぜこんな姿勢で座位の練習をするのでしょうか。 ディストニックタイプの子どもの筋緊張の特徴は ①低緊張から過緊張に動揺する ②非対称性緊張性頸反射や緊張性迷路反射などの影響から捻じれを伴う全身性のそり返りのパターンが生じやすい ③伸筋群の活動がはじまると拮抗筋である屈筋群に収縮がみられないため最終域まで伸展が継続して途中で止めたり、運動方向を切り替えることができない ④伸筋群の活動が停止すると低緊張が生じて抗重力姿勢が保てなくなる などがあげられます。 セラピストは子どもに絵のような姿勢をとらせることで過剰な伸筋群の活動を抑えながらも抗重力姿勢を保持させて、かつ対照的な姿勢を経験させることができると考えています。結果として両眼視ができやすくなったり、手が使いやすくなることを導き出せれば経験不足による二次障害を軽減できるのではないかと考えます。

染色体異常

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  子どものリハビリテーションの対象者の中には染色体異常による疾患を持った子ども達もいます。染色体異常とは何かについて基本的な知識を持っていることは大切です。 人間は細胞の中に23対、46本の染色体を持っています。染色体の中には数百から数千個の遺伝子が入っています。 染色体異常は数の異常と構造の異常があります。数の異常には1本多いトリソミー、2本多いテトラソミー、1本少ないモノソミーがあります。23対ある染色体のどれにもおこりますが21トリソミー(ダウン症)、18トリソミーの診断がついたお子さんは理学療法の対象になることが多くみられます。 染色体異常の子どもの症状は複数を同時にもっています。異常のある染色体の種類によって症状も違ってきますでの理学療法士として担当する場合は事前に成書などで勉強しておきましょう。 染色体異常は遺伝性疾患の一つです。(ちなみに遺伝性疾患は子孫に遺伝する疾患という意味ではありません。)遺伝性疾患には染色体異常・単一遺伝子疾患・多因子遺伝子疾患があります。国連科学委員会によると遺伝 疾患の種類は非常に多く、知られているもののみでも約2000種類以上あり、その自然発生率は出生あたり約10%(10人に1人)と推定されているそうです。 目の前にいるその子は たまたまそういう遺伝情報のありようをもっただけです。私たちの仲間です。できるだけ充実した人生を送れるように支援しましょう。

筋ジストロフィー症 デュシャンヌ型(歩行可能な時期のPT)

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筋ジストロフィー症の中では、デュシャンヌ型は男児出生3000~3500人に一人で比較的発症頻度が高い疾患です。筋繊維の変性、壊死が主病変で進行性です。筋力低下の進行状況によって理学療法の内容は変わってきます。 歩行可能な状況では変形拘縮の進行予防・歩行可能時期の延長・過剰な疲労を残さない運動量の助言・子どもや家族の心理的サポートなどが関わりの中心になります。 歩行可能時期の変形拘縮予防はストレッチで足関節を中心に行います。ホームプログラムが中心になるので、家族が毎日できるストレッチの方法の検討が必要です。市販のストレッチングボードの使用を勧める場合もあります。短下肢装具の使用を検討する場合もあります。 歩けるうちは歩くことが必要ですが、次の日に筋痛や筋疲労が残らない程度の運動量にすることが大切です。運動種目として水泳は推奨されています。しかし、本人や家族の希望を丁寧に聞き取ることも重要です。特別な筋力強化のトレーニングはあまり行いません。 小学校は本人にとって友達との関係を作る重要な場です。この時期は親中心の人間関係から仲間中心に変化していく時期で本人にとっても小学校は心理的に重要な位置を占めます。学校でどのような生活を送っているのかしっかり聞き取りをして、場合によっては学校との連携も考えましょう。

重症心身障害児 無理なく関節を動かす

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  重症心身障害児の関節を無理のない方法で動かすことは、呼吸の改善や衣服の着脱などを楽にするので生活の質を向上させることにつながります。しかし、筋肉の緊張が強い場合には無理な力をいれて行うと筋肉を傷めたり最悪骨折などということもあります。 無理のない関節運動の促すためにはどういう工夫があるのでしょうか。 ①安定していて、支持基底面が広い姿勢で行う:人間は姿勢が不安定になると姿勢を保持しようとする働きが無意識に生じます。特に痙直型の子どもはそういう無意識の保持する神経反応が過剰になっている状態です。その子の神経が姿勢安定の反応を起こし過ぎないようにしましょう。座位よりは臥位で行う方が支持基底面は広くなります。さらに枕やクッションなども利用し安定した姿勢を準備しましょう。 ②呼吸が安定する姿勢をつくる:これもストレッチ前向きの準備ですが呼吸がうまくできないと、何とか呼吸をしようと筋肉に力がはいりやすくなります。楽に呼吸ができる姿勢をさがしましょう。 ③四肢のパターンを考えて動かしやすい方向から動かしてみる:最初の絵の子どもを下肢を動かすことを考えてみます。この子どもの下肢は内股で交差しています。これを運動学の用語でいうと股関節が屈曲・内転・内旋しているといいいます。この股関節を開いてあげるということは運動学用語では股関節を伸展・外転・外旋方向に動かすということになります。例えばそれを一度におこなわず外旋に少し動かし、次に外転に動かし、さらに伸展に動かすと一度に3方向合成した方向に動かすよりも負担なくできるかもしれません。 ④関節の動かす時はゆっくりとした速度で動かす:痙直型の子どもの筋肉は早くひっぱられると縮む性質が強く、ゆっくりとした伸長には伸ばされやすいという神経の特性をもっています。ゆっくりと動かしましょう。 ⑤全身の状態を見ながら動かしましょう:重症心身障害の子どもは不快でも表現が小さいかもしれません。表情・顔色なども表現としてしっかり観察すれば無理なく関節を動かすことができるかもしれません。

PTと子どもとの最初の出会い

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  子どもが乳幼児の場合の場合にPTが最初に子どもと出会うときには、子ども一人ということは少なく、お母さんと一緒ということが多いと思います。お母さんと子どもとどちらへの関わりを最初にしたらいいのでしょうか。 最初の出会いはPTも内心緊張していてしっかりと信用を得たいという気持ちもあります。特に新人の頃は緊張が強いので余裕がありません。親か子かどちらか一方だけに多くかかわってもう一方が不安のままということにならないようにしましょう。でも極端になるのは避けた方がいいと思います。PTは二人に同時に目配せをしながら状況に応じてその時二人のどちらかを主体に関わるのかの比率を決めていきましょう。 最初の出会いでするべきことは親子共に少し安心してもらうことです。本当に信頼してもらうのは先々でいいので少し安心してPTに付き合ってもらえる状況をつくることです。お母さんはお話が通じますし、経験も深いので短時間の会話で安心しやすい場合が多いと思います。(臨床に絶対はありませんのであくまでそういう場合が多いということで) 子ども自身が安心してもらうためには私は次のような手順で行っています。①子どもとお母さんの距離は近め、PTとの距離は遠めに設定します②子ども自身が遊びはじめるのを待ちます②子どもの遊びにPTが関わります③遊びの延長の中で姿勢や運動を観察評価をします④PTが子どもの身体に触れて行う評価をします

運動発達の評価

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  「運動発達は小児の理学療法をする時は基本でだからしっかり勉強するように」と就職して間もない頃に先輩からいわれまて資料をわたされました。当初とにかく丸暗記をしていたのですが、経験を経て一人の子どもの運藤発達状況を姿勢別・身体部位別に評価して他の神経学的検査や行動学的評価との関係を考察できる場合が多くなりました。 例えばその子の歴年齢が7ヵ月、腹臥位の発達は3ヵ月、背臥位の発達は6ヵ月、座位の発達は3ヵ月とするという子どもがいたとします。腹臥位と座位の発達の遅れが強くでていることわかります。筋緊張など他の評価結果と合わせるとその原因は低緊張に伴う抗重力伸展活動の弱さということがいえる子かもしれません。抗重力伸展活動高めるようなプログラムを取り入れることを考えます。 例えばその子の暦年齢7ヵ月で運動発達が腹臥位が4ヵ月、背臥位が4ヵ月であった場合に神経学的検査で下部体幹に低緊張があり、下肢に過緊張があったり、腱反射亢進があったりすCPの痙直型両麻痺のリスクを疑いますし、理学療法においては下部体幹のコントロールや下肢の運動性を向上させることをプログラムにとりいれるかもしれません。 運動の発達を姿勢別、身体部位別に熟知してくると、行動面の発達や神経学的評価と組み合わせてより有効な臨床的なアセスメントとして活用することができるようになります。 同時に標準的評価尺度が進歩してきて臨床的なアセスメントにも利用できることについては重要な観点であると思っています。興味があれば近藤の論文をお読みください。参考文献として書いておきます。 参考文献 近藤和泉:小児リハビリテーション 分野で使用する評価尺度 について:Jpn J Rehabil Med Vol. 53 No. 5 2016

脳性麻痺痙直型児 理学療法の目的や内容を家族へ説明する

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  乳幼児期のお子さんの理学療法では家族支援は大きなプログラムの柱の一つとなります。なぜその運動が有効なのか、プログラムの目的について分かり易く説明するように努めましょう。成長や発達ということを絡めて説明できるといいと思います。 例えばストレッチの目的はどう説明したらよいでしょうか。 「骨はひとりでに伸びますが、筋肉はひとりでには伸びません。関節の運動によって引っ張られる事が大切です。痙性のある子は関節の運動が生じにくいのでストレッチは大切ですよ。」 子どもが一人でソファーにつかまって立ち始めました。でもその際に足の指がグーのように曲がっていることをお母さんは心配しています。お母さんの心配していることに対して理学療法士がどのような戦略を立ててあたろうとしているのかを簡単に説明できるとよいと思います。 「足の指がグーになるのは沢山力のいる動作では一層なりやすい傾向があります。立ち上がり動作の時は沢山脚の力が必要です。まず力のあまり力のいらない真っすぐつかまって立っている中で脚の指を伸ばして立っている感覚を経験させましょう。」 もちろん脳性麻痺を持った子どもで麻痺の症状が完全になくなることはありません。でもその子の持っている運動学習の潜在能力をみながら経過をみる態度は、その子の持っている運動能力を簡単に決めつけないという意味で親御さんにとって信頼できるものに見えるのではないでしょうか。