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抱っこでのトランスファー(重心児・身体が丸まりやすい子の場合)

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  抱っこでのトランスファー     支える場所をお尻の下と背中の下にすることで子どもは状態が伸ばしやすくなり呼吸がです。 下の図のようになると呼吸が苦しくなります 子どもの体が大きくなってきたら無理せず二人で介助しましょう。

つま先歩き(尖足歩行)

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脳性麻痺や発達障害を持つ子どもの一部につま先歩き(尖足歩行)をする子がいます. そういう子どもは無意識で歩くとつま先歩きになってしまいます。「その歩き方はダメ」と注意しても子供は傷つくだけです。もし、別の歩きを教えたければ子どもが踵をついて歩いている時に「その歩き方がいい」と褒めてあげる方がいいでしょう。しかし、ゆっくりと意識すれば踵をついた歩きができるというレベルの子どもは常に踵をついて歩くことは中々できません。それは左右の片脚立ちをゆっくりと交互に行っているような状態だからです。私たちの歩行はセントラルパターンジェネレーター(CPG)という脳の部位を使った無意識運動が大部分になります。 つま先歩きの原因は運動の麻痺の有無や程度・タイプなどによって様々です。 状況に応じて改善方法も様々となります。運動療法、装具療法、薬物療法、手術療法をその子どもによって組み合わせて実施することになります。専門家に相談されることをお勧めします。 参考メモ    意識的運動と無意識の運動 歩くという運動の中で意識的な部分は「歩行の開始、終了、水溜まりなどを見つけて避ける時」などです。いったん開始された歩行を障害物のない環境で継続する時は無意識の運動になります。歩行に関していえば、大部分の動きが無意識に行われます。このことにより話しながら歩いたり、考えながら歩くようなことが可能になります。(二重課題) 脳との関係では意識的な部分は大脳皮質が関与し、無意識の運動では脳幹や脊髄の中にあるセントラルパターンジェネレーター(CPG)の働きが中心になります。

脳性麻痺の定義

 最近、日本では脳性麻痺の定義を示す場合二つの定義を並べて示す場合が多いようです。 1つは1968年の厚生省脳性麻痺研究班会議で策定された定義です。 「受胎から新生児期(生後4週間以内)基づく、までの間に生じた、脳の非進行性病変に永続的なしかし、変化しうる運動及び姿勢の異常である。その症状は満2歳までに発言する。進行性疾患や一過性運動障害又は障害正常化するであろうと思われる運動発達遅延は除外する。」 もう1つは2004年に開催されたWorkshop in Bethesda で策定された定義です。 「脳性麻痺の言葉の意味するところは、運動と姿勢の発達の異常の一つの集まりを意味するものであり活動の制限を引き起こすが、それは発生・発達しつつある胎児または乳児の脳の中で起こった非進行性の障害に起因すると考えられる。脳性麻痺の運動障害には、感覚、認知、コミュニケーション、認識それと/または行動、さらに/または発作性疾患が付け加わる。」 別に1998年欧州で脳性麻痺の他施設共同研究(surveilance cerebral palsy in Europe; SCPE)が行われた際、施設間で統一された定義がなかったので5つのポイントを提示してそれを定義の大枠としています。。脳性麻痺の複雑な定義のポイントとしてわかりやすいので記載します。 ①脳性麻痺は障害の複合体である ②これは永続するが変わらない ③これは運動および/または姿勢と運動機能の障害である ④これは非進行性の干渉要因/病変/異常に起因する ⑤この干渉要因/病変/異常は成長する脳に起因する 医学的診断は医師がつけるものです。その定義は一定の人たちの共通理解として定義されていくもので時代により変更されていくものです。最近の脳性麻痺の定義に対する変遷は内容的にも納得できるところがあります。 しかし、理学療法士として,直接に脳性麻痺を持つ子どもやその家族と関わって感じるのは、脳病変の診断のみ(例えば脳室周囲白質軟化症、低酸素脳症とかだけで)で運動面や行動面の状態像が詳しく説明されていない家族もいるという現実があります。また、脳性麻痺という診断がついていても、脳性麻痺という診断はその意味するところが大変複雑で一般の方には理解しにくいところがあるのではないかとも思います。 医師による障害の医学的診断は親が子どもを理解していくうえで

子どものリハと大人のリハの違い

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 脳に何らかの障害があって運動や行動に障害がある場合にリハビリの対象になってきます。脳障害に対するリハビリには 脳の可塑性( 刺激によって脳内の構造や機能を変化させる)によって生活機能を改善する方法と環境や道具を利用して生活機能を改善する方法、その他にも色々な方法があります。 今回の話の中でリハと言っているのは、脳の可塑性を利用して学習によって生活機能を改善しようというリハの事をさしています。 脳の可塑性には大きく3つの種類があるといわれています。一つは小児期の発達によるもの、二つ目は学習によるもの、三つ目は障害の回復によるものです。大人のリハでは二つ目と三つ目の脳の可塑性が重要になります。子どものリハでは三つの脳の可塑性の全てが重要になります。 脳の可塑性には ①神経細胞を新たにつくる ②シナプスと言われる神経細胞同士の結合を増やす。 ③不必要なシナプスを減らす ④神経伝達物質の種類を変化させて電気信号を伝わりやすくしたり、反対に抑えたりして結果として神経系ネットワークの働きをコントロールする。 ⑤軸索に髄鞘と呼ばれるコーティングをして電気信号の伝達速度を上げる などがあると言われています。 これらの変化は大人の場合障害に関連する領域に生じます。しかし、子どもの場合は障害領域だけでなく全ての脳神経細胞についての神経可塑性が生じます。神経細胞が新たにつくられるのは胎生前期です。その他の変化については胎生後期から生じ出生後も継続します。発達に伴う神経系の可塑性は成人期まで継続しますが、多くは乳幼児期に生じるといわれています。 子どものリハにおいては障害された脳に関連した領域の可塑性を検討するとともに、脳全体の可塑性についても考慮しなければなりません。発達に伴う脳の可塑性は領域ごとに順序性をもって生じるという点も重要です。障害部位の脳の機能を向上させようとしているその時に、同時に他の領域の脳が自然に発達していくことを考慮していかなければなりません。具体的には障害そのものだけでなく、二次的に生じる育ちの障害をいかに少なくするかということについては大人以上に配慮しなければならないということです。 子どもに関わるセラピストは神経科学・教育学・心理学など幅広い勉強も必要となると思います。

発達の順序性

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発達には順序性ということがあります。 首がすわって、お座りができて、一人で立てるというように運動発達では頭ー尾の法則といわれる順序性の原則があります。何故、多くの赤ちゃんが同じような順序で運動が発達するのでしょうか。 これは脳の成熟に関係しています。脳では部分ごとに成熟の時期が異なり、順序があります。 運動野のホムンクルス  運動野 ペンフィールド 上の図は大脳皮質運動野の領域が身体のどの部分を支配しているかを示してしています。脳の成熟は下から上の順序があります。脳内の身体図は逆立ちしているので、生じる運動を身体部位からみると頭から尾側に発達することになります。          ブロードマンの脳地図 ブロードマンの脳地図という脳の図もあります。運動野はブロードマンの脳地図で④野になります。そのすぐ後ろにある①②③野は感覚野といわれています。大脳皮質全体をみると④野や①②③野は他の部分よりも早く神経系の機能が働き始めます。言葉や思考が機能する前に、運動や感覚の機能が発達するというようのも神経成熟の順序とあっています。 しかし、実際のリハビリを行う上では発達の順序のみにとらわれ過ぎるのも良くない場合もあります。その子どもの能力を引き出すのに一番良い刺激は何なのかを考える時には、発達の順序性の知識は一つの一般論として考えておく方が良いでしょう。

逆境的小児期体験(ACEs)と障害児リハの関係

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  逆境的小児期体験(ACEs)という言葉をご存知でしょうか。虐待、家族の薬物乱用、家庭内暴力など家族の機能不全を経験した子どもは成人期になって健康に有害な影響を及ぼすということが科学的に示されています。 この原因は長期的な不安や緊張(ストレス状況)の継続により視床下部ー下垂体ー副腎系(HPA軸)によるストレス反応が暴走し、身体を壊すためといわれています。特に乳幼児期はこのHPA軸が発達途上にあるため影響が大きいと言われています。 また、このような現象は虐待、家庭内暴力など重篤な体験でなくても、家族間の愛情不足や両親の仲たがいなど比較的おこりやすい小児期逆境でも生じるという研究もでてきています。 子どものリハビリは時に子どもを傷つけストレスの原因となることはないのでしょうか。 障害というのは完全に治るものではありません。障害はある面個性と言い換えてもいいものです。乳幼児期においては個性というようなものも固まっておりません。神経系の可塑性も高く、変化の激しい時期です。そのため親は障害の軽減に熱心なる場合があります。しかし、それも個性として捉えなければならない日がきます。そうしなければ子どもにとって、自分の存在を否定されているかのように感じられ、ストレスを受けることになるでしょう。そのことが、子どもの障害にわたる健康や幸福を制限するならば、それを望む親などいるでしょうか。 リハビリにおいて人と違うやり方や参加の仕方でも、できることを認めていく代償的なアプローチや本人の意思決定を重視した提案型のアプローチについても認識されてきています。本当に子ども達の将来のためになるリハビリや理学療法でありたいと思っています。 参考文献 1)成人による逆境的小児期体験の報告ー5州 2009年 米国疾病管理予防センター報告 2)小児期トラウマがもたらす病 ドナ・ジャクソン・ナカザワ パンローリン グ

幼児期に適した運動

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 上の図はスキャモンの発育曲線というグラフです。子どもの年齢に応じたトレーニングを説明する時によく使用されます。それぞれ臓器の重量が成人期の重さの何パーセントにあたるかを示しています。 青線で示される脳や脊髄など神経系の重量は6歳までに90%を超えます。骨や筋肉が含まれる一般系と呼ばれる緑の線をみるとその重量は40%程度です。このことから幼児期は筋肉を大きくすようなトレーニングよりも、神経系のネットワークをつくるような運動が適していると言われています。 幼児期に適した運動とはどういう運動でしょうか。 ①楽しく遊びながらする運動 楽しく遊びの中で身体を使うことで、運動が記憶されやすくなります ②いろいろな運動 早く走るだけでなく、ゆっくり走ったり、障害物をよけてはしったりすればいろいろな神経ネットワークを使うことになります。もちろん走るだけでなく、ジャンプしたり、ボールを使ったり、相撲をとったりと運動の種類が違うと違う神経ネットワークが使われます ③毎日1時間程度身体を使う時間をつくる 体力をつけるためにはある程度の量は必要です。トレーニングというよりも遊びや生活の中で身体を使うようにしましょう。