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動こうとしない赤ちゃん

赤ちゃんの中にはあまり自分から動こうとしない赤ちゃんもいます。動こうとしないというのは、例えば①座らせれば座れるけれど自分で、うつぶせから座ろうとしない、逆に座ったままうつ伏せになろうとしない②うつ伏せはできるが自分から這い這いをしない③仰向けにねているだけで寝返りしない というような赤ちゃんです。色々な姿勢をとらせればその姿勢をとり続けることができるので、筋肉自体や姿勢保持や姿勢の立ち直りというような基礎的な神経の働きはそれほど悪くありません。そこで考えられる原因の一つとしては、動こうとする意欲や動くことの計画が弱いのではないかということです。 このような赤ちゃんに対して運動発達を支援する際の基本は ”とにかくその子の好きなものや遊びをみつけること、その子が動きやすい姿勢をみつけることから始める” 他の子どもと同じものを目指すのではなく、その子が受け入れられるものをさがすという態度が大切だと思います。 ”ゆらしたり、くすぐったり、マッサージをしたりとその子の楽しめる体の感覚で遊んであげること” 子どもは運動自体を学習するのではなく、運動した時感じる感覚を学習します。学習された運動感覚は記憶されて、子どもが動こうと思った時に使われます。難しい言葉では体性感覚といいますが、体性感覚の経験を増やし神経が活動しやすい状態にすることも自発的な運動の基礎作りとして大切です。

座位を促す

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赤ちゃんに座位の発達を促す時の代表的な方法を2つ紹介し、その効果違いについても説明します。 ①大人が膝に座らせたこどもを傾ける方法 こどもをお母さんの膝にのせて、お母さんはこどもの体幹を支えます。お母さんが左右の膝高さを変えることでこどもを側方に傾かせることができます。こどもは傾きに負けないように頭と体を立ち直らせてきます。 ②こどもが自分でおもちゃに手をのばすようにしむけてバランスをとらせる方法 こどもはお母さんの脚の間にすわらせます。おもちゃを側方や上方に提示して、こどもがそれに手を伸ばすようにしむけます。こどもは手をのばすときに重心の移動が起こるのでバランスを促すことができます。 ①②の方法がどちらが効果がよりあるということではありませんが、バランスの練習と考えた場合には①と②では違ったバランスの種類を練習していることになります。①の方法では重心の移動はお母さんが左右の膝の高さをかえることで始まります。このようなバランスを外乱応答といいます。重心が外側からの力で変えられたのでそれに反応してバランスをとっている反応です。「反応性の姿勢制御」といわれるものです。②の方法ではこども自身が重心の移動を意図して開始します。こどもは重心の移動に先立ってバランスをとり始めるため「予測性の姿勢制御」といいます。 ①の方法では重心移動に対してバランスをとるという神経の働きと筋肉の収縮が練習できます。②の方法ではそれを予測し開始するという神経の働きと筋肉の収集が練習できます。 どちらの方法がその子に適しているかはそれぞれですが、実生活でバランスをとれるようになるためには①②どちらの働きも必要であると言われています。

這い這いを促す

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うつ伏せで余裕をもって遊べるようになるとこどもは這い這いをはじめます。 こどもに這い這い移動を促したい時は、這い這い移動の前提条件を整えるとよいと思います。前提条件は二つあります。 ①遠いところにあるものや高いところにあるものへの興味がでること 生後6か月頃にこどもは上手に両眼でみたり、遠近感を感じたりという視機能が発達してきます。視力は0.07ぐらいですので遠くのものにピントを合わせるのはそれほど上手ではありませんが、動いているものやコントラストのあるものなどには興味をしめします。今までは手の届く世界よりも少し遠くや高いところにあっても触って確認したがります。 ②側方や上方への重心移動ができるようになること   重心の側方への移動ができるようになると体重が乗っていない側の上肢・下肢を自由に動かすことができるようになります。これを交互に連続すると這い這いになります。うつ伏せで重心を高くすることができると膝や足で体重を支えることができます。そのためには上半身を高く上げることが必要です。体幹の筋肉が腰やお腹の部分までしっかりと働くことと、上肢の支えが肘の支えから掌の支えになることでそれが可能になります。 這い這い移動の準備活動 ①ピボットターンが左右ともにできる ピボットターンとはうつ伏せで玩具などを追いかけて足の方向に回っていく運動です。一側への体重負荷と反対側の上下肢の運動を促します。 ②手で支えて上半身をあげられる 赤いロールは座布団を丸めたりやお母さんの脚を使ってもできます。肘を伸ばすと掌が床につく高さがやりやすいです。簡単にできるようならばこどもの身体を少し頭の方にずらすと体幹の下の空間が大きくなり負荷も大きくなります。

うつ伏せで遊ばせる②

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うつ伏せで遊ばせる際にこどものもっている力を十分引き出そうとする時に私の考えていることは何でしょうか。その子の何を助けるとうつ伏せで遊びやすくなるのかということです。 私は二つの点から手助けができないかを考えます。 ①課題 こどもがその活動に興味をもつための課題です。その子の興味をひくための遊びの種類や玩具を考えます。左の写真の玩具よりは右の写真の玩具の方がうつ伏せでの活動が引き出しやすいと思います。 ②重心の移動 うつ伏せで玩具にさわろうとすると重心位置は矢印のように移動します。 うつ伏せを横からみた図 矢印が重心の移動 重心は下半身の方へ移動します 赤はバスタオルを丸めてつくったロールです *これをいれるだけでも重心は下半身の方へ移動します うつ伏せを上からみた図 左手で玩具を触る時には重心は下半身の少し左側の方へ移動します   重心を少し斜め下方に移動させる方法は、下の図のように大人の手のひらをこどもの背中に乗せて軽く圧迫しながら、背中を下半身のへ1~2㎝ぐらい引っ張る誘導法があります。下図の方法では重心がこどもの下方かつ少し左側によるので右手を使って玩具へ手をのばしやすくなります。            

うつ伏せで遊ばせる

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タミータイム(tummy time)ということばをご存知でしょうか。英語でお母さんたちが見守っている状態で赤ちゃんをうつ伏せで遊ばせることをいうそうです。日本語には同じような意味の言葉はないそうです。うつ伏せは安全に配慮して楽しみながら行えれば発達を促すことにつながります。そのため英語には特別そのような言葉があるのかもしれません。  うつ伏せ姿勢でこどもが遊ぶために必要なことは二つあります。 ①頭や上体を床から持ち上げること ②上肢で支えること こどもは①や②の能力が持続的にできないとうつ伏せで遊ぶことができません。 うつ伏せの乳児の姿勢の発達をみてみましょう。 新生児は呼吸のたまに頭を瞬間的あげられますが、持続してあげていることはできません。体幹はまだ床からあげられません。上肢は支持に使われていません。 3ヵ月になると物をみるために頭を持続的あげておくことができます。体幹は胸のあたりまであげることができます。肘で支えることができます。 6ヵ月になるとより遠くを見ようとして体幹がお腹のあたりまであげることができます。上肢は肘は伸ばして手のひらで支えることができます。 うつ伏せ姿勢で赤ちゃんを楽しく遊ぶコツは二つあります。 ①頭や上体を上げやすくすること②上肢で支えやすくすることです。 ①頭を上げやすくする工夫 頭や上体を上げやすくするための工夫は何か興味のある物をみせることです。お母さんやお父さんの姿、動いたり見ていて面白い模様の玩具などが好きです。 上体を上げやすくする工夫 胸と床の間にバスタオルで作ったロールやお母さんの脚をいれてあげると状態をあげやすくなります。 ②上肢で支えやすくする工夫 肘や手のひらをつく位置が大切です。赤ちゃん自身の肩の下あたりにつけさせると支えやすいようです。

坐ったまま移動する赤ちゃん

 赤ちゃんの多くは這い這いで移動する時期をへて歩きはじめます。でも中には座ったままの移動(いざり)から歩いていく子がいます。 お父さん、お母さんはこの子は病気なのかと心配する場合があります。しかし、安心してください、その子どもは病気ではありません。正常発達のバリエーションの一つであるとされています。 いざり移動の子どもはうつ伏せを嫌う子が多いのですが、保健所の赤ちゃん検診の時などにうつ伏せ過ごすことがない子どもに対してうつ伏せで遊ばせることを勧めてくる場合があります。うつ伏せや這い這いの時に使う筋肉は、いざりの時に使う筋肉と違います。そして乳幼児の運動発達を促す時の原則の一つに色々な運動や姿勢を経験させるというものがあります。このような観点から できるなら うつ伏せに誘ってみたらいいと思うのでしょう。 ここで大事なことは できるなら ということです。いざり移動を好む子どもの中にはうつ伏せをとても強く嫌がる子どももいます。もし、お母さん自身が楽しめる範囲で、赤ちゃん自身が楽しめる範囲でうつ伏せの活動が促せるのであればチャレンジしてみて下さい。でも無理をしないで下さい。子どもの発達には様々な道があることを考えてみましょう。その子にとっては今は見守る方がいいのかもしれません。泣き叫ぶ赤ちゃんとの板挟みでお母さん自身が不安にならないで下さいね。

乳児の運動を促す(赤ちゃんの意欲について)

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 乳児に運動発達を促そうとする時に役立つように書きました。 運動を自動車に例えれば、自動車自身の機械としてのつくりが万全であっても運転手がのらなければ自動車は動きだしません。ガソリンが入っていなけれ自動車は動き出しません。 乳児の身体が自動車だとすれば、運転手にあたるものは何でしょう。目的をイメージする脳の働きです。ガソリンは健康や身近な世話をしてくれる大人の愛情です。 乳児が目的をイメージするとはどういうことでしょう。乳児期前半は目的をもった行動は明確ではありませんが、感覚と運動を結び付けて、自分で同じ状況を繰り返しつくりだすことが目的をもつことにつながっていくと言われています。 ガラガラを偶然ふったら音がでたので、その行動を繰り返すのはそれにあたります。 大事なことは赤ちゃんが楽しんで繰り返すことを発見して、そのような状況を大人も楽しみながら付き合ってあげることでしょう。 赤ちゃんはどんなものに興味があるでしょう。一番は人の顔かもしれません。音のするもの、動きのあるものが大好きです。運動を促すということを考えれば自分で何かすると動きがでるものの方がいいかもしれません。 赤ちゃんは視覚、聴覚、体性感覚(自分の動きを感じ取る感覚)を同時に使うことが好きです。そうすることで脳の中に新しい神経ネットワークを作ることができます。それは将来目的をもって世界に関わる基礎となります。 療育センターやこども病院の理学療法室にはよく写真のようなおもちゃがあります。左の写真のおもちゃは寝返りやお座りの際に使うことが多いおもちゃです。右側のおもちゃはうつ伏せで遊ばす時に使うことが多いおもちゃです。