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脳性麻痺等 拘縮はなぜ進むのか

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 脳性麻痺など胎児期から生まれてすぐの時期に生じた脳障害によって運動に困難さを持った子ども達は乳児期よりも関節の可動域が減少したり、変形拘縮が進行する場合があります。脳の病変が進行するわけではないのに、変形拘縮が進むのはなぜでしょうか。 1.骨の長さが伸びる時期に筋肉が伸びない 骨は自分で伸びていきますが、筋肉は運動で延ばされることによって伸びていきます。運動が少ないと骨だけ伸びて筋肉の長さが変わらないために関節可動域の制限が進行します。  2.重力の影響 重力は24時間身体にかかります。それによるつぶれは変形拘縮の大きな原因の一つです。例えば低緊張の足を持っている子どもでは体重によって足が回内につぶれます、毎日同じように体重をかけ続けると回内変形が進んでくる場合があります。背臥位で過ごすことが多い子供では胸郭が扁平化することもあります。 3.限られた筋肉の使いすぎ 限られた使える筋肉だけで抗重力活動を行うので使える筋肉が短縮して、変形拘縮につながるということもあります。例えば、低緊張で外反した足の子どもにはふくらはぎの内側の筋肉が使いにくくて、外側の筋肉だけで頑張るのでそこが硬くなって踵がより外側に偏位している子どもをみかけることもあります。沢山種類のある筋肉を効果的に使えないことも脳障害からくる変形拘縮が悪化する原因の一つです。 変形拘縮にはどんな防止策があるのでしょうか。 ①動かす 関節を動かすことが大切です。ストレッチもその一つです。寝たきりの子どもの日常姿勢の種類を増やすこともストレッチや筋力強化になり、結果変形予防になります。 ②良いアライメントをとらせる 骨を適切な配置にすることで動作に複数の筋肉を使いやすくなります。このことは身体のつぶれを防ぎ関節可動域を維持することに役たちます。足の例を挙げます。 ③手術や薬による治療で変形拘縮を改善することもできます。 こどもリハビリ相談

脳性麻痺 上肢変形

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 脳性麻痺の上肢の変形では掌が上を向かない(回外制限)が手指の伸展制限や母指の濁りこみの変形よりも多かったという論文があります。指だけでなく前腕もゆっくりと動かしてあげましょう。 前腕回外の動きは尺骨の周りを橈骨が回っていくような動きです。動かしてあげる時は橈骨(前腕の親指側)の肘に近い場所と手関節に近いところを同時に持つような感じでゆっくりと手の平を上の方に向けてあげましょう。 参考文献 Eun Sook Park,Eun Geol Slim,Dong-Wook Rha: Effect of upper limb deformities on gross motor and upper limb functions in children with spastic cerebral palsy 2011 こどもリハビリ相談

脳性麻痺 片麻痺 両手を使う

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 脳性麻痺で片麻痺を持っている子は麻痺側の手をあまり使いません。大人が少し工夫して使う機会をつくることは大切です。その子なりに麻痺側の手にもボディイメージをそだてましょう。 ①普段から麻痺側の手にも気づかせてみる。麻痺の無い側の手を使う時に麻痺の手で抑える使い方ができるか試してみましょう。 ②普段の遊びの中にも両手を使うことを促しやすい遊びがあります。 ままごと 人形遊び ボール遊び ③子どもさんが嫌がるようなら、無理にやらせず、まず原因を考えましょう。OT.PTの先生に聞いてみるといいと思います。 こどもリハビリ相談

療育とは

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  宮田は『療育は「障害のある子どもを育てる特殊な技術」から「子どもたちそれぞれの育ちを支援できる手段」に成長することが求められている』と述べています。 「障害の治療」vs「障害は個性」ということと似ているのかもしれません。障害は受傷して最初のころは病気ですが、だんだんとそれは個性に変化していきます。治すのではなく、その子なりの方法を見つけ出すということになっていきます。 私自身は地域で子どもの理学療法をやってきたので、子ども達それぞれの育ちを支援しているということと自分の普段の仕事の方向性は一致している感覚があります。 治療なのか、教育なのかと言われると教育にかなり近い感覚かもしれません。自分の仕事は一人一人の個性を把握して、一人一人の長所を見つけ出して、一人一人の発達を支援するという仕事をしていると思っています。その感覚で仕事に当たった方が自分も楽しいし、うまくいくことが多いように思えるのです。 発達は様々な要因の関係性の中で起こるので、正直結果が予測できることばかりではありません。害にならないなら、益になりそうなことはとりあえずやってみる、無駄玉を投げることを恐れないし、かえってそれを楽しむというやり方もいいのではないでしょうか。 参考文献 宮田広善著 「子育てを支える療育」 2001 年 7 月初版 ぶどう社 こどもリハビリ相談

脳性麻痺の理学療法評価 麻痺の分布と粗大運動能力分類システム(GMFCS)

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  脳性麻痺の評価で麻痺の分布と粗大運動能力分類システムの結果にはある程度関係があります。 片麻痺のある子どもの将来的な移動能力は粗大運動能力分類システム(以下GMFCS)のⅠ~Ⅱの子どもが大部分ですので歩行による移動が獲得できる可能性が高いです。 両麻痺のある子どもはGMFCSでレベルⅠ~Ⅲに入る可能性があります。自走車いすでの移動になる場合もあります。 四肢麻痺のある子どもではGMFCSはレベルⅡ~Ⅴの可能性があり、その中でもⅣ~Ⅴの可能性がが大きくなります。GMFCSのⅣ・Ⅴは電動車いすもしくは介助での車いす移動です。 脳性麻痺の診断名を持っている子どもの症状は多様です。その子どもの個別性を明確にする評価を行い、関わりを考えていく必要があります。又、胎児期もしくは出生後早期の脳障害によるため障害を持ってから人生の年数が長くなり、成人期を見通すことの難しさもあります。 麻痺の分布・GMFCS・麻痺の種類などの情報を組み合わせて解釈することでリハプランにつながる有益な情報を得られます。 参考文献 中徹 : 脳性麻痺の理学療法 . 理学療法学 40 (4):302 ‐ 305.2013  

二分脊椎 仙髄レベル 足部変形

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二分脊椎は障害された脊髄のレベルで運動機能や変形拘縮の状態が違ってきます。移動能力についてはホッファーの分類、下肢の麻痺と変形についてはシェラードの分類の表を参考にして予後を考えるようにと理学療法士の学校では習います。 でも学校では色々な事をならうので習うことの中の一つですので、忘れてしまう人も多いのではないでしょうか。二分脊椎の子どもの整形外科治療をしているような病院に勤めていれば別ですが、特に仙髄レベルの麻痺については印象が薄いようです。しかし、足部変形の管理は案外大変です。 二分脊椎の変形は筋のインバランスで生じるといわれています。凹足(ハイアーチ)は足指の伸展筋力に比べて屈曲が優位な時に生じます。外反扁平は下腿三頭筋の筋力が弱い場合に生じます。歩いているので体重の負荷が変形をさらに助長します。ほとんど歩いて生活をしている子どもなので、装具があたりだしたらすぐに調整しなけば、傷や痛みにつながってしまいます。日常ストレッチをしたりして、変形の悪化防止に努めることも必要です。足の外側や内側にタコができたり、潰瘍ができたりするようだと手術治療の適応になります。 日常運動療法はしていても小学校にはいってから変形が進むことがあるので。やはり装具の作成・調整のできる病院などに日常通っていることは必要ですし、整形外科の手術のできる病院でも頻度は少なくても経過をみてもらっていると、いざという時の治療のバトンタッチがスムースにいくと思います。 こどもリハビリ相談  

脳性麻痺痙直型四肢麻痺 座位

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脳性麻痺で痙直型四肢麻痺を持った子どもの中には円背が強い子どもがいます。脊柱が屈曲しているだけでなく、肩甲骨が外側位置すると肩の付け根の位置が前方になります。骨盤が後ろに傾くため股関節が十分に屈曲しません。 このような姿勢をしていうることによるマイナス面は ①重心線が脊柱前方を通るため、将来頭部や体幹の重さにより脊柱屈曲が強まる危険がある ②背中が丸くなったり、肩甲骨が身体の外側に位置すると首や上肢の随意運動がしにくくなる ③股関節がしっかり曲がることが少ないと座位でお尻が前方にすべり座りにくい座位機能の低下につながる このようなマイナス面が大きくならないようにする対策として下の絵のように大人が介助して背中をのばしてあげる運動プログラムがあります。 その効果は ①座位の際の体重の関わる場所や、背中を伸ばす時に力をいれる筋肉本人がわかりやすくなる ②ストレッチ運動となって筋肉の短縮を予防する などがあります。 こどもリハビリ案内