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重症心身障害児 姿勢選択

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 立てない、座れない、寝返りができないなど自分一人でとることのできる姿勢が限られる子どもの場合補装具など道具の助けをかりて多様な姿勢をとらせることに配慮します。なぜ多様な姿勢をとらせるといいのでしょうか。 宇宙飛行士りができないなど自分一人でとることのできる姿勢が限られる子どもの場合補装具など道具の助けをかりて多様な姿勢をとらせることに配慮します。なぜ多様な姿勢をとらせるといいのでしょうか。 宇宙飛行士が宇宙空間に滞在する際の健康問題の一つに微小重力の問題があります。前庭器官の能力低下や心臓循環器の能力低下、骨や筋肉の構造・機能低下が出現するそうです。 重症心身障害児は微小重力空間にいるわけではありませんが、姿勢が限られることによって重力と肢位との関係が限られることになります。 立位がとれれば重力は頭尾方向にかかり、下肢骨長軸方向に力がかかることになりますが、座位までの子どもでは下肢骨長軸への力がかからず結果骨の成長に悪影響をもたらします。筋肉についても同様の事がいえます。もし背臥位しか取れないない子どもの場合は重力は常に身体の前面から後面に向けてかかります。結果として脊柱や四肢骨への長軸方向に力がかかりません。又、肋骨は長時間重力の力を受け続けられる構造ではないので変形をきたしやすくなります。 循環器系と重力の関係はどうでしょうか。人体は血液で満たされています。血液は下の方にたまりやすいので、立位は臥位に比べて心拍数や血圧を高く保たなければなりません。このことが心臓や血管の機能を高めることにつながります。また、寝たきり児の下側肺障害ということもあります。肺の中の血液や分泌物が肺の下側にたまり下側肺の機能が低下するという現象です。 人間の身体は立って歩いて活動し、休息するということによって健康が保たれます。身体構造と身体活動が一致しない子ども達にとって多くの姿勢をとるチャンスがあることは健康につながると考えます。私たちは誰でも健康でありたいという要求があります。重症心身障害を持つ子どもも私たちと同じように健康でありたい要求を持っています。

脳性麻痺 痙直型両麻痺

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  脳性麻痺(痙直型両麻痺)を持つ子どもは下部体幹から下肢にかけて麻痺症状が強い子どもです。 頭部・上肢・上部体幹の麻痺は比較的軽度なので、車いすで移動したり、杖歩行や両足に装具を付けての歩行が可能になる子どももいます。 体幹運動パターンには発達順に伸展・屈曲・側屈・回旋がありますが、両麻痺児の体幹部は低緊張で筋肉の働き不十分で抗重力活動が弱く運動パターンも減少している場合が多く観察されます。下肢は痙性で関節の運動性が乏しく、運動パターンも限られています。歩行能力が高い子どもは体幹部から股関節の運動能力が高い場合が多いようです。足関節・足部の運動性の欠如や変形拘縮は軽度~重度まで多くの子どもに観察されます。 治療は低年齢では運動療法と装具療法を行い、幼児期後期で下肢の過緊張が強い場合にはボトックス、選択的後根離断術、整形外科手術などの過緊張コントロールの治療を併用します。子どもの将来の移動能力を最大限に引き出すためには多機関連携やチームアプローチが重要と考えられます。 理学療法プログラムの中では、下肢のコントロールと体幹部の抗重力コントロールを同時に改善するようなプログラムとストレッチや筋力強化を組み合わせて行っている場合が多いと思います。 理学療法士から見ると下肢コントロールが変われば座位や立位での支持基底面が変わりその結果体幹コントロールのバリエーションが増しきます。逆に体幹コントロールが改善されたことによって下肢の運動パターンが増える場合もあります。体幹運動パターンの発達は生後の抗重力運動の経験の質に影響されるます。二次的な発達障害をおこさないようにすることは理学療法士の重要な役割の一つであると思っています。

重症心身障害児 姿勢選択のチームアプローチ

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人の活動とそれに伴う姿勢変化 一般に誰でも姿勢は生活活動によって選択されます。休息から活動へとその子どもが何を欲求しているかで適した姿勢は変化します。立位は一番活動的です。座位は目と手を使う活動や食事に適しています。臥位は休息に適しています。逆にある姿勢をとることでそれに応じた活動状態になるという現象もみられます。(例 ふとんに横になったら寝ていた いい椅子に座ったら勉強する気がおきてきた etc.) 重症心身障害児の姿勢選択はその子の活動や休息をどのようにとっていくのかということによって変わってきます。そしてそれはその子がな何を要求しているのかによって変わってきます。 マズローの5段階欲求説というのがあります。人間は色々なレベルの欲求によって行動しています。重症心身障害を持っている子どもも欲求の段階が変動します。 マズローの5段階欲求説 重症心身障害のある子どもの立位では起立台や歩行器などの道具を使うことが多いと思います。座位はその子の身体状況に合わせて作製された座位保持装置を使用します。臥位はクッションなどを利用してより安楽で多様性のある臥位を検討します。福祉用具を含めてその子の環境面の評価が重要です。障害児の運動学や生理学に詳しいリハビリテーション科医師・義肢装具士・理学療法士・作業療法士などが活躍する分野です。 健康面の不安定な子どもは生理的な欲求の充足が必要ですが、休息の取り方は一人一人違います。同じ子どもでもその日その日によっても体調にかなり違いがあります。これについては日々の健康管理をしているご家族や看護師さんやよくわかる分野です。 また、一人一人の興味や意欲もといったものかなり個別性があります。その子どもの要求は何なのかは常識にとらわれずに判断することは非常に大切です。やってみなければわからない部分も多くあります。本人が一番知っているのでしょうが、ご家族、保育士、教師、作業療法士がそれを見つけることがあります。 どんな子どもも生活には休息と活動の両方が必要だということ、重症心身障害をもっていても様々な欲求段階があることを前提として共有した上で、その子どもなりの休息と活動のバランスをどうとっていくのかをご本人やご家族を含めたチームでできると良いのではないかと思います。  

発達障害の運動(運動イメージのこと)

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いわゆる発達障害は米国精神医学会が発行する「精神疾患の診断・統計マニュアル」(DSM)の最新版DSMー5では神経発達症群として記載されています。神経発達症群のなかには知的発達障害群、自閉症スペクトラム症、限局性学習症、注意欠陥多動性障害、発達性協調運動症群、コミュニケーション症群、その他の発達症群の7つが含まれています。発達性協調運動症群は運動発達の問題が著明ですが、複数の診断名が重なっている場合も多いですし、発達性協調運動障害以外の神経発達症であっても低年齢の時期に運動発達の遅れなどを指摘されていた子どももいます。 PTにくる子どもでは手先の不器用さ、バランスの問題、歩き方が変、年齢に比して運動発達の遅れがある、運動嫌いなどが代表的です。 もう少し細かく評価をしてみると、筋緊張、筋力、姿勢バランス、協調運動、運動イメージ、感覚調整、覚醒調整、注意、眼球運動などに問題がある場合があります。子どもの場合は年齢によって能力が向上するので、年齢との関係でみていく必要があります。 運動イメージとは運動とその結果を頭の中で思い浮かべることができる能力です。この能力は発達障害の子どもの運藤を考える際にはとても重要だと思います。検査としては言葉や絵カードなどで示された姿勢や運動を行ってもらう検査がありますが、そのような検査が使えない幼児期の初期までの子どもをみていてもこの子は運動イメージが浮かばない子どもなのかなと思う時はしばしばあります。例えば姿勢バランスの能力が比較的高いのに、姿勢変換や移動をしない子ども達は運動イメージの機能に問題があるのかなと考えたりします。 小さい子どもに運動をイメージさせるためには手遊び、揺れ遊びを使っています。下のような点で効果があると思います。 ①体の感覚を感じさせる ②繰り返すことで予期させる ③楽しませることで記憶に残す

子どものリハを行う理学療法士に求められるもの

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  子どものリハを行う際に理学療法士に求められるものは様々でしょう。子どもの人権を守る、家族を支援する視点を持っている、職種間連携を重視するなど不可欠です。ただそれは子どものリハビリ(療育、発達支援)に関わるどの職種にとっても求められるもので、理学療法士も当然それを理解し、身に着けていることが期待されていることだと思います。 それがあった上で理学療法士には何が期待されるのでしょうか? 1つ目は子どもの個別性を理解する手がかりを与えてくれることだと思います。小児期の障害に関する疾患は多種多様です。診断名も沢山ありますが、たとえ診断名は同じでも、脳性麻痺や自閉症スペクトラムの診断は症状診断ですので障害されている障害の原因となっている脳や神経の状態は多様です。その結果、運動や行動の状態はかなり個別性があります。そして、一人の子どもでも脳や神経は年齢によって発達に伴う変化がありますので子どもの年齢による状態理解も必要になります。理学療法士は特に姿勢運動面の多様な状態像を評価し、一見同じように見える状態でもどこがその子の特徴なのかを理解し、ご家族や他職種にわかりやすく伝えることができることが求められていると思います。 2つ目は姿勢運動面の将来像を予測することでしょう。その子ども長い人生の将来を見据えていくことはなかなか困難な課題です。障害の中には比較的将来像予測がたてやすいものも、そうでないものもあります。できる限り将来像を予測する力を高めることが必要だと思います。 3つ目は生活を理解する力をもっていることでしょう。年齢によって生活圏は拡大し必要となる生活機能が変化します。理学療法士は一つの病院やステーション、事業所に所属していることが多いので中々生活の変化に気づけません。訪問や連携にでたり、本人や家族からの聞き取り能力を高めることでより生活にあった具体的な目標を定めることが期待されていると思います。 4つ目は具体的な対応策を提案できることでしょう。本人が楽しみながら成功体験をするためのスモールステップを見つけ出し提案してくれることを子どもや家族は求めていると思います。

運藤発達 前傾座位 低緊張

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両手を床から離して一人でお座りできるようになる前に赤ちゃんは、前方に手をついて体幹を少し前傾した座位を保持できるようになります。体幹を後傾させての座位コントロールが獲得されるのはひとりで座れるようになったあとです。 低緊張でお座りの獲得がゆっくりなお子さんはお座りの際に背中が丸くなってしまうので、背もたれがリクライニングできるベビーラックなどを使用している場合が多くあります。リクライニング座位は特に食事をさせる時などはやりやすいですが、子どもが自分で頭部体幹を空間で保持したりバランスをとる経験ができません。そこでそのような低緊張の子どもには前方カットアウトテーブルをおいて、手で支持して体幹を起こす経験を生活にとりいれるようにします。手で支持することが難しい場合はテーブルの高さを高くして肘で支えられるようにすると座っていられます。   言いたいことを整理すると ①座位には前傾座位と後傾きの座位があり、姿勢のコントロール練習としては前傾座位の経験が役に立ちます。 ②低緊張が強い場合はテーブルの高さが高い方が頭部体幹を伸展させやすくなります。 ③低緊張の子どもには前傾座位ばかりをさせろということではありません。状況によってリクライニング座位も使って下さい。状況というのは目や口や手などを細かく使わせるために、頭や体幹を背もたれでしっかり安定させた方がやりやすい活動の時です。

重症心身障害児 の姿勢(腹臥位など)

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自分で身体を動かすことが難しい子どもの場合、色々な姿勢を日常生活の中にとりいれることが呼吸や関節の変形のためにはいいと思います。どんな姿勢でも一つの姿勢だけを長くとりつづける過ぎることは身体によくありません。 色々な姿勢というのは基本的に5つあります。 ①背臥位 ②側臥位 ③腹臥位 ④座位 ⑤立位 臥位は休息の時、座位・立位は活動の時に使うことが多いのですが、側臥位で活動しやすい子どももいます。 最初の絵は自分用の腹臥位器を使用している方です。 腹臥位の長所は ①背中側の肺にに空気がはいりやすい。 ②下顎の後退や舌根沈下が改善される ③唾液が口腔外に排出される などがあります。 基本的には休息の際に使うことが多い姿勢ですが、大人の監視が必要です。変形などの関係から難しい子どももいます。その場合は深い側臥位でも同じような効果があるといわれています。 乳幼児の場合は身体が小さいので自分用の腹臥位器がなくても、クッションなどで代用できます。四つ這い位をつくり、頭・腕・脚が宙に浮かないように台をセットする必要があります。頭は横に向けて頬の部分をクッションにのせます。クッションはあまり柔らかすぎると体重に負けてしまうのである程度しっかりと受けられる硬さの物を使用します。 顔面に触覚過敏があったり、屈筋過緊張があると最初に姿勢をとらせるのが大変かもしれません。その場合は一度膝の上で四つ這い姿勢にしてからクッションの上に移動させるようにします。 筋肉の緊張や関節可動域、呼吸障害の状態などに合わせたり、同じ子どもでも日によっての体調変化に合わせたり細かく検討することがポイントかもしれません。