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運藤発達の法則

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運藤発達の法則と言われるものがいくつかあります。 ①頭から尾側へ 例 首がすわる→腰がすわる(座位ができる)→足で立つ ②中枢から抹消へ 例 肩や肘の筋肉がしっかりしてから手先が使いやすくなる ③全体から部分へ 例 腕全体で動いていたものが肘のみや手首のみでも動かせるようになる ④両側から片側へ 例 両腕を同時に動かすことから片側の腕だけを動かすせるようになる 体幹を左右同時に動かして屈伸いたところから、右の体幹を伸ばして左の体幹を縮めることによって側屈できるようになる ⑤運動から安定へ、そして安定しながら運動へ 例 体重をかけないで脚が動かせる→脚で体重が支えられる→体重を支えながらも足を動かせることによってバランスをとることができるようになる このような順序性が多くの子どもにみられるのは脳の成熟の過程に共通なものがあるからです。脊髄は働き始めるのが早く、大脳皮質が働き始めるのはあとになります。大脳皮質のなかでも頭部の運藤をつかさどる部位が足の運動をつかさどる部位よりも早く働きはじめます。また、未熟な神経では多くの神経細胞は同時に興奮しやすい傾向がありますが、成熟した神経細胞は抑制的に選択的に働くことができるようになります。 運藤発達を促す際にはいっきに難しい課題に挑戦して失敗を繰り返しも効果的ではありません。成功できそうな課題を探す時に運動発達の法則を思い出してみてください。  

脳性麻痺 失調型

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  脳性麻痺のタイプに失調型というのがあります。小脳システムの障害だといわれています。理学療法の教科書では痙直型、アテトーゼ型に比べて記載が少ないことが多く臨床像がわからないPTも多いようです。 症状として協調運動の障害、バランスの障害があります。手先が震えたり、姿勢を保つことが苦手です。動きがゆっくりと書かれている教科書もあります。確かに歩行の時など支持基底面を広げてバランスを代償してゆっくり歩く子もいますが、中には倒れこむようにスピードを出し過ぎて歩くような子もいます。 最近は小脳システムの障害は運動の予測や学習に問題がでるといわれています。倒れこむように歩く子どもの場合は、どの程度スピードで歩き出すと良いかの予測が難しい子どもです。 その子の歩行練習プログラムはただ目的地まで歩くという課題にするよりも、目的地まで歩いた後、止まってそこで積み木を積むという課題にした方がと動き出しのスピードを制限して歩く練習になります。 バランス反応が苦手、運動結果の予測が悪い、同じ失敗を繰り返すなどの症状は多くの小脳システム障害の子にもみられます。ただ、子どもによって苦手さの度合いは色々です。その子の苦手さの状況を評価した上で、その子合わせたプログラムを検討しましょう。

赤ちゃんの運動発達と脳の発達

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 赤ちゃんの運動発達は頭尾の原則という順序性がいわれます。 首がすわる、お座りができるようになる、立てるようにようになるという順序性です。 なぜこのような順序性がみられるのでしょうか。 実は生まれたての赤ちゃんの中枢神経はすべての部分が活動しているわけではありません。 生まれて2ヵ月くらいまでは脊髄は活動していますが、脳幹から大脳皮質は十分には活動していません。4ヵ月くらいになると脳幹が働きが活発になります。10ヵ月くらいから大脳皮質の活動もかなり活発になってきます。 大脳皮質運動野の支配領域を示す図 大脳皮質の中でも神経の発達は下から上に進み、結果運動の発達は神経の支配領域の関係から上から下(頭尾方向へ)進みます。 神経の運動のパターンも多様になり、座位や立位など色々な姿勢で安定していられるようになります。上下肢においては多様な関節運動の組み合わせができるようになり、巧緻性が増します。

運動発達 お座りの力をつける

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お座りの力をつける遊びについて考えてみます。 お座りの時に背中がしっかり伸びてこなかったり、時々後ろや横に倒れてしまうことがあるようなお子さん行うといいでしょう。 上の絵のようにお母さんの大腿の上にこどもを座らせて、上下にリズミカルに揺すったり、左右に傾けたりして遊びます。短い歌と合わせるて行うのもいいです。例えば、「おうまはみんなパッパカ走る、おもしろいな。」というくらいの長さの単純な歌です。 短い歌と合わせると赤ちゃんはそろそろ終わるな、次がはじまるなと予測がしやすくなり一層楽しくなります。楽しいこととセットで行うと身体の使い方が記憶に残りやすくなります。同じ歌でも「お馬はみんなパッパカ走る、パッパカ走る、パッパカ走る、お馬はみんなパッパカ走るおもしろいな。」というように長く歌い過ぎると赤ちゃんは始まりと終わりを意識できないくてもりあがらないません。その子の記憶容量に合う歌の長さがいいのです。 又、なんで赤ちゃんを上下に揺らしたり、左右に傾けたりするといいのでしょうか。頭の動きを感知する前庭感覚や筋肉の収縮を感知する固有感覚が脳に伝わるからです。これらの感覚は体幹の筋肉の収縮を引き出すような働きとつながります。このような働きをバランスといいます。 最後にもう一つだけこの遊びのコツをお伝えします。赤ちゃんのおへそを少し前につきだすように介助して下さい。背中が軽く伸びた状態にした方が体幹の筋肉が働きやすくなります。  

精神運動発達遅滞 

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 何らかの原因で知的な発達と運動発達が遅い子ども達を精神運動発達遅滞と言います。原因は特にわからない場合も多くあります。 赤ちゃんの運動の発達が遅いので這い這いを促す方法などをお母さんに伝えて下さいと医師から指示があります。 理学療法士はその子の行動や運動を評価して這い這いをしないのか評価をします。評価の項目は健康面、母子関係、筋緊張、バランス反応、行動の発達などです。 栄養が悪かったり、何らかの疾患があると運動の発達が遅れることがあります。母子関係が安定しない場合も影響が出る場合があります。その場合はまずそちらの対応を医師や保健師さんにしてもらいます。 筋緊張やバランス反応の評価では感覚運動神経の成熟の度合いがわかります。脊髄、脳幹、大脳皮質感覚運動野の成熟状態が結果に影響します。運動の発達には頭尾の法則や中枢から抹消へなどという運動発達部位の変化の順序性があるので、その子どもの発達に適した運動を処方します。 又、行動面の発達評価も欠かせません。ずり這いがでてくるのは教科書的な発達では7~8ヵ月くらいです。この頃の赤ちゃんには人見知りがではじます。玩具を容器にいれたりもはじまります。これは赤ちゃんが自分で頭のなかでお母さんのイメージや玩具が容器に入った時のイメージを思い浮かべられるようになってきたことを示します。見えているものに手を伸ばすのは距離が短いのでイメージを思い浮かべられなくてもできますが、数メートル先の物にずり這いで近づくためにはある程度頭の中でイメージを思い浮かべることができる必要があります。これは想起といい記憶が意識的に思い浮かべられるようになったことを示します。脳では前頭前野の活動が始まってきている状態です。感覚運動の繰り返し遊びの段階か、少し目的を意識できるようになっているかで対応方法は変わります。 「どこに原因があるか、今できていることは何か、少し配慮すればできそうなことは何か。」を考えることが大切だと思います。 赤ちゃんを取り巻く家庭はとても敏感で傷つき易いものです。理学療法士は運動発達を促す役割ですが、本質的には子どもと家族を支援する立場であることも忘れてはいけないと思います。

ダウン症のある子ども 理学療法

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  ダウン症ある子どもとそのお母さんかかわる時、理学療法士は子どもが乳幼児期ならば運動発達の支援や靴の助言をしたりします。学齢期ならばスポーツについて相談を受けるかもしれません。大人の方だと健康維持のための生活習慣について相談をうけるかもしません。 子どもは低緊張(筋肉の張りが弱い)があり乳幼児期に運動発達がゆっくりとなる場合が多くなります。理学療法士はその時々に適した次の運動の目標を伝え、家庭での運動遊びの方法やお部屋や玩具など環境面への配慮も伝えます。 理学療法士がその際に注意することは子どもの全体像をみることと、ご家族のお考えやご心配をしっかりと聞くことだと思います。 子どもの全体像をみるとは ①運動発達のみでなく、認知やコミュニケーションの発達も含めて理解すること ②合併症の状況を理解すること  ③子どもの年齢を考慮すること の3点です。 ダウン症は22番目の染色体の本数が通常2本のところが、3本になっていることによる障害です。染色体は身体の設計図ですので症状として心臓や消化器系の問題をもっていたり、ウエスト症候群や環軸椎の不安定性をもっていたりします。このことは運動の発達や運動の指導内容、ご家族の心配事に影響を与えてくるのでしっかりと状況を把握しておきましょう。 新人理学療法士がダウン症のある子どもと家族の全体像を知るのに一般社団法人ヨコハマプロジェクトが作成した「ダウン症のあるくらし」という冊子がとてもわかりやすいと思います。綺麗でかわいい冊子です。ヨコハマプロジェクトのホームページからも入手できるようですので下にリンクをはっておきます。 ヨコハマプロジェクト

脳性麻痺を持った子どもへの運動療法の考え方

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  脳性麻痺を持った子どもへの運動療法の目的は主に次の3つと考えています。 ①多様な感覚運動経験を与えること 脳性麻痺を持った子どもでは運動のパターンが限られていて、一人では経験できない感覚運動経験があります。感覚運動経験を多様にすることは一つの大きな目的と思います。特に乳児期~幼児期初期には重要になります。 ②生活に必要な機能を獲得させること 移動・姿勢変換・姿勢保持その他日常生活に必要な機能を獲得させます。幼児期後期からは生活に必要な機能の獲得にも目を向けることが多くなってきます。もちろん学齢期以降も必要なアプローチです。年齢が高くなれば代替手段も含めてその子どもの可能性を広げていかなければなりません。 ③関節や筋肉の管理 脳性麻痺を持ったこどもでは、筋肉が短縮したり、関節可動域が狭くなる、関節が脱臼するなど骨・関節・筋に生じる2次的な問題を最小限にとどめることが必要なります。特に学齢期以降身長が伸びると動かしていない筋肉の成長が追い付かなくなり変形拘縮は進む傾向があるので注意が必要です。 脳性麻痺を持った子どもの臨床像は複雑で、障害を持った生活期間が長いため、支援のための評価が難しい部分があります。個々の子どもに合ったオーダーメイドの運動療法プログラムつくるためには最低限以下の基礎情報は必要になります。 ①年齢 ②麻痺のタイプ (アテトーゼ型・痙直型・失調型・早産低出生体重児) ③麻痺の分布 (片麻痺・両麻痺・四肢麻痺) ④粗大運動能力分類(GMFCS) ⑤合併症(知的発達・感覚障害・てんかん・自閉症スペクトラムなど) ⑥生活環境 ⑦家族、本人の希望 最後に運動療法は薬物療法・手術療法・装具療法と合わせて使っていくことがより効果的です。