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脳性麻痺 アテトーゼ型orジスキネティック型?

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 脳性麻痺の分類について私自身もアテトーゼ型と言ったりジスキネッティック型と言ったりしていて特に若い理学療法士の方は混乱されているかもしれません。 日本理学療法士協会では2011年に脳性麻痺理学療法ガイドライン第1版を作成していて、その中では筋緊張による脳性麻痺の分類についてsurveillance of cerebral palsy in Europe(SCPE)*による脳性麻痺のタイプの分類を推奨しています。 surveillance of cerebral palsy in Europe(SCPE)*による脳性麻痺のタイプの分類の中ではアテトーゼ型はジスキネティック型という名称で記載されています。 それ以前はアテトーゼ型という名称が多く使われていたので私自身がその方が理解しやすいと感じてしまいブログの中でアテトーゼと書いていることが多いと思います。ジスキネッティック型のことです。 ジスキネッティック型には下位の分類があって、ジストニック型と舞踏様アテトーゼ型にわかれています。ジストニック型は以前からジストニックと呼ばれていました。筋緊張が低緊張から過緊張まで同様するタイプで、過緊張のときには全身性にそり返りのパターンを示すタイプです。舞踏様アテトーゼ型は以前からその用語はあったのですが、純粋型アテトーゼとはわけて使っていたりしました。現在舞踏様アテトーゼ型という場合は筋緊張が低緊張の中で動揺し動きが過剰であればすべて舞踏様アテトーゼに分類するようです。 若いセラピストや学生の方に伝えたいのはジスキネッティック型の脳性麻痺は2011年以降とそれ以前で理学療法士の多くが使っていたタイプの名称が違っていた歴史があります。その点もふまえて文献など読んでいくといいと思います。 こどもリハビリ相談

脳性麻痺 失調型とアテトーゼ型ヒョレアタイプ

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脳性麻痺の失調型とアテトーゼ型ヒョレアタイプは運動だけをみて区別がつきにくい場合があります。 失調型は小脳ネットワークの機能不全、アテトーゼヒョレア型は大脳基底核ネットワークの機能不全が原因といわれています。小脳も大脳基底核も運動を目的的・効率的に遂行できるように調整する機能を持っています。大脳皮質やその他様々な領域と情報を交換して運動を調整しているという点でも似ています。どちらもタイプの子どもも基本の筋緊張が低く、その中で筋緊張の動揺が見られ、主動筋拮抗筋同時収縮が得られにくい点も似ているので区別がつきにくいのだと思います。 ただ、筋緊張の動揺や不随意運動の量が失調型の方がアテトーゼ型ヒョレアタイプに比べて小さいと思います。又、失調型は体性感覚情報のフィードバックによって学習されていくフィードフォワード制御に問題があると言われています。運動に先立っておこる無意識的な筋活動でわずかな拮抗筋の収縮の弱さや、タイミングの遅れがあり、結果企図振戦やバランス障害が生じているといわれています。 又、身体の捻じれや非対称というようなパターンはアテトーゼ型の子の方に見られやすい特徴です。 失調型の子どもにバランスや移動の練習をする時には関節への圧迫刺激を加えたり、重りを使うなどして体性感覚情報を強めに入力したり、ゆっくりと運動を開始することを子どもに意識させたて過剰な飛び出しを防いだり、このPTは絶対に転倒をさせないという信頼関係を作ることで転倒の恐怖感を抱かせないなどの配慮をします。 アテトーゼ型では最初は両上肢に体重負荷をしながら左右対称な姿勢を保持させて姿勢保持や筋の同時収縮を高めるように配慮し、姿勢安定を維持しながらその子に必要な機能的な活動を練習するようにします。  

脳性麻痺 痙直型とアテトーゼ型(ディストニックタイプ)の違い

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上の絵は痙直型四肢麻痺を下の絵はアテトーゼ型(ディストニックタイプ)を描いています。 どちらの子どもも「この子は筋緊張が高くて困ります」というように言われることがあります。でも全く同じ現象なのでしょうか。同じ対応でいいのでしょうか。 筋緊張の面から言えば、ずっと過緊張傾向が続くのは痙直型です。痙直型でも身体の一部の筋肉に低緊張を持っていますが、その筋肉はいつも低緊張の傾向です。一方同じ筋肉の中に一時的には過緊張でも、急に低緊張を示すのがディストニックタイプです。 主動筋と拮抗筋の収縮の関係でいうと、主動筋と拮抗筋が同時に過緊張を示していて関節運動がでにくいのが痙直型、主動筋のみ過緊張でその時拮抗筋は完全に低緊張になり、関節運動の最終域で運同パターンがきりかえられずに過緊張に固まってしまうのがアテトーゼ型ディストニックタイプです。 痙直型の運動面へのアプローチは関節の運動経験を促して、バランスや移動につなげたり、変形拘縮を予防したりします。一方アテトーゼ型では主動筋・拮抗筋を同時に働かせて姿勢を安定させるような経験を促したり、変形拘縮を予防します。二つのタイプでは経験させたい運動の質に違いがあります。

脳性麻痺 ディストニックタイプ 股関節を深く曲げた座位

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脳性麻痺のディストニックタイプの子どもに座位を練習している絵です。実際は最初は子どもの横にセラピストがすわって肩甲帯や胸骨部に自身の手をふれて伸展をコントロールしている場合が多いです。なぜこんな姿勢で座位の練習をするのでしょうか。 ディストニックタイプの子どもの筋緊張の特徴は ①低緊張から過緊張に動揺する ②非対称性緊張性頸反射や緊張性迷路反射などの影響から捻じれを伴う全身性のそり返りのパターンが生じやすい ③伸筋群の活動がはじまると拮抗筋である屈筋群に収縮がみられないため最終域まで伸展が継続して途中で止めたり、運動方向を切り替えることができない ④伸筋群の活動が停止すると低緊張が生じて抗重力姿勢が保てなくなる などがあげられます。 セラピストは子どもに絵のような姿勢をとらせることで過剰な伸筋群の活動を抑えながらも抗重力姿勢を保持させて、かつ対照的な姿勢を経験させることができると考えています。結果として両眼視ができやすくなったり、手が使いやすくなることを導き出せれば経験不足による二次障害を軽減できるのではないかと考えます。

染色体異常

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  子どものリハビリテーションの対象者の中には染色体異常による疾患を持った子ども達もいます。染色体異常とは何かについて基本的な知識を持っていることは大切です。 人間は細胞の中に23対、46本の染色体を持っています。染色体の中には数百から数千個の遺伝子が入っています。 染色体異常は数の異常と構造の異常があります。数の異常には1本多いトリソミー、2本多いテトラソミー、1本少ないモノソミーがあります。23対ある染色体のどれにもおこりますが21トリソミー(ダウン症)、18トリソミーの診断がついたお子さんは理学療法の対象になることが多くみられます。 染色体異常の子どもの症状は複数を同時にもっています。異常のある染色体の種類によって症状も違ってきますでの理学療法士として担当する場合は事前に成書などで勉強しておきましょう。 染色体異常は遺伝性疾患の一つです。(ちなみに遺伝性疾患は子孫に遺伝する疾患という意味ではありません。)遺伝性疾患には染色体異常・単一遺伝子疾患・多因子遺伝子疾患があります。国連科学委員会によると遺伝 疾患の種類は非常に多く、知られているもののみでも約2000種類以上あり、その自然発生率は出生あたり約10%(10人に1人)と推定されているそうです。 目の前にいるその子は たまたまそういう遺伝情報のありようをもっただけです。私たちの仲間です。できるだけ充実した人生を送れるように支援しましょう。

筋ジストロフィー症 デュシャンヌ型(歩行可能な時期のPT)

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筋ジストロフィー症の中では、デュシャンヌ型は男児出生3000~3500人に一人で比較的発症頻度が高い疾患です。筋繊維の変性、壊死が主病変で進行性です。筋力低下の進行状況によって理学療法の内容は変わってきます。 歩行可能な状況では変形拘縮の進行予防・歩行可能時期の延長・過剰な疲労を残さない運動量の助言・子どもや家族の心理的サポートなどが関わりの中心になります。 歩行可能時期の変形拘縮予防はストレッチで足関節を中心に行います。ホームプログラムが中心になるので、家族が毎日できるストレッチの方法の検討が必要です。市販のストレッチングボードの使用を勧める場合もあります。短下肢装具の使用を検討する場合もあります。 歩けるうちは歩くことが必要ですが、次の日に筋痛や筋疲労が残らない程度の運動量にすることが大切です。運動種目として水泳は推奨されています。しかし、本人や家族の希望を丁寧に聞き取ることも重要です。特別な筋力強化のトレーニングはあまり行いません。 小学校は本人にとって友達との関係を作る重要な場です。この時期は親中心の人間関係から仲間中心に変化していく時期で本人にとっても小学校は心理的に重要な位置を占めます。学校でどのような生活を送っているのかしっかり聞き取りをして、場合によっては学校との連携も考えましょう。

重症心身障害児 無理なく関節を動かす

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  重症心身障害児の関節を無理のない方法で動かすことは、呼吸の改善や衣服の着脱などを楽にするので生活の質を向上させることにつながります。しかし、筋肉の緊張が強い場合には無理な力をいれて行うと筋肉を傷めたり最悪骨折などということもあります。 無理のない関節運動の促すためにはどういう工夫があるのでしょうか。 ①安定していて、支持基底面が広い姿勢で行う:人間は姿勢が不安定になると姿勢を保持しようとする働きが無意識に生じます。特に痙直型の子どもはそういう無意識の保持する神経反応が過剰になっている状態です。その子の神経が姿勢安定の反応を起こし過ぎないようにしましょう。座位よりは臥位で行う方が支持基底面は広くなります。さらに枕やクッションなども利用し安定した姿勢を準備しましょう。 ②呼吸が安定する姿勢をつくる:これもストレッチ前向きの準備ですが呼吸がうまくできないと、何とか呼吸をしようと筋肉に力がはいりやすくなります。楽に呼吸ができる姿勢をさがしましょう。 ③四肢のパターンを考えて動かしやすい方向から動かしてみる:最初の絵の子どもを下肢を動かすことを考えてみます。この子どもの下肢は内股で交差しています。これを運動学の用語でいうと股関節が屈曲・内転・内旋しているといいいます。この股関節を開いてあげるということは運動学用語では股関節を伸展・外転・外旋方向に動かすということになります。例えばそれを一度におこなわず外旋に少し動かし、次に外転に動かし、さらに伸展に動かすと一度に3方向合成した方向に動かすよりも負担なくできるかもしれません。 ④関節の動かす時はゆっくりとした速度で動かす:痙直型の子どもの筋肉は早くひっぱられると縮む性質が強く、ゆっくりとした伸長には伸ばされやすいという神経の特性をもっています。ゆっくりと動かしましょう。 ⑤全身の状態を見ながら動かしましょう:重症心身障害の子どもは不快でも表現が小さいかもしれません。表情・顔色なども表現としてしっかり観察すれば無理なく関節を動かすことができるかもしれません。