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子どものリハ室 環境

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  小さい子どもはすべり台が好きです。 何故でしょう。 すべり台には次のような特性があります。 ①色々な感覚がはいります 視覚・前提感覚・固有感覚 ②色々な運動を組み合わせて使います のぼる・しゃがむ・すべる ③はじまりと終わりがわかりやすい はじめに段をのぼる すべって終わり このような経験特性は発達途上の脳の様々な神経ネットワークを刺激します。小さい子どもは自分の神経ネットワークが刺激されることを好みます。神経ネットワークの形成が生存に役立つからでしょう。 リハ室にすべり台が必須だということはありませんが、小さい子どもにとってリハ室という名前は理解できていないので、自分の存在している場所の一つとしてとらえています。そこで起こる直接的な体験との関係がその部屋に対するその子どもラベルということになります。自分の発達にあっていて深い経験ができる場所は子どもにとって楽しい場所だということになります。 話がとぶようで恐縮ですが、厚生労働省が作成している保育所保育指針というものがあります。小さい子どもの発達を保証するための多様な観点から書かれていてわかりやすいので、新人の医学的リハ関係者も一読をお勧めします。 保育所保育指針の中で保育所の環境については以下のように書かれています。 保育の環境  保育の環境には、保育士等や子どもなどの人的環境、施設や遊具などの物的環境、更には自然 や社会の事象などがある。保育所は、こうした人、物、場などの環境が相互に関連し合い、子ど もの生活が豊かなものとなるよう、次の事項に留意しつつ、計画的に環境を構成し、工夫して保 育しなければならない。 ア 子ども自らが環境に関わり、自発的に活動し、様々な経験を積んでいくことができるよう配 慮すること。 イ 子どもの活動が豊かに展開されるよう、保育所の設備や環境を整え、保育所の保健的環境や 安全の確保などに努めること。 医学的リハであっても最終目的は全人的な発達を促すことですので、実施する場が子どもにとって安全で楽しい環境になるような配慮は大切だと思います。 こどもリハビリ相談

乳幼児は不安になりやすい

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乳幼児と付き合うコツの一つは子どもを安心させることではないでしょうか。 小さい子どもは遊んでくれる人、面白い人も好きですが、安心できないと楽しめません。 なぜ乳幼児は不安になりやすいのでしょうか。一人では生きていけない年齢ですから、危険はすぐに親に伝えなければいけないという生存上の理由もあるかもしれません。大脳辺縁系による情動活動を抑えるような神経の活動が弱いということもあります。(大脳皮質前頭前野の活動が発達途上だったり、同じく不安を抑制するセロトニン系神経の活動が発達途上だったりという脳の機能・構造的な原因があります。) 私は男性で高齢のセラピストですから、小さい子を不安にさせる素質があふれています。なので最初はすぐに接近しすぎない、目を合わせすぎないなど気をつけています。安心のもとはお母さんですから、お母さんに抱っこしていてもらうている状態から始めることも多いです。少し安心の雰囲気がでてきたら本人が大好きな玩具を提供することもあります、本人が玩具に集中できるとその時は不安が軽減するからです。 とにかく、セラピストは子どもが不安を感じているのかどうかにアンテナをはりながら、ゆっくりと少しずつすすめるとうまくいくと思います。(たまにはうまくいかないこともありますがその時は静かに状況を受け入れましょう。) こどもリハビリ相談  

胎児期からの運動発達

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  胎児期からの見られる運動は大きく3つに分類できます。 ①胎児期に見られて新生児期から乳児期に消失するもの:   振戦など ②胎児期から見られて生涯継続するもの: 呼吸様運動、眼球運動、吸啜運動など ③胎児期に見られ行動が新生児期に一旦消失し、再び出現するもの:  手ー口接触、キッキングなど 新生児期以降の運動にみられる頭尾の法則は胎児期まで含めて考えると成立しないといわれています。新生児期以降は大脳皮質も含めた神経ネットワークの再構成が行われること、子宮内の羊水のある状況と重力がよりかかる子宮外環境との違いにも原因があると考えられるようです。 頭尾方向への運動発達の原則は、生後の運動発達の範囲ではある程度成立しますので、支援プログラムの検討際には利用しても構わないと思っています。特に家族への説明の際などには原則が単純なのでわかってもらいやすいということがあります。 こどもリハビリ相談

予後を伝える時に注意すること

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  予後というのは将来その子がどんな状態になるのかの予測のことです。セラピストは地域で家族や関係者と話し合いをもつことがあります。一般にはそういう会議の場で障害の専門家として期待されることは予後と具体的な対応を伝える事と言われています。 ただ、専門家とされる人の発言には影響力があるので注意が必要です。例えば他の施設との会議の場で理学療法士が「この子は歩けるようにはなりません、歩けるようになることを期待して関わるのは適切ではありません。」とだけ伝えたらどうでしょうか。介助すれば立つことができる子なのに施設の職員さんは立たせる事もやめてしまうかもしれません。「もしかして脚の関節に悪い影響があるのかもしれない。」と勘違いしてしまうかもしれません。 予後を伝える時には「できるようになること」「できるようになったらこんなに良いことが起きるよということ」をセットにして伝えてほしいのです。どんな素敵な未来があるのかを伝えるために専門家がいるのではないでしょうか。 手をつないで歩けるようになったら、その子と手をつないで歩いてくれる大人が増えるのです。色々な人と手をつないで歩けるようになるのです。その事がどれだけ大きな発達なのかを語れる人になってほしいのです。  もちろん子どもの心や身体にとって無理のある練習を続けているならば中止しなければなりません。それも専門家として大切な事です。ただ、できないことだけを言っているならば片手落ちだと思うのです。 振り返れば私たちにも「できないこと」は山ほどあって、それだけをわざわざ言われても辛いというのは子どもにとっても同じことです。 こどもリハビリ相談

小児と成人の脳性運動障害の違い 図で考える

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  歩く時使用する感覚運動神経の活動は循環することにより適応的な歩行活動が可能になっています。 成人の脳卒中などで運動障害が起きた場合は完成されたサークルの一部が損傷されて歩行機能の低下が起きているイメージです。 脳性麻痺などで生まれた時から運動障害がある場合は発達が未熟でサークルとして完成していません。どんな子どもも生まれてすぐに歩いている子どもはいないので、感覚運動のサークルはつながっていません。健常児であれば加齢によって感覚運動サークルはつながってきます。脳性麻痺児であっても発達によってサークルが完成してきますが、一部困難性を残します。 小児のリハでは発達を促すこと、障害の回復を促すこと、未経験などによる2次障害を減らすことの3つの側面が検討されます。 感覚運動のサークルをつくり自分の身体の状況にあった頭の中の神経の地図をつくるために、小児の場合は自分で環境を捉え、自発的に歩行開始し、成功して覚えるというような側面も考える必要があります。そのために使われる神経の機能もサークルをつなぐために必要だからです。 こどもリハビリ相談

抱っこの仕方を伝える

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 絵はそり返りの強い子どもを抱っこしているところです。子どもが安心して抱っこされるような方法を親や支援者に伝えることがあります。でもなかなかうまく伝えるのは難しいものです。 難しさの原因は何でしょうか。一つは子どもの身体に関してのイメージがセラピストと親で違いがある場合があります。そり返りやすい子ども、丸まりやすい子ども、グニャグニャの子どもその子はどうして抱きにくいのかをわかりやすい言葉で伝えましょう。又、親が抱きやすく、子ども抱かれやすい方法で抱くと何がいいのかのイメージが共有されていないこともあります。呼吸が良くなる、体温が上がらない、疲労しない、安心するなどその抱っこをした結果どんないいことがあるのかもイメージが共有される必要があります。 二つ目はセラピストと親や支援者の体格の違いがあります。セラピストが目の前のこういう風に抱っこしましょうと見せるのは一見わかりやすいのですが、実際に支援者がやってみるとセラピストと手の長さがたりなかったり、足の太さが違っていたりして中々うまくいきません。目の前でみせればできるというわけではないようです。 以上の二つの点を考慮して、抱っこの仕方を伝える時には次のように配慮しています。 ①子どもの身体特徴を伝える②安定した抱っこのメリットを伝える③抱き方のポイントを伝える 例えば頭と肩は前に胸は後ろに、股関節は曲げてなど④一例をセラピストがやって見せる⑤やれそうな方法で支援者自身にやってもらいやりやすい方法を探す こどもリハビリ相談

小児期の脳性運動障害 成人との違いなど

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感覚情報を受け取り、脳内で多様なネットワークで計算して運動指令を出すことを繰り返して行動が変化することを学習といいます。使用できるネットワークが多ければより適応的な運動ができるといえるでしょう。 脳にダメージを受けて運動に障害が出る時はこの計算過程に問題が生じているといえます。 一方に発達という現象があります。乳児から幼児・学童へと年齢が高くなると使用できるネットワークの数が増えたりや情報処理のスピードが速くなります。発達に伴う脳の可塑性は脳内の運動指令に関与する部位だけでなく感覚情報の分析や行動企画、情緒に関与する部位にも生じます。部位によって時期の速い遅いはありますが、脳の発達は脳の全体で生じます。 例えば自信であるとか、自主性や意欲ということについては発達の中で確立していきます。子どもの場合は特別な配慮が必要になります。自信については親御さんや身の回りの大人の称賛や子どもへの信頼が必要になります。そのようなことへの理解は自然に子育ての文化として親御さんは持っていますが、障害がある子どもの親としてのストレスや不安がそれを妨げてしますかもしれません。 歩く機能ということでも、過去に歩いた経験のある人と、一度もあるいたことない子どもでは運動のイメージということについて違いがあります。子どもは実際に歩行練習することがより重要になるといわれるのはそういうことかもしれません。 小児科医師、保育士や幼稚園教諭などは乳幼児期の子育てについて専門家としてより深い知識や技術をもっています。リハビリの専門家は障害やその回復についての知識や技術が高いでしょう。チームワークによって障害の回復と発達の保証は同時に目指すことが必要だと思います。 こどもリハビリ相談