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脳性麻痺 赤ちゃん 視覚機能の発達

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  脳性麻痺をもった赤ちゃんを育てる時に目を使いやすい環境に配慮する場合があります。具体的にはリラックスして対象的な姿勢をとったり、赤ちゃんが手を使いやすくなる姿勢や抱っこの方法を助言します。玩具を見やすい提示の仕方や視覚的に興味をひきやすい玩具について伝えたりすることもあります。 何故でそういうことをするのでしょうか。 脳の視覚に関連する細胞は生まれた時にすでにできあがっています。しかし、それらの細胞同士をつなぐ神経ネットワークは生後半年位の期間に急激につくられていきます。その際には色々なものを見たり、見たものを手で触ったりする経験が重要だと言われています。 一方の脳性麻痺を持った赤ちゃんは筋肉のコントロールの問題をもっています。目を動かすのは眼球についている筋肉です。眼球は頭部についているので頸部筋肉も関係してきます。頸部の筋肉は体幹に続くので体幹の筋肉も関係してきます。脳性麻痺を持ったこどもの中には頭部の正中位固定や空間での保持に困難さがあったり、眼球の選択的な運動に困難さがあるこどもがいます。 そこで脳性麻痺を持ったこどもの目が十分使えているかどうか評価し、助言や環境調整をする必要性がでてきます。 又、脳性麻痺を持った赤ちゃんの視覚の発達を評価する際には視覚機能・眼球運動と姿勢や上肢機能を関連付けて評価すると良いと思います。「いつでも注視が可能というわけではなくても、この姿勢をとらせれば注視ができる」というように潜在能力を見つけだすことができるかもしれません。 こどもリハビリ相談

歩きはじめ

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  歩きはじめのこどもは上肢のハイガードや下肢のワイドベースがみられます。歩幅は小さく体軸内回旋もみられません。 歩行がうまくいくための条件として、前進条件、安定条件、環境適応条件の3つを考えることがあります。歩きはじめの歩行は習熟した歩行に比べると安定条件の保障により多くを割いた歩き方といえるかもしれません。 歩くのが上手になったこどもは上肢がミドルやローガードなり、足の間隔も少しせまくなってきます。体軸内回旋もみられ、一歩の歩幅も少し大きくなります。神経の感覚運動ネットワークが発達し、同時に筋力も高くなってきたたためと考えられます。 屋内歩行が安定してきたこどもでも靴を履かせて外にでてみると、また上肢のを高く挙上して足幅もひろくなります。環境面の変化により安定条件や環境条件がより高いレベルで必要になったからといことができます。こどもは屋内を歩く時よりも短時間で疲れてしまいます。 歩きはじめたこどもには外遊びは神経ネットワークや筋力への良い刺激になります。外へいけないときは、体操マットの上をあるいたり、スロープを歩いたりするのも良い刺激になります。

こどもの実行(遂行)機能

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  就学前のこどもの発達を考える上で、運動機能(粗大・微細)・言語社会機能の発達とともに実行(遂行)機能の発達を考えることは大変重要です。 実行(遂行)機能は物事を計画し、順序立てて実行する機能をいいます。成人の高次脳機能障害では前頭葉の機能障害の際に生じるとされています。 赤ちゃんの場合は前頭前野は生後7~8か月から機能しだすと言われています。この時期の赤ちゃんに対する有名な実験に「A not B」課題というものがあります。発達心理学者のピアジェが著書に記述しています。Aの容器に鈴をいれて遊ばせた後、赤ちゃんの見ている前で鈴をBの容器に移し替えた時、8ヵ月くらいの赤ちゃんは再びAの容器に手を伸ばすという実験です。この現象が起きる理由としてピアジェは物の永続性に対する理解が不十分なために起こると考えましたが、現在ではその説は余り支持されなくなってきているようです。Aに入っている記憶とBに入っている記憶の適切な選択が困難というワーキングメモリーの未熟さを原因とする説や、Aの容器で遊んだという前の記憶を抑制することができないという抑制機能の未熟さを原因とする説などをとる専門家が多くなってきているようです。 いずれにしても前頭葉(特に前頭前野)の活動が生後8ヵ月くらいから活発になること、その後も様々な経験と脳の成長の相互作用で実行機能が発達していくこと、実行機能の未熟さが運動や行動の障害になっているこどもが多くいることを知っておくことは重要と思います。 障害を持っている幼児で「ドアをみたらあける」「バギーをみたら乗って帰る」など自分の記憶している行動パターンを抑制できないで怒っているこどもを時々みかけます。記憶抑制ができない子どもの場合はドアやバギーを最初から見えないようにしておくことで過去の記憶を抑制することができます。そうすると難なく別の活動に向かえたりします。ただ単に記憶が抑制できないだけでなく、情緒的な不安を強く伴って泣いている子どもの場合は時間をかけてリラックスしてもらう必要があります。 こどもリハビリ相談

脳性麻痺スペクトラム

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  スペクトル(spectrum) の意味はデジタル大辞泉によると「 1 可視光および紫外線・赤外線などを分光器で分解して波長の順に並べたもの。 2 複雑な組成をもつものを成分に分解し、量や強度の順に規則的に並べたもの。」だそうです。 自閉症スペクトラムという診断は現在一般的に使用されるようになっていますが、Shevellは2018年に脳性麻痺という診断を脳性麻痺スペクトラムにしてはどうかという提言をしています。 1) 脳性麻痺の運動機能障害は麻痺のタイプや分布、粗大運動能力の分類によってかなり多様性があることはご存知のことと思います。 運動機能障害以外の合併症も多様です。比較的新しい脳性麻痺の定義である2005 年の Executive Committee for the Definition of Cerebral Palsy では、「 脳性麻痺は運動と姿勢の発達が障がいされた一群をさす。その障がいは,胎児もし くは乳児(生後 1 歳以下)の発達途上の脳において生じた非進行性の病変に起因する もので,活動の制限を生じさせる。脳性麻痺の運動機能障害には, しばしば感覚,認 知,コミュニケーション,知覚,行動の障がいが伴い,時には痙攣発作がともなうこ とがある。 」としていて運動機能障害以外に多くの合併症があることをわざわざ記載しています。 2) 脳性麻痺の原因についてはこれまでは出生前後の感染や、低酸素などが大部分とされていましたが、一部に遺伝子や染色体の構造変化による要因があることもわかってきました。 脳性麻痺は脳性麻痺スペクトラムという診断が提言されるほど多様な原因や状態像を示す診断です。この事を意識することで、より個々のニーズにあった支援の方法が選択されることにつながると良いと思います。 参考文献 1)Shevell M. Cerebral palsy to cerebral palsy spectrum disorder: time for a name change? Neurology 2018. [Epub ahead of print] 2)Bax M, Goldstein M, Rosenbaum P, et al.: Proposed definition and classification of cerebral palsy, Apri

脳性麻痺 アテトーゼ型orジスキネティック型?

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 脳性麻痺の分類について私自身もアテトーゼ型と言ったりジスキネッティック型と言ったりしていて特に若い理学療法士の方は混乱されているかもしれません。 日本理学療法士協会では2011年に脳性麻痺理学療法ガイドライン第1版を作成していて、その中では筋緊張による脳性麻痺の分類についてsurveillance of cerebral palsy in Europe(SCPE)*による脳性麻痺のタイプの分類を推奨しています。 surveillance of cerebral palsy in Europe(SCPE)*による脳性麻痺のタイプの分類の中ではアテトーゼ型はジスキネティック型という名称で記載されています。 それ以前はアテトーゼ型という名称が多く使われていたので私自身がその方が理解しやすいと感じてしまいブログの中でアテトーゼと書いていることが多いと思います。ジスキネッティック型のことです。 ジスキネッティック型には下位の分類があって、ジストニック型と舞踏様アテトーゼ型にわかれています。ジストニック型は以前からジストニックと呼ばれていました。筋緊張が低緊張から過緊張まで同様するタイプで、過緊張のときには全身性にそり返りのパターンを示すタイプです。舞踏様アテトーゼ型は以前からその用語はあったのですが、純粋型アテトーゼとはわけて使っていたりしました。現在舞踏様アテトーゼ型という場合は筋緊張が低緊張の中で動揺し動きが過剰であればすべて舞踏様アテトーゼに分類するようです。 若いセラピストや学生の方に伝えたいのはジスキネッティック型の脳性麻痺は2011年以降とそれ以前で理学療法士の多くが使っていたタイプの名称が違っていた歴史があります。その点もふまえて文献など読んでいくといいと思います。 こどもリハビリ相談

脳性麻痺 失調型とアテトーゼ型ヒョレアタイプ

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脳性麻痺の失調型とアテトーゼ型ヒョレアタイプは運動だけをみて区別がつきにくい場合があります。 失調型は小脳ネットワークの機能不全、アテトーゼヒョレア型は大脳基底核ネットワークの機能不全が原因といわれています。小脳も大脳基底核も運動を目的的・効率的に遂行できるように調整する機能を持っています。大脳皮質やその他様々な領域と情報を交換して運動を調整しているという点でも似ています。どちらもタイプの子どもも基本の筋緊張が低く、その中で筋緊張の動揺が見られ、主動筋拮抗筋同時収縮が得られにくい点も似ているので区別がつきにくいのだと思います。 ただ、筋緊張の動揺や不随意運動の量が失調型の方がアテトーゼ型ヒョレアタイプに比べて小さいと思います。又、失調型は体性感覚情報のフィードバックによって学習されていくフィードフォワード制御に問題があると言われています。運動に先立っておこる無意識的な筋活動でわずかな拮抗筋の収縮の弱さや、タイミングの遅れがあり、結果企図振戦やバランス障害が生じているといわれています。 又、身体の捻じれや非対称というようなパターンはアテトーゼ型の子の方に見られやすい特徴です。 失調型の子どもにバランスや移動の練習をする時には関節への圧迫刺激を加えたり、重りを使うなどして体性感覚情報を強めに入力したり、ゆっくりと運動を開始することを子どもに意識させたて過剰な飛び出しを防いだり、このPTは絶対に転倒をさせないという信頼関係を作ることで転倒の恐怖感を抱かせないなどの配慮をします。 アテトーゼ型では最初は両上肢に体重負荷をしながら左右対称な姿勢を保持させて姿勢保持や筋の同時収縮を高めるように配慮し、姿勢安定を維持しながらその子に必要な機能的な活動を練習するようにします。  

脳性麻痺 痙直型とアテトーゼ型(ディストニックタイプ)の違い

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上の絵は痙直型四肢麻痺を下の絵はアテトーゼ型(ディストニックタイプ)を描いています。 どちらの子どもも「この子は筋緊張が高くて困ります」というように言われることがあります。でも全く同じ現象なのでしょうか。同じ対応でいいのでしょうか。 筋緊張の面から言えば、ずっと過緊張傾向が続くのは痙直型です。痙直型でも身体の一部の筋肉に低緊張を持っていますが、その筋肉はいつも低緊張の傾向です。一方同じ筋肉の中に一時的には過緊張でも、急に低緊張を示すのがディストニックタイプです。 主動筋と拮抗筋の収縮の関係でいうと、主動筋と拮抗筋が同時に過緊張を示していて関節運動がでにくいのが痙直型、主動筋のみ過緊張でその時拮抗筋は完全に低緊張になり、関節運動の最終域で運同パターンがきりかえられずに過緊張に固まってしまうのがアテトーゼ型ディストニックタイプです。 痙直型の運動面へのアプローチは関節の運動経験を促して、バランスや移動につなげたり、変形拘縮を予防したりします。一方アテトーゼ型では主動筋・拮抗筋を同時に働かせて姿勢を安定させるような経験を促したり、変形拘縮を予防します。二つのタイプでは経験させたい運動の質に違いがあります。