投稿

運動発達② 乳児の姿勢 生後3カ月 正中位指向

イメージ
  生後3カ月の赤ちゃんの姿勢の特徴の一つに「正中位指向」ということがあります。「正中位」という言葉は真ん中という意味です。「指向」というのはある方向に向かうということです。英語では「Midline orientation」といいます。 新生児の頃に比べて3カ月の赤ちゃんは目が覚めていている時に頭が真ん中にあることが増えてきます。上肢・下肢も真ん中に向かう運動が見られることが多くなります。もちろん興味があるものが右側にあれば頭や手がそちら向かっていきますが、興味が去れば真ん中に近いところに頭や手足が向かっていく傾向がでてきます。 このような姿勢が多くなるのは、重力と身体の位置関係を視覚や触覚や固有感覚でとらえて無意識に姿勢を調整するという神経系の働きが発達したことを意味しています。別の言葉でいうと「感覚統合が発達した」「神経ネットワークが発達した」ということになります。 このような姿勢をとっている時の筋肉の活動は、頸部や上部体幹の伸筋群・屈筋群の両側性同時収縮や肩甲帯周囲筋の同時収縮がみられるようになります。自分の身体に興味を持ち、手と手を合わせたり、指をしゃぶるようなことも増えてきます。外界の興味のあるものを目で追う、手で触ろうとするなども増えてきます。 こどもリハかわせみ

運動発達① 乳児の姿勢 新生児期 

イメージ
月齢ごとに乳児の姿勢を細かく観察していくと発達に伴う筋活動の変化が理解できます。それは運動に障害がある子どもの筋活動にも共通することが多くあります。 生まれてすぐの赤ちゃんはまだ頭部や体幹を抗重力的にコントロールする能力が不十分です。安定して重力に抗して頭部をコントロールするためには首の前後左右の筋肉や肩の周りや胸郭にある筋肉を同時に活動させることが必要になります。首の座っていない新生児ではそれらの筋肉がまだ十分に使えていないので頭 部回旋・頚部軽度伸展・肩甲帯挙上・ 肋骨挙上位の姿勢が特徴的です。そして運動に障害をもったこ子どもにもよく似た頸部や体幹の姿勢をみることがあります。 下図のような沢山の筋肉(お腹側にも沢山の筋肉がある)が、同時に使えてくると重い頭を空間でコントロールできるようになってきます。 筋肉がより多く共同して使えるようになるためには神経ネットワークの発達が必要です。 こどもリハかわせみ    

子どもの運動学習 自発性

イメージ
子どもの運動学習を促す時に自発性が重要だといいます。 なぜ自発性が重要と言われるのでしょうか? 脳は環境によりよく適応するために働きます。 そのために脳の働きは環境の情報を感覚で脳に取り込んで処理をして運動を表出することが基本です。 子どもの頃は処理(運動)の際に利用できる記憶が少ない状態です。 処理の際に利用できる記憶を増やすためには、感覚運動のサークルを回す必要があります。自分で環境から情報を得てきて、何かやってみて、結果成功や失敗をすることによって新たな運動記憶が貯蔵されて運動が上手になります。 大人に指示されて新しい運動ができても運動学習にはなりますが、環境から自分で情報を得てくる力が育たないので十分に有効にその運動を使えるようになるのが難しくなります。大人に言われた時にはできるけれど、自分ではやろうとしないという状況になるかもしれません。 子どもの脳は運動だけが未熟ではありません。感覚情報を得たり、それを処理したり、感情と結び付けて記憶したりすることも発達の途上です。そんなわけで子どもの運動学習を促すときには自発性を考えることが重要なのです。 自発的な運動を引き出すためのアイデアは ①環境を子どもにとって興味深いものにすること:感覚情報が得やすく、適度に困難性があり、魅力がある環境を与えること ②子どもが動きだすのを待つこと ③子どもが動き出したら成功への手助けをすること 等があると思います。①②③のどこが苦手かは子どもによって違います。古典的な脳性麻痺をもった子ども(運動に関連する神経領域の損傷だけがある子)の場合は動きの種類が少ないので失敗が多くなりがちです。でも古典的な脳性麻痺をもった子どもというのは、実際には少なくて、①や②にも問題がある子どもが多いように感じています。 こどもリハかわせみ  

幼児期初期に転びやすい子 「何かできることないか」ときかれたら

イメージ
「うちの子歩きはじめたんだけど、よく転ぶんだ。何かできることないの。」と聞かれることがあります。 幼児期初期に歩きが不安定な子といっても、麻痺がある子、動きが速く注意が散漫で段差などに気づかずに転ぶ子、何となく姿勢がフラフラしていて不安的な子など色々タイプがあるので迂闊なことも言えません。話をきいて重い運動障害ではないことを確認できれば、「歩くのはもうちょっと待ってあげて、ハイハイなど今できる歩行以外の運動を沢山させましょう。」ということもあります。詳しく考えていることを言えば、「幼児期初期は神経ネットワークの形成が本当に急激なので、少しの月齢の違いで随分変化することがあるから、今はその子の神経ネットワークの形成状況に合わせた運動をすることで周りの大人は温かく見守りましょう。」というような考えです。 つま先立ちや扁平足など立った時の足の形に軽度の異常がある子はに「足裏のマッサージ」もいいですよと言う事もあります。歩く時にバランスをとるためには前庭感覚・視覚・足裏の固有感覚の3つの感覚が身体の状態を脳に伝える必要があります。特に足の形に異常がある子は足裏固有感覚の発達にマイナスの影響があるので「足裏のマッサージ」で筋肉や関節を動かして感覚を育てることは歩行バランスの改善につながると思うからです。 こどもリハかわせみ

こどもリハ 乳幼児期 環境調整

イメージ
  乳幼児期は子どもの脳の発達が著しい時期です。運動も行動も様々に変化していきます。そのため、大人の関心が子ども自身を変える発達支援に向くことが多くなりがちですが、子ども達の周りの環境を調整することにも目を向けましょう。本人にとって快適で楽しい環境の提供は障害をもった子ども達に経験や自信という宝物を与えることになるでしょう。 子ども達を変えることをでなく、周りの「ヒト」や「モノ」を変えることで障害を軽減することを環境調整といいます。ちなみに障害を考える時には「医学モデル」と「社会モデル」の二つの考え方があり、現在では「社会モデル」で考えることが中心になりました。これは本人の機能が変わることで障害を軽減する「医学的アプローチ」を否定するものではありません。必要に応じて「医学的アプローチ」を利用しながらも障害の本質は環境との相互作用にあるので社会の側を変えようとする考え方です。 乳幼児期の環境調整を考える時には「ヒト」「モノ」2つの領域で考えると良いでしょう。 「ヒト」環境の調整:子どもを変えるのではなく、周り人が態度をかえましょう。言葉だけでなく、その子の表情や態度も含めて本人からの発信や何らかの表現をみつけるようにしましょう。本人が今すでに表出している何かをもとにやり取りをしてみましょう。どんなことでも子どもの「ヒト」への興味感心が増えることは本当に大切なことです。 「モノ」環境の調整:周囲の環境や課題を子どもが行動しやすいものに変えましょう。落ち着きやすい環境、わかりやすい環境、自発的に関わりやすい環境をみつけましょう。運動障害をもった子どもの場合は自発的に関われる環境の工夫として移動補助具、各種スイッチ、姿勢保持具、おもちゃの選定などがあります。 こどもリハかわせみ

ダウン症をもった子どもへの支援 つかまり立ちからつたい歩きへ

イメージ
ダウン症をもった子どもが子どもがつかまり立ちを始めた時、よく見られる姿勢は絵のようにつま先が大きく外側を向いていて、足幅は広めで、足の小指側が浮くような姿勢です。 専門用語では股関節外転外旋位、足部回内(外反扁平)で立っているといいます。 どうしてこういう姿勢で立つのでしょうか。腹部の筋肉や股関節周り、足周りの筋肉の低緊張が影響しています。脚を開くような運動経験が多く、脚を閉じる方向の運動経験が少ないため脚の使い方に独特癖がついていることも原因です。 体幹や股関節、足部の筋肉が上手く使えないとバランスがとりにくいため、つたい歩きの開始が遅くなります。「つかまり立ちができたのに、なかなかつたい歩きをしないので心配。」というお母さんにはつかまり立ちの姿勢を助言します。 ①外側に向いているつま先を前方に向ける ②足幅が広すぎる時は肩幅くらいにする ③足の小指側が浮かないように床に軽く押つける 家では気が付いた時にやってみて下さいといいます。PTの時にはいつもやってみるようにします。 こうすると腹部や股関節周囲の筋肉が使いやすくなります。足全体で体重をうけると足裏の感覚も育ちます。少し経験を積み重ねると赤ちゃんがつたい歩きで動きたいと思った時自然と足がでやすくなります。 こどもリハかわせみ  

小児理学療法について

イメージ
 小児理学療法という言い方があります。 「小児」というのは医学用語だそうです。年齢としては小児科を診療を受ける年齢だそうで、明確な規定はないそうです。小児理学療法学の授業では子どもの特性を考慮して理学療法を実施するための知識や技術が教えられます。 重要な子どもの特性としてここでは2つあげてみたいと思います。 ①発達が急激な時期であること:発達は加齢に伴う心身の継続的な変化をさします。子ども時代は変化が大きい時期です。身体面として神経系、運動器系、内臓、ホルモン系など全身の器官が成長します。また、行動や社会性などの心理的な側面も変化します。 正常と言われる子ども達(正規分布の山の頂点近くにいる子ども達)の各年齢における特徴を勉強する事も大切です。その上で非常にユニークな障害を含めたその子なりの発達を考えるといいと思います。その子どもの現在の月齢や年齢を考慮することも大切です。 ②大人の支援を多く受けている時期であること:大人から個人的・社会的な物理的支援を受けているだけでなく、理解や信頼、寄り添い、励ましなどの言葉で表現されるような精神的な支援も必要とされる年代です。(もちろん年齢ごとにその内容は変化しますが)その子どもの身の回りにいる大人の行動や認識を理解し、必要に応じて支援したり、助言したりすることは重要です。理学療法士自身も障害を持った子どもの身近にいる大人の一人です、自分自身の考え方や行動ももう一度問い直してみましょう。 こどもリハビリ相談