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療育とは

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  宮田は『療育は「障害のある子どもを育てる特殊な技術」から「子どもたちそれぞれの育ちを支援できる手段」に成長することが求められている』と述べています。 「障害の治療」vs「障害は個性」ということと似ているのかもしれません。障害は受傷して最初のころは病気ですが、だんだんとそれは個性に変化していきます。治すのではなく、その子なりの方法を見つけ出すということになっていきます。 私自身は地域で子どもの理学療法をやってきたので、子ども達それぞれの育ちを支援しているということと自分の普段の仕事の方向性は一致している感覚があります。 治療なのか、教育なのかと言われると教育にかなり近い感覚かもしれません。自分の仕事は一人一人の個性を把握して、一人一人の長所を見つけ出して、一人一人の発達を支援するという仕事をしていると思っています。その感覚で仕事に当たった方が自分も楽しいし、うまくいくことが多いように思えるのです。 発達は様々な要因の関係性の中で起こるので、正直結果が予測できることばかりではありません。害にならないなら、益になりそうなことはとりあえずやってみる、無駄玉を投げることを恐れないし、かえってそれを楽しむというやり方もいいのではないでしょうか。 参考文献 宮田広善著 「子育てを支える療育」 2001 年 7 月初版 ぶどう社 こどもリハビリ相談

脳性麻痺の理学療法評価 麻痺の分布と粗大運動能力分類システム(GMFCS)

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  脳性麻痺の評価で麻痺の分布と粗大運動能力分類システムの結果にはある程度関係があります。 片麻痺のある子どもの将来的な移動能力は粗大運動能力分類システム(以下GMFCS)のⅠ~Ⅱの子どもが大部分ですので歩行による移動が獲得できる可能性が高いです。 両麻痺のある子どもはGMFCSでレベルⅠ~Ⅲに入る可能性があります。自走車いすでの移動になる場合もあります。 四肢麻痺のある子どもではGMFCSはレベルⅡ~Ⅴの可能性があり、その中でもⅣ~Ⅴの可能性がが大きくなります。GMFCSのⅣ・Ⅴは電動車いすもしくは介助での車いす移動です。 脳性麻痺の診断名を持っている子どもの症状は多様です。その子どもの個別性を明確にする評価を行い、関わりを考えていく必要があります。又、胎児期もしくは出生後早期の脳障害によるため障害を持ってから人生の年数が長くなり、成人期を見通すことの難しさもあります。 麻痺の分布・GMFCS・麻痺の種類などの情報を組み合わせて解釈することでリハプランにつながる有益な情報を得られます。 参考文献 中徹 : 脳性麻痺の理学療法 . 理学療法学 40 (4):302 ‐ 305.2013  

二分脊椎 仙髄レベル 足部変形

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二分脊椎は障害された脊髄のレベルで運動機能や変形拘縮の状態が違ってきます。移動能力についてはホッファーの分類、下肢の麻痺と変形についてはシェラードの分類の表を参考にして予後を考えるようにと理学療法士の学校では習います。 でも学校では色々な事をならうので習うことの中の一つですので、忘れてしまう人も多いのではないでしょうか。二分脊椎の子どもの整形外科治療をしているような病院に勤めていれば別ですが、特に仙髄レベルの麻痺については印象が薄いようです。しかし、足部変形の管理は案外大変です。 二分脊椎の変形は筋のインバランスで生じるといわれています。凹足(ハイアーチ)は足指の伸展筋力に比べて屈曲が優位な時に生じます。外反扁平は下腿三頭筋の筋力が弱い場合に生じます。歩いているので体重の負荷が変形をさらに助長します。ほとんど歩いて生活をしている子どもなので、装具があたりだしたらすぐに調整しなけば、傷や痛みにつながってしまいます。日常ストレッチをしたりして、変形の悪化防止に努めることも必要です。足の外側や内側にタコができたり、潰瘍ができたりするようだと手術治療の適応になります。 日常運動療法はしていても小学校にはいってから変形が進むことがあるので。やはり装具の作成・調整のできる病院などに日常通っていることは必要ですし、整形外科の手術のできる病院でも頻度は少なくても経過をみてもらっていると、いざという時の治療のバトンタッチがスムースにいくと思います。 こどもリハビリ相談  

脳性麻痺痙直型四肢麻痺 座位

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脳性麻痺で痙直型四肢麻痺を持った子どもの中には円背が強い子どもがいます。脊柱が屈曲しているだけでなく、肩甲骨が外側位置すると肩の付け根の位置が前方になります。骨盤が後ろに傾くため股関節が十分に屈曲しません。 このような姿勢をしていうることによるマイナス面は ①重心線が脊柱前方を通るため、将来頭部や体幹の重さにより脊柱屈曲が強まる危険がある ②背中が丸くなったり、肩甲骨が身体の外側に位置すると首や上肢の随意運動がしにくくなる ③股関節がしっかり曲がることが少ないと座位でお尻が前方にすべり座りにくい座位機能の低下につながる このようなマイナス面が大きくならないようにする対策として下の絵のように大人が介助して背中をのばしてあげる運動プログラムがあります。 その効果は ①座位の際の体重の関わる場所や、背中を伸ばす時に力をいれる筋肉本人がわかりやすくなる ②ストレッチ運動となって筋肉の短縮を予防する などがあります。 こどもリハビリ案内

運動の意欲

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運動の意欲ってなんだろう。 小さい大人しい子どもと付き合うと思います。 どうやったらこの子に運動の意欲がうまれるのかな? 自分は小さい頃どんな気持ちだったのかな? 雨上がりの道を長くつをはいて歩いた時の感じかなと思ったりします。 水たまりみつけると必ず入らずにはいられなかったあの気持ち。 どの水たまりも入ってみてそれほど違いはないのに。それでも深い水たまりはドキドキしたりした。大きな水たまりを見つけるとときめいたりした。 大人になった今は水たまりを見ても何も思わないのに。靴に水がはいらないようにしようとだけ思うのに。 大きな石があると上にたってみたかった。壁をみると上ってみたかった。 やりたいと思う気持ち、うずうずとする気持ち それが運動の意欲かな? こどもリハビリ相談  

脳障害に伴う運動の問題

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何らかの原因で脳に障害を持った子どもが運動に障害もつことがあります。「なぜ、すわれないのでしょうか?なぜ、歩けないのでしょうか?」という質問をうけることがあります。 運動をするためには外の世界の状況に気づき、過去にあった記憶と照合して、運動を企画して、目的を持って運動を始めることが必要です。このようなことは脳の働きによって行われます。 又、私たちは通常は重力のある世界で生活しているので、重力とうまく付き合うことも必要です。私たちの身体はいつも地面に向かって引っ張られています。その力に負けていては運動ができません。重力に対抗して姿勢を保つ活動を抗重力活動といいます。姿勢の保持やバランスの活動がこれにあたります。上手になってくると重力を利用して運動をより効果的にすることもできるようになります。(柔道の投げ技、歩行などは自分の筋肉で起こすちからだけでなく、相手や自分の重さを利用して運動を効果的にしています。)これも脳の働きによって行れています。 脳の働きが悪くなると運動に問題を生じるのはこのような機能の低下が原因となっています。 それでは運動の障害が生じた時には、どんな対策があるのでしょうか? 一つには自分の身体の機能自体を向上させる方法があります。人間は学習や発達によって機能を向上させることができるので、スモールステップで良い経験を積み重ねるという方法です。 もう一つは自分の身体の動きを機械や道具などの利用によって補うという方法です。 二つの方法は別々に実施するよりも、同時に組み合わせて実施されることが多いと思います。 こどもリハビリ相談

つま先立ちばかりする子には色々な原因があります

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赤ちゃんが自分でつかまり立ちをする頃、立つ時はつま先立ちしかしない子どもがたまにいます。親御さんは心配です。多くのつま先立ちをする子供をみていくとそれぞれのお子さんでかなり状態が違うことがわかります。 ①足の裏をつくことや、足の裏に触られることが嫌いな子 ②膝をのばそうとすると一緒に踵が上がってしまう子(関節運動の組み合わせが限られている子) ③アキレス腱反射の亢進している子(筋肉を伸ばされることに過敏で、筋肉の張りの強い子) ④筋肉の張りが弱い子 筋肉の張が弱いと外反扁平などになりそうですが、中には立位をとる時に脚全体の筋肉の収縮を高めるために踵を上げて立つ子どももいます。 ⑤その他 ①~④は全て神経の発達に影響された状況ですが、筋肉など神経以外に原因がある場合もあります。 複数の状態が当てはまる子もいますし、一つだけの状態が当てはまる子どももいます。つま先立ちの程度にも一人一人差があります。将来的に何らかの障害を持つ子もいますが、特に生活上の支障なく育つ子も多くいます。症状の程度や年齢なども含めて判断をした方がいいので、心配であれば小児科医師など専門家に相談しましょう。 PTは子どもの状態に合わせて最適な感覚運動経験を提供したり、ご家族の心配に答えたりすることができます。つま先立ちの子どもへの対応の一例として椅子や大人の膝に座った状態で足裏を床につけさせたり、そこからの立ち上がりを経験させるようなホームプログラムを提供することがあります。新しい感覚運動経験をさせることで、それまでと違う運動発達をひきだすための、きっかけづくりのプログラムです。 こどもリハビリ相談