投稿

重症児 テクノロジーの利用を妨げるもの

イメージ
電動車いすを導入しようと本人用を身体障害者手帳で申請しても、生活場面で一人で使えないと理由で申請が通らないことがあります。 練習でやっと使えるくらいの能力では本人の生活は改善しないので支給は難しいということです。 それならば練習が必要ですが、練習をする機会はどこかで与えられるのでしょうか。学校で練習すればいいと思いますか?確かに学校には備品や寄付の電動車いすは何台かあります。でも障害の状態は人さまざまです右手がわるかったり、左手が悪かったり、座位が不安定だったりと個々の状況が大きく違います。車椅子を本人の状態に合わせないと実力は発揮できません。本人の状態にあった車いすが必要です。リハセンターに行けばと思われるかもしれません。でもリハセンターが利用しにくい地域もあります。 障害を持った子どもの状態は様々ですので、一人一人に合わせた道具で練習ができる場は保証したいものです。特に生まれつき障害のある子どもは自分で移動した経験がないので練習がより必要です。 これと似たようなことはコンピュータを利用した代替コミュニケーション機器でもあると思います。練習しなければ使いこなせないが、一般用では練習にならないのです。 障害のある子どもとあまり関わりがない方は障害の状態が非常に個別的であることを知っていてください。機能を補助する道具は個々に合わせたものが必要になります。しかし、個人で購入するには価格が高いのです。また、練習をするとテクノロジーを使えるようになる子どもに十分な機会が与えられていないということも知っていて下さい。 障害児支援に関わっている方は、一人でも多くの子どもの可能性を引き出す方法を検討しましょう。埋もれてしまう子どもをなくしましょう。(様々な努力をされている方がいます。)経済的にマイナスになるのだから、どこかであきらめなければならないというようなことを、現在ある制度だけをみて決めつけるのは止めましょう。 今後障害児支援に利用できる様々な素晴らしいテクノロジーが出現してくると思います。それを多くの障害児が利用するためには制度上の限界を超える方法の検討が必要だと思います。 こどもリハビリ相談  

赤ちゃんが歩けるようになる

イメージ
赤ちゃんが歩くのは感動的です。 お母さんのお腹から生まれた時は首もすわっていなかったのに。 なぜ歩けるようになるのでしょうか。 実は生まれたての赤ちゃんは脇を支えて立たせて床に足を触れさせると足を交互に動かします。ところが2か月頃になるとそういう運動をしなくなり、10ヶ月くらいで自分でつかまり立ちやつたい歩きをはじめて、1歳くらいでは一人で歩くようになります。不思議ですね。 それは中枢神経の成熟に影響されていることが原因だとういう説があります。生まれたての赤ちゃんは中枢神経でも皮質下の活動が主なのですが、しっかりと大脳皮質とネットワークができてくると一人であるけるようになるという説です。そして大脳皮質とのつながりを構築する一時期歩行運動がみられなくなるというのです。 私たちは運動発達に遅れや障害がある子どもへの支援をしているので、何が発達すると歩けるようになるのかという視点でみるようになります。 その視点でみると ①筋力 重力に負けないで運動できるようになる ②バランス 姿勢を保てる、姿勢を保ちながらも運動ができる の発達が必要ということになります。 筋力やバランスも中枢神経の成熟の影響があるので、全く違う側面から見ているわけではありません。ただ、私たちはどんな経験が中枢神経系の成熟に好影響を与えるのかという方向からこどもに与える経験の質や量について考えていきます。 こどもリハビリ相談  

止まることは発達のはじまり

イメージ
幼児は走ることが好きです。小学校には「廊下は走るな」の張り紙があります。なぜでしょう。 運動ははじめることは無意識でもできますが、止まることには意識が必要です。小さい子どもには止まることは難しいのです。 2か月くらいの赤ちゃんの手のひらに大人の指をおくと手を握ってきます。これは把握反射といって自動的に起きる運動で3ヶ月くらいで弱くなり、4ヶ月くらいでみられなくなります。特定の刺激があれば必ず特定の運動が出現するのを反射運動といいます。この時赤ちゃん自身が握りこみを止めることができません。手のひらへの刺激があるうちは握ってしまいます。発達してくると意思で運動をコントロールできるようになります。この場合は具体的には嫌になれば指を放すことができるようになります。これは発達による現象です。 意思で運動がコントロールできることは、中枢神経系の活動が脊髄から大脳へと広がってきたことの証です。幼児期から学童期へとより大脳の活動は活発化してくるので、運動を止めることや程度を調整することが容易にできるようになります。自然廊下でぶつかるような事故は減少してきます。(ゼロにはなりませんが) 私が昔支援していた精神遅滞のお子さんは、幼児期の一時期、指導中でもバギーをみるとかならず乗って帰ろうろしてしまうという時期がありました。PTが嫌いというわけでもなく、バギーは乗って帰るものという行動が止められない状態だと考えました。私がそれを止めようとすると非常に怒っていました。しかし、数か月後には本人は他に色々なことを覚えてきて、それほどバギーにこだわることがなくなりました。行動も覚えはじめは必ずその行動をしようとしますが、そのうち状況によって行動を止めたり、調整したりできるようになります。これはなんとなく反射運動から随意運動への発達と似ています。 こどもリハビリ相談  

発達支援

イメージ
こどものリハでも、療育でも、児童福祉でもこどもの生活と発達を支援することは根本の目的です。 発達とは加齢に伴う、心身機能や形態、生活の変化をいいます。時間軸上の変化の問題です。変化を生み出すものは遺伝的な要因と経験の相互作用によると言われています。 どのような子どもでも生まれたものはいつか死に至ることは予想できます。しかし、それぞれの赤ちゃんが生涯にわたってどのような発達や生活をするのかを細部に渡って見通すことは大変困難です。それは人の生涯に無限の変化の可能性があるからだとも言えます。 また、ヒトの子どもが多くの周りの人に影響を受けて発達するということも大変大切な事だと思います。 幸運にもこどもの今日の生活を支える役割のある大人は、あなたが今日そのこどもに与えた影響が将来のこどものありようを変える可能性ももっていることを意識しましょう。 自分のことでいえば、理学療法士はこどもの運動経験の質と量がどのようにその子の将来の生活や発達に影響を与えるのかについて詳しく知っていて、本人・家族・関係者にわかりやすく伝えることができると良いと思っています。 こどもリハビリ相談

一人で立つ練習 指示の出し方

イメージ
一人で立つ練習をすることがあります。絵の様につかまった状態から手を放して立つという課題です。 大人の指示の出し方には色々あります。 ①「手を放して立ってごらん」  ②「手が放せると思ったら手を放してごらん、あぶなかったら歩行器をつかんでいいよ」 ①の「手を放して立ってごらん」で失敗してしまう子どもの中には大人の指示に従おうと一所懸命になりすぎてしまう子がいます。自分の立位の状態を感じようとせず、とにかく課題を成功させようと固くなりすぎで同じ失敗を繰り返してしまうのです。 ②の指示のいい点は自分の身体の状態に注目を促している点と、歩行器につかまることは失敗ではないとしている点です。悪い点は指示が長すぎるということでしょうか。 どちらの指示がいいということはありません。子どもによってうまくいく方を選べばいいし、これ以外の指示の仕方も沢山あります。ただ、ここで言いたかったのは練習に結果に対する大人の側の価値の置き方のことです。 子どもに求めるのは正解をだすことでしょうか。本人が冷静に状況を判断してひるまずチャレンジする態度でしょうか。 こどもリハビリ相談  

痙直型両麻痺の幼児はゆっくり歩くのが苦手

イメージ
  痙直型両麻痺の子どものあるあるですが、ゆっくり歩くと尖足歩行が少し軽減する子どもがいます。大人は尖足が軽減してほしいので「ゆっくり歩きなさい。」といいますが、子どもは中々そのようにはやってくれません。なぜ言ったように出来ないと大人がイライラする前に、子どもなぜゆっくり歩かないのか理由を考えてみる方が建設的かもしれません。 実は理由は子どもによって色々です。 ①大人の言ったようにはしたくない(いわゆる反抗期) ②じっとしているのが苦手(いわゆる多動) ③物理的な理由(後で説明します) ④その他 ゆっくり歩けないのには物理的な理由もあります。簡単に説明してみます。前方に歩く時の力の元は筋肉が生み出しているというようりは、重力によって棒が倒れる時に生み出されるような力を利用して前進しています。上の図のように、ただの棒は前に倒すのにあまり力は要りませんが、棒に足部をつけるそれより力が必要になります。つま先が上がっている足部だとただの棒の時のように前に倒れやすくなりますが、尖足といってつま先が下がっている足部をつけると棒を前に倒すのにとても強い力(勢い)が必要になります。 両麻痺の子どもは両足に尖足があることが多く、常に勢いをつけて歩いていないと前に進みにくいということになります。そのため、ゆっくり歩いたり、急に立ち止まったりすることも苦手な子どもが多いようです。 何事にも理由はあります。物理的な理由は子ども自身が意識でコントロールすることは難しいことは知っておいて下さい。「言うことを聞かない。」とイライラせずに対策を考えましょう。運動療法や装具療法、手術療法や薬物療法などの様々な治療手段があるので専門家と相談してみましょう。子どもに負担が少なく、家族にも負担が少なく、生活の場で効果的な歩行が長期間に渡ってできることを目指しましょう。 こどもリハビリ相談

療育に関わるチームの一員として

イメージ
 療育にかかわる人は医療関係者、教育関係者、福祉関係者、家族など様々な立場の人がチームをつくって関わります。 療育にとって関わる人のチームワークが大切であるというこは、日本における療育創成期に活躍された先人も強調しています。 私は理学療法士ですので医学関係者としての教育を受けてきました。就職して数年たち私がまだ新人の理学療法士の頃に先輩理学療法士から、「脳性麻痺という障害ではなく、脳性麻痺をもった一人の子どもとして見る目をもってほしい。」と言われたことがあります。それは私にとって当時から非常に印象に残る言葉でした。今あらためて考えると理学療法士が障害をみる専門家だからこそ、あえて言われた言葉でもあると思いますし、そのような言葉をいってくれる理学療法士に会えたことはとても幸運であったとも思います。 脳性麻痺をもった子どもを一人の当たり前の子どもとしてみることができる理学療法士ならば、家族や、教育関係者、福祉関係者の意見にも真剣に耳を傾けたり、尊重したりできると思います。そのようなことができる理学療法士は良い療育チームのメンバーになるでしょう。教育関係者であれば反対に障害というものについての知識・技術にも目を向けていくことも必要になるのかもしれません。日常自分の得意分野を深める努力をしながらも、相手の得意分野にも理解・共感・尊重できるようになることが療育に関わるチームのメンバーには必要だと思います。 こどもリハビリ相談