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脳性麻痺 痙直型両麻痺 歩行

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  ヒトの歩行は直立2足歩行と言われています。足の上に頭がある直立位であることと、そこから前方に倒れていく倒立振り子運動によって前進することが特徴だと言われています。スピードはあまりでませんが、エネルギー効率にすぐれていて、両手が自由になるので物を運ぶことも容易です。 脳性麻痺の中で痙直型両麻痺は上半身に比べて下半身に痙性麻痺が強い状態です。 このような麻痺の状況がある人の歩行を横から見ると体重を支えている側の脚は股関節や膝関節が屈曲していたり、つま先立ち(尖足)になったりしていることが多くあります。 このような脚の状態になっていると歩行の際に物理的に不利になることが3つあります。 ①股関節や膝関節が屈曲していると身体重心の位置が低くなり重心を前に移動することが大変になります。 ②つま先立ち(尖足)があるとつま先より前に重心をださないと身体が前に倒れていかないためにやはり重心を前に出すことが大変になります。(健常だと足関節より前に重心があれば身体は前方に倒れていきます。) ③左右の脚に麻痺があるために、脚と脚を前後に大きく開くことがしにくくなります。 結果として発達上は歩行開始の学習の困難さが高まります。歩行開始が学習できた後には重心を前方に強い力で移動し続けなければならないので歩行スピードが高くなりがちです。ゆっくり歩いたり、歩いて止まる、段差に手すりなしで上るなどは困難さがでやすい課題です。 こどもリハビリ相談

国際生活機能分類を考えてみました

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障害や慢性的な病気を持つ人の生活を考える時にWHO(世界保健機関)において2001年5月に採択された国際生活機能分類の考え方や言葉を共通のコミュニケーションのツールとしてかなり一般的になっています。 わかりやすい解説、詳しい解説など様々な解説が書籍やホームページ、YouTubeにもあげられています。興味がある方は読んだり、視聴したりしてみてください。 自分もこどものリハの関係者として働いて30年以上ですので、ICFについての情報はかなり聞かされてきました。しかし、その中でこういう見方もあるのかと改めて感心するような解説を聞くことが今だにあるので書いておきたいと思います。 ICFは「生きていることの全体像」を語るための共通の言葉:死んだ人には使えがないが、生きている間は使える言葉で、生きているいる内ならばその人の生き方を考えることばできます。 希望を捨てるなということ:生きていいるというのは健康状態、生活機能、背景因子の相互作用なので、健康状態が悪くなってもその人の生活機能があり、個人の生活機能が落ちても環境因子を変えることでより良い生活もできます。どこかが悪くなったらそれで終わりではないということです。又、様々な因子の影響があるということはそれだけ予測がつきにくいということです。生活のいくつかの側面の予想はできても、5年後の生活の全てを予測することはできません。先のことは本当にはわからないし、死んだ後は考える必要はないのですから生きていることの希望は持ち続けましょう。 生きていることは個別的なこと:生きていることは多くの側面の要素の上になりたっています。そのため他の人と同じ生活ということはありません。そのため支援計画は個別的個人的に考えなければいけないと思います。特に専門家は多くの人とあたるので、グループ分けをすることで業務上の判断能力が高まりますが、最後はいかに個別性を尊重するかということを考えなければならないでしょう。 こどもリハビリ相談  

脳性麻痺 痙直型両麻痺 歩行パターンの分類

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  脳性麻痺痙直型両麻痺の歩行パターンの分類した論文があります。1) Roddaらは立脚中期の矢状面からみた下肢アライメントを5つに分類しています。尖足歩行・ジャンプ歩行・見かけ上の尖足歩行・かがみ歩行・非対称歩行の5つの分類です。 非対称歩行の場合は左右のタイプが違っていて、例えば左下肢はジャンプ歩行、右下肢はかがみ歩行の混合というようになります。 専門家同士が一人一人に個性のある痙直型両麻痺のお子さんの歩行について話す際にある程度共通の表現があると理解が深まりやすのではないかと思いましたのでご紹介します。 Roddaらは2001年に片麻痺の歩行についての分類も発表しています。 引用文献 1)Rodda JM,Grauham HK,Carson L,Galea MP,Wolfe R(2004)     Sagital gait patterns in spastic diplegia; J Born and Surg Br86:251-8 こどもリハビリ相談

脳性麻痺 痙直型四肢麻痺 変形と座位姿勢の関係

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  脳性麻痺をもった子どもで痙直型四肢麻痺タイプの子どもに日常の座位姿勢で屈曲姿勢をとりやすい子どもがいます。屈曲優位の座位姿勢は下の絵のように頸部過伸展、肩甲帯が外側に変位し挙上、胸腰椎の屈曲、骨盤の後傾、下肢伸展など一連の異常姿勢につながりやすくなります。 このような姿勢の要因として ①痙縮や筋の短縮など筋肉の過緊張と、低緊張(筋力低下)による抗重力活動の弱化 ②身体の状態を感じ取る体性感覚の障害 ③効果的な抗重力活動の経験不足からくる発達上の問題 ④椅子や抱っこなど物的・人的環境の影響 ⑤その他(興味・関心・生活課題 etc.) などがあります。 姿勢が変形を生み、変形がさらに姿勢を悪くするという悪循環が起きないようにします。 日常の座位姿勢の基本は次の絵のように足部や座骨部で体重を支えて頭部と体幹を直立位にすることです。 もちろんこの姿勢は理想的な姿勢ですので、それぞれの子どもに合わせた調整が必要になります。活動状況に応じ座位全体の角度を変えたり、座位時間の長さを検討したりします。家族・医師・座位保持装置の作成業者・理学療法士・作業療法士が共同で行う座位保持装置の作成調整はかなり個別的な作業です。 こどもリハビリ相談

運動発達 頭ー尾の法則 何故

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運動発達で頭ー尾の法則というのは赤ちゃんは首がすわる→座位ができる→立位ができるように、頭の方から運動がしっかりしてくるという法則です。 生まれる直前の中枢神経は上の絵のように大脳を含めて、かなり成人と同様な形ができています。 でも神経の情報処理が中枢神経全体でできているわけではありません。 神経の情報処理が活発になっている部位では下の絵ように神経に髄消化という現象がおきます。髄鞘化がおきると神経の情報伝達の速度が速くなります。髄鞘化は神経が働いてきた目安にもなります。 髄鞘化前 髄鞘化後 生まれる直前の中枢神経の髄鞘化は脊髄や脳幹でかなり進んできていますが、大脳ではまだ始まったばかりです。大脳皮質の中でも1次運動野や1次感覚野が早く始まり、前頭葉はゆっくり始まるというような順序があります。 そして大脳皮質の1次運動野の中でも髄鞘化にも順序があり、頭の方が先で、足の方が後になります。これは1次運動野の支配する身体部位で頭の方が下で、足の方が上にあるからです。 神経の成熟は下から上に進み、運動発達は上から下(頭‐尾)に進みます。でも胎児期で考えると運動発達の頭‐尾の法則は成立しません。頭‐尾の法則は大脳皮質1次運動野の髄鞘化の順序を反映している現象なので乳児期の運動発達にはあてはまる法則です。 こどもリハビリ相談

子どものリハ室 環境

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  小さい子どもはすべり台が好きです。 何故でしょう。 すべり台には次のような特性があります。 ①色々な感覚がはいります 視覚・前提感覚・固有感覚 ②色々な運動を組み合わせて使います のぼる・しゃがむ・すべる ③はじまりと終わりがわかりやすい はじめに段をのぼる すべって終わり このような経験特性は発達途上の脳の様々な神経ネットワークを刺激します。小さい子どもは自分の神経ネットワークが刺激されることを好みます。神経ネットワークの形成が生存に役立つからでしょう。 リハ室にすべり台が必須だということはありませんが、小さい子どもにとってリハ室という名前は理解できていないので、自分の存在している場所の一つとしてとらえています。そこで起こる直接的な体験との関係がその部屋に対するその子どもラベルということになります。自分の発達にあっていて深い経験ができる場所は子どもにとって楽しい場所だということになります。 話がとぶようで恐縮ですが、厚生労働省が作成している保育所保育指針というものがあります。小さい子どもの発達を保証するための多様な観点から書かれていてわかりやすいので、新人の医学的リハ関係者も一読をお勧めします。 保育所保育指針の中で保育所の環境については以下のように書かれています。 保育の環境  保育の環境には、保育士等や子どもなどの人的環境、施設や遊具などの物的環境、更には自然 や社会の事象などがある。保育所は、こうした人、物、場などの環境が相互に関連し合い、子ど もの生活が豊かなものとなるよう、次の事項に留意しつつ、計画的に環境を構成し、工夫して保 育しなければならない。 ア 子ども自らが環境に関わり、自発的に活動し、様々な経験を積んでいくことができるよう配 慮すること。 イ 子どもの活動が豊かに展開されるよう、保育所の設備や環境を整え、保育所の保健的環境や 安全の確保などに努めること。 医学的リハであっても最終目的は全人的な発達を促すことですので、実施する場が子どもにとって安全で楽しい環境になるような配慮は大切だと思います。 こどもリハビリ相談

乳幼児は不安になりやすい

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乳幼児と付き合うコツの一つは子どもを安心させることではないでしょうか。 小さい子どもは遊んでくれる人、面白い人も好きですが、安心できないと楽しめません。 なぜ乳幼児は不安になりやすいのでしょうか。一人では生きていけない年齢ですから、危険はすぐに親に伝えなければいけないという生存上の理由もあるかもしれません。大脳辺縁系による情動活動を抑えるような神経の活動が弱いということもあります。(大脳皮質前頭前野の活動が発達途上だったり、同じく不安を抑制するセロトニン系神経の活動が発達途上だったりという脳の機能・構造的な原因があります。) 私は男性で高齢のセラピストですから、小さい子を不安にさせる素質があふれています。なので最初はすぐに接近しすぎない、目を合わせすぎないなど気をつけています。安心のもとはお母さんですから、お母さんに抱っこしていてもらうている状態から始めることも多いです。少し安心の雰囲気がでてきたら本人が大好きな玩具を提供することもあります、本人が玩具に集中できるとその時は不安が軽減するからです。 とにかく、セラピストは子どもが不安を感じているのかどうかにアンテナをはりながら、ゆっくりと少しずつすすめるとうまくいくと思います。(たまにはうまくいかないこともありますがその時は静かに状況を受け入れましょう。) こどもリハビリ相談