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脳性麻痺 痙直型四肢麻痺 姿勢運動の多様化を求めて

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       1の絵は健常な子どもの6か月の腹臥位姿勢で、エアプレーンと呼ばれる最大の伸展活動です。2は痙直型四肢麻痺で屈筋群活動が強い腹臥位です。 2の子どもの姿勢保持能力を高めたり、関節可動域を維持するために伸展筋群の活動を促していく運動プログラムを取り入れられないか検討します。 まず、身体の一部を介助したり、装具を使ったりすることで子どもに伸展のパターンを生み出す潜在的能力があるのかを見極めることからはじまります。 そしてある条件で伸展能力をもっていることがわかれば、それを日常性生活に導入することで神経ネットワークの使用頻度を増やしていきます。 予備知識として1と2の姿勢運動のパターンの違いの知識が必要です。 1は上下肢は伸展外転位を示し、肩甲帯は下制内転、体幹部の伸展は腰椎部にまで及んでいます。 2は上下肢は屈曲位、体幹も屈曲位です。 次にその子を介助して上下肢の伸展外転と肩甲帯及び体幹の伸展が同時に出現できないかを見極めます。 具体的な方法はいろいろあります。屈曲位にある上肢や下肢を伸展外転方向に誘導することで体幹が伸展しこないか、肩甲帯内転下制や脊柱の伸展を先に誘導した後に上下肢の伸展外転を誘導できないのか、装具の使用なども検討します。 介助下できるならば、例えば立位保持具や座位保持具など日常生活の中で同じ運動パターンが出現しないか検討します。運動パターンの出現頻度を高めたいからです。 こどもリハビリ相談  

赤ちゃん 筋力強化

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  赤ちゃんに筋力強化をするということと、抗重力活動を高めるということはほぼ同じ意味かなあと思います。 大人で筋力を強化する際にも、トレーニングで最初に高まるのは神経系の情報伝達能力です。その後トレーニングを継続すると筋肉の肥大という現象が起きてさらにパワーをさらに高めることができます。 発達というもう少し長い期間の現象を考えた場合でも乳幼児期は急激な神経系の発達の時期で、思春期以降に筋肉の肥大化に適した時期がきます。 そういうわけで赤ちゃんの時期の筋力強化と感覚運動神経系の活動が活発になることは同じ意味と考えています。 また、筋肉はその作用の仕方で主動筋、拮抗筋、協同筋という3つに分類をすることがあります。赤ちゃんの時代は主動筋だけでなく、拮抗筋や協同筋も使えるようになっていくことが重要です。 具体例をあげると、赤ちゃんがうつ伏せで頭を上げる際には首の後側の筋肉だけでなく、首の前側や体幹の前後の筋肉も収縮できると頭は楽にあげられます。肩の周りの筋肉も使えるとさらに楽に頭を上げることができます。 赤ちゃんの抗重力活動を促す(筋力を高める)時には多くの筋肉を効率的に使えているかを気にしながら行うのがポイントです。 こどもリハビリ相談

乳児期 体幹機能の発達

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アプローチの中で子ども体幹の筋活動を高めることができると、リラクセーションが得られたり、運動がスムースに行えたりする場合があります。 アプローチのためには評価が必要です。子どもの体幹機能を評価するにはその発達を知ることが基本となります。 特に体幹の形状と運動パターンの変化に注目すると良いと思います。形状については呼吸機能の発達の知識が役に立ちます。運動パターンについては粗大運動の発達の知識が役に立ちます。 呼吸機能の発達伴う体幹形状の変化は新生児から成人呼吸への変化を考えます。新生児は①口腔内の舌の容積が大きい①肩甲帯挙上している②頸部が短い③肋骨が上がり水平位になっている④横隔膜の高位化などが特徴されています。筋力が弱かったり、胸郭が柔らかいというこもあり結果として鼻呼吸・横隔膜呼吸が主体で呼吸数が多くなります。形状変化は肩甲帯・肋骨が尾側へ下制される方向に変化し筋活動で中間位で安定するように発達していきます。 粗大運動の発達では頭尾の法則により頸部周囲→胸郭周囲→腹部→骨盤周囲へとの筋肉の活動が発達していきます。運動のパターンとしては屈伸→側屈→回線へと変化していきます。 子どもの体幹機能にも目を向けることでアプローチの可能性が広がるかもしれません。 こどもリハビリ相談  

脳性麻痺

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 重力のある環境の中でうまく身体をつかっていくために、人は生後約一年の期間をかけて身体の使い方を急激に変化させていきます。 首のすわっていなかった赤ちゃんが一人で歩くまでになります。 生まれてすぐの赤ちゃんの脳の中には様々な身体の使い方のデータ(記憶)がはいっています。こういう状況ではこういう姿勢をとると快適だし目的が達成できるというようなデータ群です。 運動に関するデータ群は生まれる前から沢山頭の中にありますが、すべてを生まれてすぐ使えるというわけではありません。生後3か月とか6か月とか時期がくると順々に使えるデータ群が増えていきます。また、そのデータ群をそのまま使うのではなく少し調整したり、いくつかのデータ群を組み合わせたりすることでさらにうまくできることが増えていきます。 データ群のことを身体図式ともいいます。脳の中にある姿勢や運動とその時生じる感覚がセットになった記憶です。内部表象という言い方もします。身体図式は無意識の世界にあるものが大部分です。 脳性麻痺を持った子どもは姿勢と運動の発達に障害をもっています。その状態は一人一人で違いが大きいです。しかし、状況に応じて身体図式を柔軟に変更や調整することができないという点では共通しているところがあります。例えば、歩く時には歩く身体図式を使うといいのに、姿勢を安定させる身体図式を強く使いすぎてうまくいかないというようなことです。そういう固定的な姿勢·運動は子どもが意識しないのに生じてしまいます。 脳性麻痺を持った子どもの身体図式を健常児と同じようにすることはできませんし、する必要もないように思います。ただ、その子にとっての楽しい学習の機会を通じてその子なりの身体図式の多様化を図ることができればいいなと思っています。 こどもリハビリ相談

重症心身障害児 理学療法

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重症心身障害をもった子どもの理学療法の目的として多くの方から認められていることはなんでしょうか。一般的には関節可動域の改善・呼吸機能の向上・快適で機能的な姿勢の導入などがあると思います。 理学療法でこれらの目的を達成するために使われる支援仮説で重要なものの一つは、重症心身障害児の障害の原因には先天的なものもあれば、二次的(発達的or経験的)に生じるものあるということだと思います。そして、発達的or経験的に生じる障害は決して小さな量ではありません。 理学療法では姿勢運動の改善という方向性のアプローチが主となるので、重症心身障害を持っている子どもの抗重力活動やバランスの活動の潜在能力を見つけ出す評価が重要です。 本人一人で頭部や体幹を垂直位保てるかどうかを見る評価では課題が難しいのでなかなか点数がはいりません。しかし、ゆっくり注意深く介助したり、子どもが余裕をもって受け入れられる刺激をさがしてみましょう。 その子が潜在的にもっている姿勢の反応性を身体アライメントや筋収縮のレベルで見つけだせると、それをうまく利用することでリラクゼーション、ストレッチ、呼吸改善、日常の快適姿勢をみつけることにつなげられることもあります。セラピストにとってはその子の力を肯定的にみるきっかけにもなる点もあると思います。 重症心身障害児は広範な脳の障害により限られた抗重力活動のパターンを繰り返し使って重力環境に適応しています。臨床場面ではそのことが、生理的な機能やコミュニケーション機能とも相互関係をもっていることをよく経験します。

移動動作の獲得

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移動運動の獲得には下の様な機能の発達が必要です。 ①セントラルパターンジェネレーターの働きにより生み出されるリズミカルな左右交互運動パターンの出現 ②移動開始と停止能力 ③目的をイメージして記憶したり注意を維持する力 ④姿勢保持、外乱応答、予測的姿勢制御などいわゆるバランスといわれる能力 7~8か月の赤ちゃんが這い始める時には立位でのバランスはまだ不十分ですが、腹臥位においては上の四つの条件を満たし始めるのでずり這いがはじまると考えることができます。 移動運動の障害のある子どもでは一人一人色々な機能的な原因を一つもしくは複数もっていいます。子どもの障害の機能的な原因を鑑別するように評価することは有用だと思います。発達障害を持った子どもの一部に乳児期には②③の原因が主で移動しないのではないかと思われる子ども達がいます。脳性麻痺を持った子どもでは四つの機能すべてに不利がある可能性がありますが、発達障害の子に比べて①④の障害が重篤な場合が多いです。 参考文献 Anne Shumway-cook,Marjorie H. Woollacott著 「モーターコントロール 運動制御と臨床応用」 P.328 田中 繁,高橋 明 監訳 :医歯薬出版:2004  こどもリハビリ相談  

障害児用のバギーを選ぶ

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障害児用のバギー選びはいつも迷います。 お母さんにとっての実用性や快適性と子どもにとっての快適性の両方を兼ね備えなければならないからです。 お母さんにとっての実用性や快適性に影響する要素 ①バギーの重さ(持ち上げられるか) ②押して歩くときの操作性(直進性、不整地安定性、段差越え) ③折りたたみの方法(簡単におりたためるか、折りたたんだ時自立ができるか) ④荷物がのるか ⑤デザインの好み ⑥耐久性 子どもにとっての快適性・安全性に影響する要素 ①姿勢の安定 ②呼吸の安定 ②視覚や手の動きの保証 ③緊急時落下等の危険性防止 障害のある子どもの姿勢運動状況は非常に個性があるので全部の要素が平均して高い点数のものを選ぶというよりも、個別にそのお母さんと子どもの状態にあっているもの選ぶことになります。そのため悩みます。 まず、お母さんからはどんな点を重視して選びたいかを聞きます。一般用のバギーからの乗りかえが多いので、使用時間や頻度、使用環境に坂や段差はあるか、交通機関を使うのか、折りたたみは頻回に行うのかなどについての現状を事前に聞き取りしておくといいでしょう。 子どもの姿勢・運動の評価も事前にしっかりやっておく必要があります。 もし、あなたがセラピストならば医師、義士装具士、工房や車椅子業者とのチームであたることで、お母さんは色々な意見をきけて、よりベターで納得した選択がしやすいと思います。 こどもリハビリ相談